↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】嘘ばかりの婚約者様、どうぞ愛する人とお幸せに  作者: 風見ゆうみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/56

52  母と姉の後悔 ⑧(ノーリーSide)

 ティファリーに取り付く島もなく拒否されただけでなく、ケインにも助けてもらえなかったノーリーは、涙を流しながら絶縁状の内容を確認した。


 といっても、大して長い文章ではなく、今日をもって、ノーリーとティファリーは一切の関わりを持たないこと。それを故意に破った場合は、今よりももっと過酷な環境に送られること。その二つが書かれているだけだった。


(今でさえ最悪だというのに、もっと酷い場所があるの? そんなの嫌よ!)


「ティファリー、酷いわ。あなたに縁を切られたら、私は一生家に戻れなくなるわ!」


 以前、家に戻りたいと伝えた時には、ティファリーが許せば戻ることができると言われていた。縁を切るということは、許してもらえなくなることと同じだ。


(ああ、本当に惨めだわ。こんなことになるなら、実家に出戻った時点でティファリーと仲良くしておけば良かった!)


「お姉様、そんなにも嫌ならいつものように嘘をついて、私を悪役にしてくださいませ。あなたの言葉を信じるか信じないかは、お父様たちにお任せしましょう」 

「そ、それは、どういう意味?」


 鼻をすすり、涙をドレスの袖で拭いながら、ノーリーは尋ねた。


「お姉様を家に戻すか戻さないかは、私が決めることではありません。あの家はお父様のものですから」

「そ、そうかもしれないけど」

「ですから、お父様の判断にお任せすると伝えるつもりです」


(そうだわ。ティファリーに縁を切られたと訴えれば、お父様たちも今までのように話を聞いてくれるかもしれない)


 ここまでこじれることになったのは、ノーリーの言葉だけを信じ込んでいた家族の非でもある。

 

(お父様たちなら何とか丸め込めるかもしれない)


 希望の光が差した気がして、ノーリーの口元に一瞬だけ笑みが浮かんだ。ティファリーに気づかれないように、慌てて泣きまねを始める。


「うっ……うっ……、ごめ、ごめんなさいっ」


 床に座り込んだノーリーは、また手紙を手から離すと、顔を両手で隠し涙ながらに謝った。


(涙で化粧が落ちているもの。こんな姿をケイン殿下に見せられないわ)


「今すぐに署名をしてくださいますか?」


 頭上から明るい口調のティファリーの声が聞こえた。

 泣いている自分に対し、同情する素振りを見せないティファリーを冷たく感じ、苛立ちを覚えたが、言い返すのを何とか堪える。


(泣いている人を見たら、普通は同情心や罪悪感を感じるのが普通じゃないの?)


「……っ、わかったわ。それが、あなたのためかのよね」

「そうです。これでお互いに気持ちが晴れますね」


(お互いにですって? 喜んでるのはあなただけじゃない!)


 苛立ちを覚えつつも、ケインの前ではか弱い女性でいたかったノーリーは、絶縁状を手に取り、よろめきながら立ち上がる。


「わかったわ。ティファリー、あなたがそこまで望むのなら署名をします」

「ありがとうございます」


 書き物机の椅子に座っていたケインと入れ替わり、羽根ペンを手に取った。

 記入しながら、ティファリーに尋ねる。


「もし、私がお父様たちに許してもらえて、家に帰ることになったら、あなたはどうするの?」

「そうなった時は、私が家から出ていきますので、ご安心を」

「そ……そう、それならいいわ」


(ティファリーがいなくなるのなら、私は家に帰ることができるわ! 家に帰って落ち着いたら、お父様に頼んで、ケイン殿下との婚約の話を進めてもらわなくちゃ)


 この時のノーリーは、全く反省していないばかりか、ティファリーとの絶縁を密かに喜んでいた。しかし、自分の考えが浅はかだったと、すぐに思い知らされることになるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。