50 母と姉の後悔 ⑥(ノーリーSide)
「そうでしたわね。失礼いたしました。話に入る前にお渡ししたいものがあります」
ティファリーはコホンと咳ばらいをしたあと、廊下で待っていた侍女に声をかけた。
ノック後、部屋に入ってきた侍女は、ティファリーに二つ折りにされた白い紙を手渡した。
「ありがとう」
ティファリーが笑顔で紙を受け取ると、侍女は一礼して部屋から出ていく。扉が閉まったことを確認し、ティファリーはノーリーに向き直る。
「お姉様にお渡ししたいものがあります」
「……何かしら」
ティファリーの手にある紙に何が書かれているのか。ノーリーは警戒心を顕にして尋ねた。
「お姉様は私に許してもらえれば何とかなると思っていらっしゃいますよね」
「そんなことは……」
ないと言いかけて、ノーリーは言葉を止めた。さすがに今までの自分の発言から、そう捉えられてもおかしくないと考えた。
(ティファリーに許してもらえなければ家に帰れないことは間違いない。ここは素直に認めたほうが良さそうね。そして、頑なに断ってくるティファリーを見たケイン殿下は彼女に幻滅するといったシナリオはどうかしら)
こぼれ出そうになる笑みを必死に打ち消し、悲しげな表情でノーリーは頷く。
「そうよね。あなたがそう思うのもおかしくないわ。だけど、私は本当に反省したの。あなたとの関係を良好なものにしたいのよ!」
ノーリーは勢いよく立ち上がり、ティファリーに頭を下げる。
「お願いします! どうか許してください! そして、私にあなたと仲良くするチャンスをください!」
「無理です」
ティファリーは考えることなく即答した。
(そうくると思っていたわ!)
「ティファリー、私はここでの生活が辛いからというだけで、ここから出ようとしているわけじゃないの! あなたと一緒にいたいからよ!」
「お断りします」
ティファリーは間髪入れずに答え、手に持っていた紙をノーリーに差し出した。
「家族でいる限り、あなたは私にしつこく付きまとおうとするでしょう。そして、私があなたに厳しい対応を取れば、家族なんだから許してあげろと言う人も出てくるでしょう」
「な、何が言いたいの?」
嫌な予感がして、ノーリーは唾をゴクリと飲み込む。
「私とあなたが家族でなくなれば、少なくとも厳しい対応はとれます」
「はっきり言いなさいよ!」
「目を通してくださいませ」
「……何なのよっ!」
ティファリーの手から紙を奪い取ったノーリーは、内容を見て目を見開いた。
ティファリーが持ってきたのは、ノーリーとの絶縁状だった。




