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おっぱいコンプレックスの私を、幼馴染が全肯定してくる  作者: 黒猫と珈琲


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4/20

第4話 俺、ずっと莉子が好きだった

「……よし!」


 土曜日の朝。私は姿見の前で、ぐっと拳を握った。


 今日着ているのは、先週買ったばかりのラベンダー色のワンピース。小さな花柄に、ふんわりした袖。ウエストのリボンを少し緩めに結んで、髪は毛先だけゆるく巻いてみた。鏡の中の私は、いつもより少しだけ大人っぽく見える。


 ……気がする。


「うう……緊張する」


 今日は、朔也と水族館へ行く日だ。しかも、ただのお出かけじゃない。


『そういうつもりで誘ってる』


 先週、朔也は確かにそう言った。


 つまり、今日は。


「……デート、なんだよね」


 口に出した途端、頬が熱くなる。


 朔也とは、小さい頃から何度も二人で出かけている。映画も買い物も、一緒に行ったことがある。なのに、今日は髪を整えるだけでもずいぶん時間がかかってしまった。いつもなら迷わず選ぶバッグだって、何度も持ち替えてしまったくらいだ。


 バッグを持ち、もう一度鏡を見る。胸元が少し気になった。いつものゆったりしたブラウスとは違って、身体のラインがわかる。思わずクローゼットに目を向けたけれど、すぐに首を振った。


「……今日は、これを着たい」


 私が可愛いと思って選んだワンピース。美月も褒めてくれたし、朔也だって。


『可愛いよ、莉子』


「…………っ!」


 だめだ。思い出すだけで、心臓がうるさい。


「もう! 朔也のばか!」


 本人がいないところで文句を言ってから、私は部屋を飛び出した。


     ◇


 待ち合わせ場所は、駅の改札前。


 約束の十分前に着いたのに、朔也はもう来ていた。黒の細身のパンツに、白いシャツ。上から薄手のダークグレーのジャケットを羽織っている。いつもより少しだけきれいめな格好で、無造作な黒髪も今日はきちんと整えられていた。


 ……あれ? なんか、いつもより格好よくない?


 そう思った瞬間、なぜか足が止まってしまった。


「……莉子?」


 先に気づいたのは朔也だった。


「あっ! お、おはよう!」

「おはよ」


 朔也がこちらへ歩いてくる。そして、私の目の前で足を止めた。


「…………」

「……朔也?」


 返事がない。朔也は私を見つめたまま、ほんの少し目を見開いていた。


 ……え? な、なに? もしかして、変?


「あ、あの……」

「似合ってる」

「……え?」

「そのワンピース」


 朔也は少しだけ視線を逸らした。


「やっぱり、可愛い」

「…………っ!」


 かああっ、と顔が熱くなる。


「そ、そんな……!」

「本当のことだし」

「だ、だから! そういうの、そんな簡単に言わないでよ!」

「……簡単じゃないけど」

「え?」

「なんでもない」


 朔也は小さく咳払いをした。


 ……今、なんて言った?


 簡単じゃないって、どういう意味?


 聞き返そうとしたけれど、彼はもう改札の方を向いていた。


「行こ」

「……う、うん!」


 私は慌てて、その隣に並んだ。


 ……もう。


 デートが始まって、まだ五分も経ってないのに。


 私の心臓、今日一日もつのかな。


     ◇


「わぁ……!」


 水族館に入った瞬間、思わず声が漏れた。


 青く照らされた大きな水槽の中を、色とりどりの魚たちが泳いでいる。頭上にはゆらゆらと光が揺れていて、まるで海の中にいるみたいだった。水槽の向こうを大きな魚がゆったりと横切るたびに、周囲から歓声が上がっている。私もすっかり夢中になって、ガラスに顔を近づけた。


「朔也、見て! あの魚、すっごく綺麗!」

「うん」

「あっ、こっちの子、ちっちゃい!」

「ほんとだ」

「わっ! あの魚、顔が面白い!」

「……莉子」

「なに?」

「さっきから魚の感想、全部その場で言ってる」

「だ、だって可愛いんだもん!」


 思わず頬を膨らませると、朔也が小さく笑った。


「楽しそうでよかった」

「うん! すっごく楽しい!」


 そう答えると、朔也の目元がふっと柔らかくなる。


 ……あ。また、その顔。


 最近、気づいてしまったことがある。朔也は誰にでも無愛想というわけじゃないけれど、あまり表情を変えない。でも、私が笑うと、ほんの少しだけ嬉しそうな顔をするのだ。以前なら気にも留めなかった小さな変化が、今は不思議なくらい気になってしまう。


 ……なんでだろう。


 そう思った途端、胸がきゅっとした。


「あっ、朔也! クラゲ!」


 考え込む前に、私は彼の袖を引いた。


「こっち! 早く!」

「はいはい」

「もう! おじいちゃんみたいな返事!」

「莉子が元気すぎるんだよ」

「まだ十九歳だもん!」

「知ってる」


 朔也が、また少しだけ笑う。その横顔を見ながら、私はなんだか嬉しくなった。


     ◇


 クラゲの展示室は、薄暗くて幻想的な空間だった。


 大きな円柱形の水槽には、半透明のクラゲが何匹も漂っている。青や紫の光に照らされて、ゆっくりと傘を開いたり閉じたりする姿は、まるで水の中に浮かぶ花みたいだった。館内には静かな音楽が流れていて、さっきまでの賑やかさが嘘のようだ。私は水槽の前で足を止め、しばらく見入ってしまった。


「……綺麗」


 思わず、息を呑む。朔也も隣で、水槽を見つめていた。


「来てよかった?」

「うん! すっごく!」

「そっか」

「朔也、覚えててくれたんだね。私がここに来たいって言ってたの」

「うん」

「ありがとう」


 顔を上げると、朔也が私を見下ろした。


「莉子が喜ぶと思ったから」

「…………」


 ……もう。


 そういうこと、さらっと言うんだから。


 私は慌てて水槽へ視線を戻した。


 そのとき、後ろから見学客の一団が近づいてきた。


「わっ!」


 小さな子どもが水槽へ駆け寄ろうとして、私は思わず一歩下がった。けれど、足元がふらついてしまう。


 次の瞬間。


「莉子」


 ぐい、と手を引かれた。


 気づけば、朔也のすぐ隣にいた。


「大丈夫?」

「う、うん……!」


 朔也の手が、私の手を包んでいる。


 大きくて、温かい手。


 ……え?


 ちょっと待って。


 手。


 手、繋いでる!?


「あ、あの、朔也……!」

「ん?」

「て、手……!」


 朔也は一瞬だけ自分の手元を見た。


 そして。


「……嫌?」

「…………」


 私は、ぶんぶんと首を振った。


「い、嫌じゃない!」

「そっか」


 朔也の指が、私の手をそっと握り直す。今度は、人混みから守るためだけじゃなくて、ちゃんと手を繋ぐみたいに。


「じゃあ、このままでいい?」

「…………うん」


 声が、ものすごく小さくなってしまった。


 朔也はそれ以上何も言わず、私の歩幅に合わせて歩き始める。私は、繋がれた手を見つめた。


 ……あったかい。


 昔だって、手を繋いだことはある。小さい頃、道路を渡るときとか、人混みではぐれそうになったときとか。でも、今は全然違う。手のひらから伝わる温もりを、こんなにも意識したことはなかった。


 ……これが、デートってことなのかな。


     ◇


 お昼は、水族館の中にあるカフェで食べることにした。


「……見て、朔也!」

「ん?」

「このオムライス、イルカの形してる!」

「ほんとだ」

「可愛い! これにする!」

「即決だな」

「だって、イルカだよ!?」

「うん。イルカだね」

「その言い方!」


 私は思わず笑ってしまった。朔也も小さく笑いながら、メニューを閉じる。


 料理が運ばれてくると、私はさっそくスマートフォンで写真を撮った。ケチャップで目が描かれたイルカのオムライスは、食べるのがもったいないくらい可愛い。周りには星形のにんじんまで添えられていて、見ているだけで楽しくなってくる。


「……朔也も撮る?」

「俺はいい」

「えー、記念なのに!」

「……じゃあ」


 朔也はスマートフォンを取り出した。


 そして、カメラを向けた先は。


 ……私?


「えっ!?」

「撮っていい?」

「わ、私!?」

「うん」

「な、なんで!?」

「今日の莉子、残しときたいから」

「…………っ!」


 ……っ、もう!


 今日の朔也、なんなの!?


 そんなこと言われたら、断れないじゃない!


「……い、いいけど」

「ありがと」

「でも、変な顔だったら消してね!」

「大丈夫だと思う」

「思うって何!?」


 朔也が小さく笑った。私は慌てて背筋を伸ばし、オムライスの皿を持つ。


「……こ、こんな感じ?」

「うん。いいよ」


 カシャッ、と小さな音がした。


「見せて!」


 朔也が画面をこちらへ向ける。そこには、イルカのオムライスを持って笑っている私が映っていた。


 ……あれ?


 なんだか、すごく楽しそう。


 いつものように胸元を気にして背中を丸めることもなく、自然に笑っている。ワンピースだって、ちゃんと可愛く写っていた。


「……いい写真」


 思わず呟くと、朔也が頷いた。


「うん。俺も好き」


 その声が、いつもより少しだけ優しく聞こえた。


 ……もう。


 今日は、何回ドキドキさせられるんだろう。


     ◇


 水族館を出た頃には、夕方になっていた。


 帰り道、私たちは駅へ向かってゆっくり歩いていた。空は淡いオレンジ色に染まり、吹き抜ける風が少しだけ涼しい。水族館で買った小さなイルカのキーホルダーが、バッグの持ち手で揺れている。


 手は、まだ繋いだままだった。


 ……結局、ずっと繋いでた。


 水族館の中でも、お土産を選ぶときも、帰り道でも。途中で何度か離したけれど、そのたびに朔也が自然に手を差し出してくれた。


 ……なんだろう。


 最初はあんなに緊張したのに、今はこの手を離すのが少し寂しい。


「莉子」

「ん?」

「今日、楽しかった?」

「うん! すっごく楽しかった!」

「そっか」

「朔也は?」

「楽しかった」

「ほんと?」

「うん。莉子がずっと笑ってたから」

「…………」


 私は思わず足を止めた。


「……朔也」

「ん?」

「今日、なんか変だよ」

「そう?」

「うん。いつもより、優しいっていうか……」


 そこまで言って、私は口を閉じた。


 だって、朔也は昔から優しい。いつだって、私のことを気にかけてくれる。だけど、今日はそれとは少し違う気がしていた。


 繋いだ手を見つめる。


 この手の温かさも、優しい眼差しも、今まで知らなかったものみたいに感じる。


 朔也はしばらく黙っていた。そして、繋いだ手をそっと緩める。


「莉子」

「……うん?」

「ちょっと、話していい?」


 いつもより真剣な声だった。私は、小さく頷いた。


     ◇


 駅へ続く道の途中に、小さな公園があった。


 夕方の公園は静かで、ベンチには誰も座っていなかった。朔也は私をベンチへ促すと、少しだけ距離を空けて隣に座った。木々の間から差し込む夕日が、足元に長い影を落としている。


 ……なんだろう。


 さっきまで、あんなに近かったのに。


 急に距離を置かれると、なんだか寂しい。


「……莉子」

「うん」


 朔也は一度、ゆっくり息を吐いた。それから、私の方を向く。


「俺、ずっと莉子が好きだった」

「…………え?」


 一瞬、何を言われたのかわからなかった。


 好き。


 朔也が、私を?


「……え、えっと……」


 頭が真っ白になる。朔也は私を急かさず、静かに続けた。


「中学の頃から。幼馴染としてじゃなくて」

「…………」

「ずっと、一人の女の子として好きだった」


 どくん、と心臓が大きく跳ねた。


 ……本当に?


 朔也が、私を?


 だって、私たちはずっと一緒にいて、小さい頃から当たり前みたいに隣にいて。私はずっと、朔也にとって家族みたいな存在なんだと思っていた。


「……なんで」


 気づけば、そんな言葉がこぼれていた。


「なんで、今まで言わなかったの?」


 朔也は少しだけ目を伏せた。


「関係、壊したくなかったから」

「……え?」

「莉子にとって、俺は幼馴染だろ」

「……うん」

「告白して、今までみたいに会えなくなるのが怖かった」


 朔也は落ち着いた声で話している。だけど、その表情はいつもより少しだけ硬かった。


 ……朔也も、怖かったんだ。


 なんだか不思議だった。昔から何でも知っているつもりだったのに、私は朔也のこんな気持ちを少しも知らなかった。


「でも、最近」

「うん」

「莉子が、俺のこと意識してくれてる気がして」

「…………っ!」


 図星だった。思わず視線を逸らしてしまう。


「だから、ちゃんと言おうと思った」


 朔也が、私を見つめる。


「莉子が好き」


 その言葉が、胸の奥にゆっくり落ちてきた。


 ……嬉しい。


 そう思った。驚いているのに、頭の中はぐちゃぐちゃなのに。朔也に好きだと言われて、私は確かに嬉しかった。


 でも。


「……朔也」

「うん」

「私ね」


 膝の上で、ぎゅっと手を握る。


「自分の身体、あんまり好きじゃないんだ」


 朔也は何も言わなかった。ただ、私の言葉を待ってくれている。


「胸が大きいの、ずっと気になってて……。可愛い服を着たくても、つい隠しちゃうし。人の視線が怖くなることもあるし……」

「うん」

「だから、なんていうか……」


 言葉がうまく出てこない。私は俯いたまま、小さく続けた。


「朔也に、どう見られるのかも、ちょっと怖い」


 言ってから、胸がぎゅっと苦しくなった。


 ……こんなこと、言うつもりじゃなかったのに。


 でも、朔也だからこそ、ちゃんと伝えておきたかった。


 幼馴染として何でも話せることと、恋人として見られることは、きっと違う。今日、朔也に手を繋いでもらって嬉しかった。でも同時に、今まで気にしていた自分の身体を、もっと意識してしまったのも本当だった。


 しばらく、沈黙が続いた。


 やがて、朔也が静かに口を開く。


「莉子」

「……うん」

「俺は、莉子のことが好きだよ」

「…………」

「でも、莉子が自分の身体を好きになれないからって、気持ちが変わるわけじゃない」

「……え?」

「無理に自信持たなくてもいいし、嫌な日は隠したっていいと思う」


 私は、ゆっくり顔を上げた。


「……朔也」

「莉子が何を着るかも、自分の身体をどう思うかも、莉子が決めていい」


 朔也の声は、いつもと変わらず落ち着いていた。


「俺は、莉子が好き。それだけ」


 胸の奥が、じんわりと温かくなる。


 ……ああ。


 やっぱり、この人は、ずっと私の知っている朔也なんだ。


 無理に励ましたりしない。気にするなとも言わない。ただ、私が感じていることを、そのまま受け止めてくれる。


 それが、たまらなく嬉しかった。


「……ありがとう」


 声が、少しだけ震えた。朔也は小さく頷いた。


「うん」


 夕方の風が、二人の間を通り抜ける。


 しばらく、私たちは黙っていた。でも、不思議と気まずくはなかった。


「……あのね、朔也」

「うん」

「私、今日すっごく楽しかった」

「うん」

「朔也と手を繋いだのも、嬉しかった」


 言葉にすると、また頬が熱くなる。


「可愛いって言ってくれたのも」

「……うん」

「だから、その……」


 私は膝の上で、ぎゅっと指を握った。


「もう少しだけ、考える時間をもらってもいい?」


 朔也は、すぐには答えなかった。ほんの少しだけ目を細めて、それから静かに頷いた。


「もちろん」

「……いいの?」

「うん。急がなくていい」

「……ありがとう」

「ただ」

「え?」


 朔也は少しだけ困ったように笑った。


「返事待ってる間も、普通に会いたいんだけど」

「…………っ!」


 思わず顔が熱くなる。


「そ、それはもちろん!」

「よかった」

「だって、朔也だもん!」

「……うん」


 朔也の口元が、ほんの少しだけ緩む。


「それ、今は結構嬉しい」

「……え?」

「なんでもない」


 もう! 朔也ってば!


 最後まで、私をドキドキさせるんだから。


     ◇


 その日の夜。


 私はベッドの上に座って、今日撮った写真を見返していた。


 イルカのオムライスを持って笑っている私。クラゲの水槽。お土産に買った、小さな青いイルカのキーホルダー。そして、朔也と一緒に撮った写真。


 帰り際、私からお願いして撮ってもらったものだ。


 画面の中の朔也は、いつもどおり少し眠たそうな顔をしている。でも、よく見ると。


 ……笑ってる。


 ほんの少しだけ、私の隣で。


「……朔也」


 小さく名前を呼んでみる。


 今日、朔也は私に好きだと言ってくれた。しかも、中学生の頃からずっと。


 ……何年も?


 そんなに長い間?


 私は何も知らずに、隣で笑っていた。幼馴染だから優しいんだと思っていた。


 でも、本当は。


「……ずっと、好きだったんだ」


 そう呟いた瞬間、胸がきゅっとした。そして、不思議なことに、嬉しくて少しだけ泣きそうになった。


 ……でも。


 私の気持ちは、まだちゃんと言葉にできない。


 朔也が好き。それは、きっと間違いない。だけど、それが幼馴染としてなのか、それとも男の子としてなのか。


 ……もう少しだけ、考えたい。


 スマートフォンが震えた。画面には、朔也からのメッセージ。


『今日はありがとう。楽しかった』


 私は小さく笑って、返事を打つ。


『私も! すっごく楽しかった!』


 少し間が空いてから。


『ワンピース、ほんとに似合ってた』


「…………っ!」


 ……もう!


 なんで最後にそれ言うの!?


 枕に顔を埋めたくなるのを、ぐっとこらえる。そして、少し迷ってから。


『ありがとう。また着るね』


 そう送った。すぐに既読がつく。


『うん。楽しみにしてる』


 たった、それだけ。だけど、胸の奥がじんわり温かい。


 私はスマートフォンを置いて、ベッドにごろんと寝転がった。


 ……朔也。


 今まで、当たり前だと思っていた幼馴染。いつも隣にいて、優しくて、私の好きなものを覚えてくれて。私が嫌だと思うことを、ちゃんと嫌だと受け止めてくれる人。


 そんな朔也が、私を好きだと言ってくれた。


「……どうしよう」


 ぽつりと呟く。


 でも、不思議と嫌な気持ちは少しもなかった。


 むしろ。


 ……明日も、会いたい。


 そう思っている自分に気づいて、私はそっと目を閉じた。


 もしかしたら、私の中ではもう答えが出ているのかもしれない。ただ、まだそれを口にする勇気がないだけで。


 ……ねえ、朔也。


 もし、私が「好き」って言ったら。


 あなたは、どんな顔をするのかな。


 そんなことを考えながら、私はもう一度、今日の写真を開いた。


 画面の中の朔也は、私の隣で優しく笑っていた。

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