表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/46

入学式後、初登校

サリーナは、持ち運び手紙魔法陣をポケットに入れる。手紙魔法陣は、昨日の内に、ジャックから兄たちにも渡っている。

離れたところで使用可能か分からない為、今日は試しに送り合うことになっている。


食堂へ行くと、お父様も兄様達もすでに着席していた。


「おはようございます。おまたせしました。」

「おはよう。待っていないから大丈夫だよ。」

「リーナ、おはよう。」

「おはよう、リーナ。」


朝食は、手紙の事には触れず、いつも通りに経過した。



学校へ向かう馬車の中…


「リーナ。手紙魔法陣をもらったが、これは隠れて使うようにとの事だ。」

「変な事に巻き込まれない様に…ですか?」

「分かっているならいいんだ。リーナを利用しようという、私利私欲で動く馬鹿が近づいてくる可能性が高いからな。」

「子供の内に丸め込もうとする大人ですか…?」

「その通り。」

「リーナ。気をつけるんだよ?すぐに人を信じない事!リーナは、魔力!見た目!身分!どれをとっても完璧なんだから。」

「…魔力と、身分はその通りだとしても、見た目は家族の欲目です。」

「また、そんな事を…。」

「だから、心配なんだよね。」


学校に着くと、馬車降り場にアイザック様がいた。


「リオン兄様、いつも待ちあわせして教室に行っているのですか?」

「そんなわけ無いでしょ。気持ち悪い。」

「きも…。そうですか。」

「リオン、お前だけだと思わないでね。僕もだ。…サリーナ、昨日はありがとう。」


私?


兄様達を見ると、頷いた。


よく分からないけど、私が答えておけということよね。


「いえ。また、いらしてください。」

「お言葉に甘えて、近いうちにまた。さあ、教室まで送るよ。」

「え?良いですよ。教室も遠いですし…。」

「僕も一緒に行くよ。」

「リオン兄様?」

「心配だからね。」

「大丈夫なのですが…。」

「まぁまぁ。」


リオン兄様は、私の背を押して歩き出した。


「あ、リック兄様。また後で!」

「ああ。帰りは教室に迎えに行くからな。」

「はい。分かりました。」


これを過保護と言うのよね…。


「あれ?リオン兄様、リック兄様が迎えに来ると言いましたが、帰りの時間って一緒でしたっけ?」

「…違うね。」

「そうですよね。」

「後で話せばいいんじゃないかな。」


そう言うと、リオン兄様はこちらに向かってにっこり笑った。


これは、手紙魔法陣で…と言うことよね。


「分かりました。そうします。」

「僕も迎えに行きたいけど、予定が入っているんだ。待たせてしまうから、先に帰ってね。」

「分かりました。」

「僕が迎えに行く。」

「アイザック様が?そんな、悪いです。ひとりで大丈夫ですよ。」

「まだ慣れていないだろう?」

「それはそうですが、他の方もひとりで行き来していますし…。」

「兄弟が送り迎えしている人もいるよね?」


私は周りを見た。


「そうですが、アイザック様は兄では…。」

「兄代理。」

「と言うことで。」

「…お願いいたします。」


これ以上断っても、きっと無駄なのだろうな。


サリーナは諦めて、アイザックに迎えに来てもらうことにした。


「それじゃ、帰りに。」

「はい。よろしくお願いいたします。」


私を教室に送ってくれたあと、リオン兄様とアイザック様は自分達の教室に向かった。


適当に空いている席に座ると、隣の席の女の子が挨拶をしてくれた。


「スウィンティー様。おはようございます。」

「おはようございます。すみません。えーと、」

「ナンシー·コーセットですわ。よろしくお願いします。」


コーセット…。侯爵家よね?


サリーナは、基本として貴族名簿は覚えさせられていた。顔は分からないが、名前は分かる。


「サリーナ·スウィンティーです。こちらこそよろしくお願いします。」

「いきなりですが、お聞きしてもよろしいですか?」

「何でしょうか?」

「アイザック殿下とそういう関係なのですか?」

「はい?」

「やはりそうなのですね!」

「いや、今の『はい』は違くて…。」

「?」

「因みにそういう関係とは、どういう事でしょうか?」

「婚約するとか、恋人とかですが…。」

「違います。私とアイザック様は、お兄様の友人と妹という関係です。」

「…え?」

「え?」

「送り迎えをされていますよね?」

「兄様と一緒に。」

「お家に遊びに来られているのですよね?」

「兄様とご予定があったようです。」

「先程、帰りにって。デートでは?」

「兄様たちが予定があるので、変わりに来ていただけるようです。」

「いやいやいやいやいやいやいや。」

「『いや』が多い…。」

「王子が変わりに来るとか、そんなのありえませんでしょう?」

「優しいですよね。」

「…」


ナンシー·コーセットは驚いた顔をした。


「?」


…が、すぐに納得したような顔になった。


どうしたのかな?


「そういう事ですか。分かりました。」

「何が?」

「周りの心配と言いますか、苦労と言いますか…。とにかく、分かりました。」

「はあ。」

「スウィンティー様。」

「はい。」

「お友達になってくださいませ。」

「!?」

「駄目ですか?」

「えーと、駄目ではないのですが、お友達とは『なってください』と言われてなるものではないと思いますので…。」

「では、まずはクラスメートから。」


何その、告白された時の返事『まずは友達から』みたいなの…。


「もうクラスメートですが?」

「そうですわね!」


その後、他のクラスメートとも挨拶を交わし、一日が始まった。



「あ。…私、お花を摘みに行ってまいります。」

「私も一緒に。」

「ひとりで大丈夫ですよ。」


私はナンシーの言葉を断り、トイレへ向かった。


個室に入り、ポケットから手紙を出す。


「お父様から?」


『ついたかな?』


サリーナは、手紙を取り出したのと反対のポケットからペンと紙を出す。


「無事つきました、っと。」


手紙魔法陣を取り出し、その上に手紙を置く。


「ジャック、ジパダサ。…あ、リック兄様へも手紙を送らないと。」


サリーナは、帰りの事を紙に書き、パトリックにも送った。


「そしたら、リオン兄様へも送っておこうかな。でも、内容はどうしよう…。う~ん…。友達ができそうです、で良いか。」


サリーナは送り終えると教室へ戻った。


「大丈夫でしたか?」

「…コーセット様。私ってそんなに頼りなく見えます?」

「いえ。そんな事はありませんわ。」

「でも、兄様達といい、コーセット様といい、心配されているので…。」

「これは、違う心配です。」

「違う心配?」

「さぁ、次の授業ですわ。」


なんの心配なのかは、結局教えてくれなかった…。


次の授業は、魔法だ。


待ちに待った魔法の授業!


「魔法は、火、風、土、水、氷、そして光と闇に関連したものがあります。今後使っていく内に、得意不得意が出てくると思います。それは、当たり前の事なので、必要以上に気にしないように。では、魔力操作をしましょうか。」


あっ、そうか。そこからか…。

とりあえず、言われた通りにしておこう。


「魔法は魔力操作から始まります。ここを疎かにすると、得意不得意どころではありませんので、日々行なっていきましょう。さぁ、集中して…魔力を身体に行き渡らせてください。」


え?説明それだけ?


周りを見てみると、殆どができている。


あの説明で出来るってことは、家でやってくるんだろうな。


「スウィンティーさん、魔力操作を開始してください。」

「え?」


もうしてるけど?


「え、ではなくて始めて。」

「すでに、始めていますが?」

「周りを見ていたじゃない。」

「見ながらでも、できますよ?」


確かに、皆は動かず目を閉じたり、顔に力が入ったりしていて、周りを見る余裕は無さそうだ。


「………うそ!?本当に出来てる…。」


何かしらの方法で確かめたのだろう。ジェシー先生が目を丸くしている。


見れば分かるんじゃないんだ…。

お父様は見て、分かってくれていたけど、それは少数派と言われる人だからなのかな?

う~ん…。


「スウィンティーさんは、そのままキープしていてください。」

「はい。」


そして、授業が終わった。


「スウィンティー様。お昼はどうなさるのですか?」

「食堂に行くつもりよ。コーセット様は?」

「私も食堂です。一緒に行っても良いですか?」

「ぜひ。」


私達は話しながら、食堂へ向かった。


「すごいですね。1年生で魔力操作が完璧にできるなんて!」

「完璧かどうかは置いといて…。先生が良いから。」

「先生は、スウィンティー公爵ですよね?」

「ええ。」

「国1番の使い手ですものね~。」

「そうなの?」

「知らなかったのですか!?」

「知らなかったわ。お父様って凄いの?」

「そりゃあ、もう!宰相で、国1番の風魔法の使い手!すごくない訳がありません!」

「…そうなんだ。」


すごい熱量…。


「それにしてもよく御存知ね。」

「スウィンティー様は、ご自分に関する事をもう少し、気にした方がいいかもしれません。」

「では、教えてくれるかしら?」

「…私がですか?」

「他にいます?」

「教えさせていただきます。」


コーセット様は、深々と頭を下げた。


「公爵の事は先程話しましたよね?」

「ええ。」

「次はお兄様方です。パトリック様は第1王子の側近!次期宰相!眉目秀麗!無愛想ではありますが、結婚したい男性トップ3に入ります!」

「!」

「ダリオン様は笑顔が可愛いと評判で、特にお姉様方に人気です。時折見られる棘々しさにも、ヤラれる方続出です。」

「…。」

「アイザック殿下は、」

「アイザック様は兄ではありませんので…。」

「そうですか?知りたくないですか?」

「…ないことも無いけど、やめておきます。」

「では、1つだけ…。結婚したい男性トップです!」

「え!?」

「それから、あたりは柔らかいですが、女の子になびかない、で有名なのですよ。」

「1つと言ったのに。」


それに、なびかないって…まだ小学生。

前から思っていたけど、こちらの精神年齢高いわよね。


「おまけですわ。」

「はぁ。…それにしても、今日が初日と思えないほど、詳しいですわね。」

「お姉様が9年生で、よく話を聞いています。婚約者がほしい女性の話は、ほぼ格好いい男性の話ですから!」

「…そう。」

「あっ。あそこに並ぶみたいです。」


見ると、お盆を持った生徒が列をつくっている。


「えーと、システムは?」

「それは、私も分かりません。」


困っていると、後ろから名前を呼ばれる。


「リーナ。」

「リック兄様。」

「会えてよかった。…友達か?」

「ナンシー·コーセットでございます。よろしくお願いいたします。」

「よろしく。お昼は今から?」

「はい。でも、どうすればいいのか…。」

「一緒に行こう。…ここでお盆を持ち、並ぶ。メニューは2種類から選ぶことができる。メニューは日によって変わって、ここに書いてあるから。」


指された壁を見ると、ハンバーグと魚のソテーと書かれている紙が貼ってある。


「順番が回ってきたら、選んだメインを取る。パンとサイドは皆一緒だ。」


私は今回、ハンバーグを選んだ。


「席は自由だな。…あそこが空いているから行こう。」

「はい。」

「では、私はこれで。」

「コーセット様?一緒に食べないのですか?」

「兄妹、水入らずの方が良いかなと…。」


それを聞いて、何かイラッとした。


「ここまで一緒に来たのですから、一緒に食べましょうね。」

「俺だったら大丈夫だ。気にするな。」

「…はい。」


私達は、空いていた席に座り、食べ始める。


「このハンバーグ、ふわふわで美味しい。」

「魚のソテーもホロホロほぐれて、美味しいですわ。」

「それは良かった。…リーナ。帰りの事だが、時間が違うのを失念していた。教えてくれてありがとう。」

「はい。」


良かった。手紙がついたのね。

そういえば…


サリーナはポケットをそっと触る。


来てるっぽいけど、今は見れないわね。


昼食を終えて、リック兄様と分かれた後、私はトイレへ行った。コーセット様も一緒だ。


早くしないと、怪しまれるよね?


トイレへ入り、ドアを閉めると、すぐに手紙を取り出す。


「お父様から『了解。』、リオン兄様から『良かったね』、リック兄様から『食堂で』、か…リック兄様と会えてよかった。…あ、ロンドにも書かないと『昼食はハンバーグでした。』よし。…ロンド、ジパダサ。」


トイレから出ると、コーセット様が待っていた。


「おまたせしましたか?すみません。」

「いえ、大丈夫ですわ。」


そして、私達は教室に戻り、午後の授業を受けたのだった。



教室にいると、予定通りアイザック様が迎えに来てくれた。


「サリーナ。」

「アイザック様。お手数おかけして、すみません。」

「いや、僕が言ったんだ。サリーナが気にすることではないよ。では、行こうか。」

「はい。…コーセット様、また明日。」

「はーい。また明日。」


コーセット様は、笑顔で手をふっている。


コーセット様は、まだ帰らないのかしら?


「授業の初日はどうだった?」

「戸惑いもありましたが、発見が多かったです。」

「発見?」

「はい。魔法の事とか、兄様達が人気があるとか。楽しかったです。」


サリーナは、にっこり笑いアイザックを見る。


「そ、そうか。楽しかったようで何より。」


アイザックは、サリーナから目をそらした。


サリーナ、可愛いな…。


「アイザック様?」

「ゴホン…。馬車が、見えてきた。」


馬車乗り場には、多くの馬車が並んでいる。アイザック様は、1つの馬車に近づいていく。


「さぁ、どうぞ。」

「え?」


この馬車、我が家のではなく王家のものですけど!?


「送っていくから。」

「え?」

「リックとリオンは、まだ終わらないし、スウィンティー家の馬車が、帰ってまた戻って来るのは、馬が疲れてしまうだろ?」


確かに…。


馬を変えればいいとか、馬車の中で兄二人が終わるのを待つとか、色々方法はあるだろうに、その時のサリーナは思いつかなかった。


「では、お願いいたします。」


サリーナは、馬車に乗り込んだ。


「…」

「…」


えーと、何を話せばいいんだろう。


アイザックは窓の外を見ている。


結婚したい男ナンバーワンか…。

12歳で、すでにそんなランキングが作られているのが驚きよね。

でもまぁ、この世界の貴族にとったら、若いうちに婚約する事は当たり前みたいだし。

成人は18歳で、結婚もできる。

ランキングがあっても、おかしくないか…。

それにしても、本当に印象が変わった。成長期と言うのもあるかもしれないけど、身長も伸びて、筋肉もついた?


!!


「アイザック様!」

「サリーナ、どうした?」

「筋トレ、無理し過ぎていませんよね?」

「何?急に。」

「小さいうちに筋トレをしすぎると、身長が伸びませんよ。」

「………え?」

「あくまで、し過ぎたらですが…。」

「どの程度が、『し過ぎ』に入る?」

「重いものを持って運動とか、ですかね。自分の体のみ使う運動なら問題ないと思います。」

「分かった。…サリーナ、何で詳しいんだ?」


あれ?アイザック様に記憶のことって…。

誤魔化すか!


「なんの本かは忘れましたが、本で読みました。因みに、牛乳や大豆が成長に良いそうです。」

「そうか。覚えておくよ。」

「ぜひ。」


誤魔化せたかな?


「僕がサリーナの心を射止めたあかつきには、きちんと説明して貰うからね。」


アイザックは呟いた。


「え?すみません。聞き取れませんでした。もう一度お願いします。」

「大したことじゃないから。…あ、もうすぐ着く。」

「本当だ。今日はありがとうございました。」

「こちらこそ。良いことを教えてもらえた。ありがとう。」


馬車が止まり、扉が開いた。

ロンドと、メルが出迎えてくれる。


「「おかえりなさいませ」」

「ただいま。」


アイザック様が馬車から降り、私が降りるのを支えてくれる。


紳士!12歳の紳士!


感動していると、手をギュッと握られた。と思ったら、すぐに離された。


「また明日。」

「あ、はい。今日は本当にありがとうございました。」


アイザック様は手を振り、馬車で帰っていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ