第11話 優しい同級生の、意外な一面
「桃瀬さん、ここの資料なんだけど」
「あっ、有坂くん!」
水曜日の午後。私は大学の図書館で、有坂悠くんと課題の続きを進めていた。
先週の講義で二人一組になってから、こうして一緒に作業するのは二回目。今回のテーマは、広告が消費者の行動に与える影響についてだ。調べることは多いけれど、普段何気なく見ている広告の仕組みがわかるのは、なかなか面白い。それに、有坂くんはとても話しやすかった。私の意見をちゃんと聞いてくれるし、わからないところも丁寧に説明してくれる。おかげで、思っていたよりずっと順調に進んでいた。
「ここ、桃瀬さんが調べてくれた内容を入れると、説得力が増すと思うんだ」
「……ほんと?」
「うん。特に、この比較の部分」
有坂くんがノートパソコンの画面を指さした。
「広告を見た人と見ていない人で、購入意欲にどんな違いがあるか。桃瀬さんが見つけてくれた資料、わかりやすかったよ」
「……えへへ」
思わず笑ってしまう。
「頑張って調べたから、嬉しい!」
「うん。助かった」
有坂くんが柔らかく微笑んだ。
……こういうところ、いい人だなぁ。
ただ褒めるだけじゃなくて、どこがよかったのかをちゃんと言ってくれる。自分の調べたことが役に立っているとわかると、もっと頑張ろうという気持ちになれる。
「じゃあ、私、この部分まとめるね!」
「お願い。僕はグラフの方を作るよ」
「うん!」
私はノートを開き、再び作業に取りかかった。
◇
「……うーん」
三十分ほど経った頃。私は画面を見つめながら、小さく唸っていた。
内容はまとまってきたけれど、発表用の文章がどうしても長くなってしまう。五分しか持ち時間がないのに、このままでは絶対に時間オーバーだ。説明を削ってみても、今度は大事な部分が抜けてしまう。
「……難しいなぁ」
「どこ?」
隣から有坂くんが声をかけてきた。
「ここ。説明を短くしたいんだけど、削ると意味がわからなくなっちゃって」
「ああ、なるほど」
有坂くんは画面を確認すると、少し考えてから口を開いた。
「最初に結論を言って、そのあと具体例を一つだけ紹介するのはどう?」
「……結論から?」
「うん。全部説明しようとしなくても、聞いてる人に伝わればいいから」
「……そっか!」
私は思わず手を叩きそうになった。
……ここ、図書館だった!
慌てて手を止めると、有坂くんが小さく笑った。
「桃瀬さんって、反応が素直だよね」
「……え?」
「嬉しいとき、すぐ顔に出る」
「ええっ!?」
私は思わず頬を押さえた。
「そ、そんなにわかりやすい?」
「うん。結構」
「……うう」
美月にも、よく同じことを言われる。
私って、そんなに顔に出るのかなぁ。自分では普通にしているつもりなのに、周りには全部伝わっているらしい。
「でも、いいと思うよ」
「……え?」
「話してて楽しいから」
有坂くんは、いつもと同じ穏やかな笑顔で言った。
「桃瀬さんが楽しそうだと、こっちまで楽しくなる」
「…………」
……あれ?
なんだろう。今の言葉、ちょっと照れくさい。
「……ありがとう」
私は小さく笑った。
「有坂くんも、話しやすいよ!」
「……そっか」
有坂くんは一瞬だけ目を丸くした。それから、少し嬉しそうに笑った。
「ありがとう」
◇
「じゃあ、一回通してみようか」
「……うん!」
資料がまとまったところで、私たちは発表の練習をすることにした。
図書館の閲覧席では声を出せないので、予約しておいたグループ学習室へ移動する。ここなら、ほかの利用者の迷惑にならない範囲で話し合いや発表練習ができるらしい。机の上に資料を並べ、私はノートを持ったまま立ち上がった。
「……よし!」
「緊張してる?」
「……ちょっと」
「まだ本番じゃないよ?」
「わかってるんだけど!」
私は思わず笑ってしまった。
人前で話すのは、やっぱり苦手だ。特に発表となると、急に頭が真っ白になってしまう。内容は理解しているのに、いざ説明しようとすると言葉が出てこなくなるのだ。
「じゃあ、まず僕からやるね」
「……いいの?」
「うん。先に見本があった方がやりやすいでしょ?」
「ありがとう!」
有坂くんは私の前に立ち、資料を開いた。
「今回、僕たちは広告が消費者の購買行動に与える影響について調べました」
……おお。すごい。
声が落ち着いていて、聞き取りやすい。視線も資料ばかり見ず、ちゃんとこちらに向けている。説明の順番も自然で、難しい言葉には簡単な補足まで入っていた。
……なんだか、先生みたい。
有坂くんは五分ほどで発表を終えた。
「……こんな感じかな」
「すごい!」
私は思わず拍手した。
「有坂くん、発表上手だね!」
「ありがとう。高校の頃、こういうの結構やってたから」
「へえ!」
「生徒会に入ってたんだ」
「……生徒会!?」
私は目を丸くした。
「すごい! 会長さん?」
「いや、副会長」
「十分すごいよ!」
思わず身を乗り出すと、有坂くんが照れくさそうに笑った。
「そんな大したことじゃないよ」
「いやいや! 私なんて、学級委員になっただけで緊張してたもん!」
「桃瀬さん、学級委員やってたんだ?」
「うん! 中学のときに一回だけ!」
「へえ。意外だね」
「でしょ? でも、くじ引きで当たっちゃっただけなの」
私は苦笑した。
「最初は大変だったけど、最後は結構楽しかったかな」
「……そっか」
有坂くんが、少しだけ目を細めた。
「桃瀬さんらしいね」
「……え?」
「頼まれたこと、ちゃんと頑張りそうだから」
「…………」
なんだか、くすぐったい。
「……そんなことないよ?」
「あると思うけどな」
有坂くんは笑いながら、私の資料を差し出した。
「じゃあ、次は桃瀬さんの番」
「……うっ!」
「大丈夫。途中で止まってもいいから」
「……はい!」
私は深呼吸をして、立ち上がった。
◇
「今回、私たちは……えっと」
開始から一分。早くも、言葉が詰まった。
……あれ? 次、なんだっけ?
私は慌てて資料を見る。
「……あっ、そうそう!」
再び話し始めたものの、今度は順番を間違えてしまった。説明しようと思っていたグラフを飛ばして、次の結論を話し始めていたのだ。
「……うう」
私はとうとう、肩を落とした。
「……ごめん。有坂くん」
「何が?」
「全然うまくできない……」
情けなくなって、資料を見つめる。
せっかく一緒に頑張っているのに。私のせいで発表が失敗したら、申し訳ない。
「……桃瀬さん」
「……うん?」
「ひとつ聞いていい?」
「……なに?」
「発表のとき、誰を見てる?」
「……え?」
思わず首を傾げた。
「誰って……先生とか、ほかの学生とか?」
「うん。じゃあ、次は僕だけ見て話してみて」
「……有坂くんを?」
「そう」
有坂くんは、私の正面の椅子に座った。
「今は僕に説明するつもりでいいよ。難しく考えないで」
「……でも」
「さっき広告の話をしてたとき、桃瀬さん、すごくわかりやすかったから」
「……ほんと?」
「うん。だから、いつもどおり話せば大丈夫」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。
「……じゃあ、もう一回やってみる」
「うん」
私は資料を持ち直した。そして、有坂くんを見る。
「えっとね、今回調べた広告なんだけど……」
最初は少し緊張した。でも、有坂くんが時々頷いてくれるので、だんだん話しやすくなってきた。まるで、さっきまで二人で打ち合わせをしていたときみたいだ。
「それで、このグラフを見ると、広告を見た人の方が購入意欲が高くなってるの」
「うん」
「ただし、広告の種類によっても違いがあって……」
……あれ?
話せてる。さっきより、ずっと自然に。
途中で言葉に詰まることもなく、気づけば最後まで説明し終えていた。
「……できた!」
私は思わず声を上げた。
「有坂くん! できたよ!」
「うん。すごくよかった」
有坂くんが笑顔で拍手してくれる。
「今のなら、本番も大丈夫だと思う」
「ほんと!?」
「うん。あとは少し時間を調整するくらいかな」
「……やったぁ!」
私は嬉しくなって、思わず両手を上げた。
すると。
「……ふっ」
有坂くんが、小さく吹き出した。
「……え?」
「ごめん。桃瀬さん、本当に嬉しそうだから」
「だ、だって嬉しいんだもん!」
「うん。見てればわかる」
有坂くんは、いつもより少しだけ楽しそうに笑った。
……あ。こんなふうに笑うんだ。
普段は穏やかで、大人っぽい雰囲気なのに。今は、同い年の男の子らしい顔をしている。
「……ねえ、有坂くん」
「ん?」
「笑うと、ちょっと雰囲気変わるね」
「……そう?」
「うん! なんか、親しみやすい!」
すると、有坂くんは一瞬だけ黙った。それから、少しだけ顔を逸らした。
「……それ、褒めてる?」
「もちろん!」
「……そっか」
有坂くんは小さく笑った。
私はもう一度資料を確認しながら、次の練習ではもっと上手に話せそうだと考えていた。
◇
練習を終えた頃には、午後四時を過ぎていた。
「……ふぅ!」
私は椅子に座り、思いきり伸びをした。
「疲れたぁ!」
「お疲れさま」
有坂くんが、自分のペットボトルを手に取る。
「桃瀬さん、飲み物買ってくる?」
「あ、うん! 私も買おうかな」
「じゃあ、一緒に行こう」
私たちはグループ学習室を出て、廊下の自動販売機へ向かった。
「桃瀬さん、何飲む?」
「うーん……」
私は自動販売機を眺めた。
いちごミルク。ミルクティー。カフェオレ。
……どれもおいしそう!
「迷う……!」
「そんなに?」
「だって、全部好きなんだもん!」
有坂くんが小さく笑った。
「じゃあ、今日は一番飲みたいものにしたら?」
「……それが決められないの!」
「なるほど。難しい問題だね」
「そうなの!」
真剣に頷くと、有坂くんがとうとう声を出して笑った。
「……あははっ!」
「ちょっと! 笑わないでよ!」
「ごめん。でも、桃瀬さんって面白いね」
「ええっ!?」
私は頬を膨らませた。
「私、真剣に悩んでるのに!」
「うん。そこが面白い」
「もう!」
結局、私はミルクティーを選んだ。有坂くんは無糖の紅茶。二人で図書館の休憩スペースにある窓際のベンチに座り、少しだけ休憩することにした。
◇
「……そういえば」
ペットボトルの蓋を開けながら、有坂くんが口を開いた。
「桃瀬さんって、いつも楽しそうだよね」
「……え?」
「大学でも、よく笑ってるから」
「……そうかな?」
「うん」
有坂くんは少しだけ微笑んだ。
「最初に話したときから、明るい人だなって思ってた」
「……えへへ」
私は照れくさくなって笑った。
「でも、私も落ち込むことあるよ?」
「そうだろうね」
「……え?」
意外な返事に、思わず顔を上げる。
有坂くんは、窓の外を見ながら続けた。
「いつも笑ってるからって、悩みがないわけじゃないでしょ」
「…………」
私は、少しだけ驚いた。
……そういうふうに考えてくれるんだ。
今まで、明るいから悩みなんてなさそう、と言われたことは何度もあった。でも、有坂くんは違った。私が普段笑っていることと、悩みがあることを、別々に考えてくれている。
「……うん」
私は小さく頷いた。
「そうだね」
「……うん」
有坂くんはそれ以上、何も聞かなかった。ただ、穏やかに微笑んでいる。
……なんだか、朔也とは違うけれど、安心する人だなぁ。
「……ありがとう」
思わず言うと、有坂くんが首を傾げた。
「何が?」
「……なんとなく!」
私は笑った。有坂くんも、つられて笑った。
◇
「……あっ!」
ふと、時計を見て声を上げた。
「どうしたの?」
「もうこんな時間!」
スマートフォンを見ると、朔也からメッセージが届いていた。
『課題、終わった?』
……あ。そうだった!
今日は課題が終わったら、朔也と一緒に帰る約束をしていたんだ。
『今終わったよ!』
すぐに返信する。すると、ほどなくして返事が来た。
『正門のところにいる』
「……ふふっ」
思わず笑みがこぼれた。
「……桃瀬さん?」
「あっ、ごめん!」
私は慌てて顔を上げた。
「彼氏が待ってるから、そろそろ行くね!」
「…………」
有坂くんが、一瞬だけ黙った。
「……彼氏?」
「うん!」
私は笑顔で頷いた。
「大学の二年生なんだけど、幼馴染なの」
「……そうなんだ」
有坂くんは少しだけ目を細めた。
「付き合って長いの?」
「ううん! まだ最近!」
「……そっか」
有坂くんが、小さく笑った。
「……幸せそうだね」
「……え?」
「彼氏の話するとき、すごく嬉しそうだから」
「…………っ!」
私は思わず頬を押さえた。
「そ、そんなに!?」
「うん」
有坂くんが、いつもの穏やかな笑顔で頷く。
「……いいね」
私はなんだか照れくさくなって、ペットボトルを鞄にしまった。
「じゃあ、有坂くん! また来週!」
「うん。またね、桃瀬さん」
私は笑顔で手を振り、正門へ向かった。
◇
「朔也!」
正門の近くに立っていた朔也が、私の声に振り返った。
いつもの黒いカーディガン。少し長めの前髪。そして、私を見るとほんの少しだけ柔らかくなる瞳。
……ああ。やっぱり、好き。
「……莉子」
私は小走りで近づいた。
「お待たせ!」
「ん。課題どうだった?」
「すっごく順調!」
私は嬉しくなって、今日の出来事を話し始めた。
「有坂くんが発表の練習に付き合ってくれたんだけどね、私、最初全然うまくできなくて!」
「……うん」
「でも、聞いてる人に説明するつもりで話したら、ちゃんとできたの!」
「……そっか」
朔也の目元が、ふっと柔らかくなる。
「よかったな」
「うん!」
私は笑顔で頷いた。
すると、朔也がそっと手を差し出した。
「帰ろ」
「うん!」
私は迷わず、その手を取った。
大きくて、温かい手。指が自然に絡み合う。
「……莉子」
「ん?」
「今日、頑張ったんだな」
「……え?」
朔也は私を見下ろした。
「発表、苦手って言ってただろ」
「……うん」
「ちゃんと練習したんだなって」
「…………」
胸が、きゅっとした。
……ああ。この人は、やっぱり私のことをよく覚えてくれている。
有坂くんが手伝ってくれたことも嬉しかった。でも、朔也にこうして自分の頑張りを認めてもらえると、また違う嬉しさが込み上げてくる。
「……うん!」
私は繋いだ手を、ぎゅっと握った。
「頑張った!」
「そっか」
朔也が小さく笑った。
「偉い」
「…………っ!」
……もう。
そんなふうに言われたら、また好きになっちゃうじゃない。
「ねえ、朔也!」
「ん?」
「今度、発表の練習に付き合ってくれる?」
「いいよ」
「ほんと!?」
「うん。何回でも」
「……えへへ。ありがとう!」
私が嬉しくなって笑うと、朔也は繋いだ手を握り直した。
「……でも」
「ん?」
「俺の前だと、もっと緊張するんじゃない?」
「……えっ?」
私は思わず足を止めた。
……た、確かに!
だって、朔也にじっと見つめられたら、発表どころじゃなくなっちゃうかも!
「……どうしよう」
「何が?」
「朔也がかっこよすぎて、集中できないかもしれない……!」
思わず本音が飛び出した。
すると、朔也がぴたりと立ち止まった。
「…………」
「……あれ? 朔也?」
見上げると、朔也は片手で口元を覆っていた。
「……そういうこと、普通に言うよな」
「……え?」
「いや。なんでもない」
そう言いながら、朔也の耳がほんの少し赤くなっている。
……あっ!
もしかして、照れてる?
「……ふふっ」
私が笑うと、朔也は少しだけ困ったように目を細めた。
「莉子」
「なあに?」
「……帰ったら、練習付き合うから」
「うん!」
「ちゃんと集中して」
「……が、頑張ります!」
私たちは顔を見合わせて笑った。
……うん。
今日も、幸せだなぁ。
私は繋いだ手をもう一度ぎゅっと握り、朔也と並んで歩き始めた。
◇
その頃。
大学の図書館では、有坂悠が一人でノートパソコンを閉じていた。
画面には、今日二人で作った発表資料。その中には、桃瀬莉子が一生懸命まとめた文章も残っている。彼女が帰ったあと、悠は最後にもう一度だけ資料を確認していた。
「……彼氏、か」
小さく呟いた。
今日、初めて知った。彼女には恋人がいる。それも、小さい頃からずっと一緒だった幼馴染なのだという。
「……そっか」
悠は椅子の背にもたれ、天井を見上げた。
最初は、ただの課題のペアだった。明るくて、よく笑う女の子。少し慌てん坊で、嬉しいことがあるとすぐ顔に出る。でも、真面目で、一生懸命で、何より人の話をきちんと聞いてくれる。
自分の意見を否定せず、素直に耳を傾けてくれる。何かを手伝えば、心から嬉しそうにお礼を言ってくれる。自分が発表を終えたときも、まるで自分のことのように喜んでくれた。
そんな彼女と過ごす時間が、いつの間にか楽しみになっていた。
『有坂くんも、話しやすいよ!』
あの笑顔が、ふと頭に浮かぶ。
『笑うと、ちょっと雰囲気変わるね』
何気なく言われた言葉。それなのに、なぜか妙に嬉しかった。彼女が自分のちょっとした表情に気づいてくれたことが、思っていた以上に心に残っていた。
「…………」
悠は小さく息を吐いた。
……ああ。そういうことか。
今日、彼氏がいると聞いたとき、ほんの少しだけ胸が痛んだ。自分でも意外なくらい、はっきりと。
……好きになりかけていたんだ。
いや。
たぶん、もう。
「……遅かったな」
悠は苦笑した。
彼女が彼氏の話をするときの表情を、ちゃんと見ていた。あんなに嬉しそうな顔をするのだから、きっと大切な人なのだろう。
……だからといって。
簡単に気持ちが消えるわけでもない。
「……困ったな」
誰に聞かせるでもなく呟く。
けれど、その顔に怒りや苛立ちはなかった。ただ、少しだけ切なそうに微笑んでいる。
悠はスマートフォンを手に取り、来週の発表予定を確認した。
来週も、彼女と一緒に課題を進める。それは変わらない。彼女に恋人がいるからといって、態度を変えるつもりもなかった。
ただ。
……もう少しだけ、彼女のことを知りたい。
そんな気持ちが、胸の奥に静かに芽生えていた。
彼女が好きなのは、きっと自分ではない。それは、今日の笑顔を見ればわかる。
それでも。
有坂悠の恋は、まだ始まったばかりだった。




