↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リシュリー・アルコは約束が出来ない  作者: 入海詩魚
第二章 金色の羊の毛のお守り
PR
69/153

星空の下のプレゼント交換

 楽しい合同誕生日パーティーはとても早く過ぎていき、このパーティーのメインイベントであるケーキの蝋燭の火を消す時間がやって来た。


 アルコ牧場産生クリームがたっぷり使われた大きな丸いケーキの上には、十五本の蝋燭が立てられ火が灯されている。

 まるで十五の火の命がそこにあるように揺れていた。

 蝋燭に火を灯してくれたのはカルボおじさんだったから、火に力が宿ったのかなと思ったのを覚えている。

 周りではアルコ家とフェレール家の全員が誕生日を祝う歌を歌ってくれていた。

 火はやはり命があるように、その歌に合わせて揺れていた。

 

 私とエリオットは笑い合いながら手を繋ぎケーキの前に行くと、視線でタイミングを合わせて蝋燭の火を吹き消した。

 火は消えていった。

 私達の十四歳は終わった。私達が十四歳の私達に戻ることは二度とない。

 しかし新しい歳と共に、新しい命の火がここから燃え始める。そんな気がしたのを覚えている。

 私達二人の一息で蝋燭の火は全て消え、周りを囲む家族の拍手の音と祝福の声が食堂に響いていた。

 それに興奮したペロ・アルコが自分の尻尾を追いかけてくるくる走り回った。


 一通り祝福が終わるとオルノお兄さんがケーキを全員に取り分けてくれてみんなで美味しく食べた。

 母さんが心を込めて作ってくれた誕生日ケーキはとても濃厚で美味しかった。

 パロマがなぜか私とエリオットの近くに来て、胸を張ってえばっていたので話を聞いてみると、ケーキのデコレーションはパロマもお手伝いしたのだという。

 それを聞いた私達がパロマをめいっぱい褒めてあげると、パロマはとても嬉しそうにしていて、えばりながらも照れて変な顔になっていた。

 すると、バンダーとミグラもやって来た。

 自分達もデコレーションしたと言う。

 なんだか褒めて欲しげな顔をしていたので、バンダーとミグラもたくさん褒めた。

 すると案の定、二人ともパロマと同じような変な顔になって照れていた。

 なにやら生意気な事を言いながらではあったが。

 

 だが、その様子を見たパロマが、あたしのデコレーションの方がげいじゅつてき! と言い出し、バンダーとミグラと喧嘩になりそうになった。

 これはバンダー&ミグラvsパロマ恒例のパターンである。

 すると、すかさずベレトお兄さんがやって来て、パロマを抱っこして離れた場所へ行ってくれたのであった。

 ベレトお兄さんの後ろをペロ・アルコも付いていき、それからしばらくベレトお兄さんはパロマとペロ・アルコと遊んでくれていた。



 ケーキを食べ終え時計を見ると、もう日付が変わりそうな時間になっていた。

 いつもはかなり早寝のアルコ一族であるが、この合同パーティーの日だけは夜更かししても良いことになっていた。

 そのため、特にバンダーとミグラは大はしゃぎである。

 フェルマー兄さんも上機嫌でオルノお兄さんとの話に花を咲かせていた。

 パロマはさすがに起きていられず、父さんに抱き抱えられ自分の部屋のベッドへ連れていかれた。

 

 私とエリオットはいつもこれくらいの時間になると、家の外に出て互いに誕生日プレゼント交換をしていた。

 私達の誕生日には、夜空の星達がそれは綺麗に良く見える。

 冬の冷たく澄んだ空気が、星達をより一層美しく透明に輝かせるからだ。

 そんな満天に輝く星達を眺めながらプレゼント交換をするのは、なにやらとても素敵な気分になる。

 冬の真っ最中に生まれてきて良かったなと心から思うし、この世界に生まれた感謝の気持ちが湧いてくるのだ。


 そんな気持ちは、満天の星達のその一つ一つをよく見ようと目を凝らすとより強くなった。

 あの星々の中のどれかの中に、このサンティ=ハイメ神領島のような素敵な世界が存在していたりするだろうか。

 それとも、シエラやカインが住んでいたような、こことは全く違う世界が存在しているかもしれないのか。

 それらについて確かな答えは今のところ無いが、私達が存在しているこの世界と全く同じ世界など宇宙のどこにも無いだろう。

 この世界に生まれ、エリオットやエミルと友達になれたこと。

 牧場の娘に生まれて、優しい家族達と一緒に暮らせて、牧場の仕事という居場所があること。

 そして、愛おしい動物達のお世話が出来ること。

 自分の設定、というとなんだか変な感じだが、エリオットと満天な夜空を眺めていると、この自分に生まれてきたことへの感謝の気持ちがただただ込み上がってくるのだった。



 私とエリオットは母屋から出て、ブランコ3号のところまでやって来た。

 エリオットが私に大きな紙袋を差し出してくれていた。


「リシュリー、改めてお誕生日おめでとう。

 十四歳を一緒にいてくれてありがとう。

 十五歳もよろしくね。

 十六歳も、十七歳も、十八歳も、ずっとずっとよろしくね」


 エリオットが一年で一番の笑顔でそう言った。

 その笑顔は私を幸福にした。

 私も誕生日プレゼントの包みをエリオットへと差し出しながら言った、


「エリオット、誕生日おめでとう。

 うん、これからもよろしく。

 十五歳の一年も楽しく過ごそうね。

 そして、十六歳の合同誕生日パーティーも楽しもうね」


 ……そうだ。私はあの時エリオットにこんなことを言ってしまったんだ。


「うん! うん!

 来年はリシュリーに何をプレゼントしようかな。

 その次も、その更に次も、どうしよう」


「あはは、ありがとうエリオット。

 楽しみにしてるね」


 その時、夜空から細かく小さな一粒の金がパラリと落ちてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。