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【書籍化決定】嘘ばかりの婚約者様、どうぞ愛する人とお幸せに  作者: 風見ゆうみ


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45  母と姉の後悔② (ノーリーSide)

 エレインがティファリーとの交渉に失敗した話は、すぐにノーリーにも伝えられた。

 部屋で手紙を受け取った時のノーリーは、これで家に戻ることができると思い込んでいたため上機嫌だった。

 しかし、読み進めていくうちに、彼女の表情は醜く歪んでいく。


「何よ! 何とかしてくれるんじゃないの!? それにティファリー!」


 書き物机に手紙を投げ捨て、靴を履いたままシングルベッドに飛び乗る。衝撃でバキッと板が折れる音が聞こえたが気にしない。


(昔のあの子はお母様と一緒で、お祖母様が苦手だったじゃない! どうして言うことを聞かないの!?)


 苦手だからといって、言うことを聞くがイコールにならないのだが、怒りに支配されているノーリーには、冷静な思考が浮かばなかった。


 真っ白なカバーがかけられた柔らかな枕に拳をぶつける。


「お祖母様が使えないなら、やっぱり自分で動くしかないのね」


 今のノーリーは、寮以外は自由に行き来することはできない。罰である仕事を辞めることはできないにしても、家から通うことは可能である。

 それに家に帰れば、少なくとも彼女が今着ているようなみすぼらしい服は着なくていいと考えていた。


(反省したふりをして、とにかくここから出してもらわなくちゃ。猫を被っていれば、また両親は私を信用してくれるようになるはず)


 ノーリーは未だにティファリーへの対抗心をなくしていなかった。

 余裕な笑みを浮かべるティファリーを思い出し、ノーリーは悔しさを押し殺すために唇を噛み締めた。


(待ってなさい、ティファリー! あなたの居場所は私が奪ってやる。そして、ケイン殿下も私のものよ!)


 善は急げと言わんばかりに、ノーリーはベッドから下りて、書き物机の椅子に座った。机の上には恋愛小説が2冊とペン差しに刺さった羽ペンとインクがある。

 横長の引き出しから赤い押し花が施された便箋と封筒を取り出して、筆を執った。

 

 手紙を送った5日後に、父から返信があった。反省している。またみんなで暮らしたいというノーリーの願いについて、詳しく話を聞きたいので、近々、家族が話を聞きに行くと書かれていた。


(家族……って、まさか、ティファリーじゃないわよね? 彼女は私のことを嫌っているんだもの。わざわざ遠い所までは来ないわよね。となると、来るのはソーラドかしら?)


 往生際が悪く、ポジティブ思考のノーリーは、弟なら今度こそ自分のことを信じてもらえるだろうと思い込んだ。  

 そのため、話し合い当日、目の前に現れた人物に動揺することになる。


 3日後の夕方。仕事を終えたノーリーは寮の自分の部屋に戻った。家から持参していたピンク色のワンピースに着替え、椅子に座って家族がやって来るのを待った。


 そして、約束の時間の5分前。彼女の部屋の扉がノックされた。勢いよく立ち上がり、笑顔で扉を開ける。


「よく来てくれたわね!」


 目の前に立つ若い男性を見て、ノーリーは歓迎の言葉を述べようとしたが、あまりの驚きに動きを止めた。


「悪いな。ティファリーに無理を言って同行させてもらった」

「え? あ、は、はい?」


 動揺がおさまらず、ノーリーは目を見開いて口をパクパクと動かす。

 訪ねてきたのは、ソーラドではなくケインだった。


(ソーラドがケイン殿下に今日の話をしたのね! こんな所までわざわざ来てくださるなんて、ケイン殿下は私のことが気になるんだわ!)

 

「迷惑だったか?」

「とんでもないことでございます! ケイン殿下に来ていただけるなんて光栄ですわ!」


 今日のケインはノーリーにとって今までよりも輝いて見える。というのも、彼の出で立ちが異性を意識しているように見えたのだ。

 

「狭い部屋ですけれど、どうぞお二人共中へお入りになって!」


 お二人共というのは、ケインとソーラドのつもりだった。しかし、ノーリーはこの時になってやっと、自分の考えが甘かったことを知る。


「歓迎していただき、ありがとうございます」


 ケインの背後から姿を現したのは、満面の笑みを浮かべたティファリーだった。


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