↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】嘘ばかりの婚約者様、どうぞ愛する人とお幸せに  作者: 風見ゆうみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/56

43 元婚約者と祖母の嘆き ③

 訪ねてきたエレインを応対することになったのは、母のアンだった。

 というのも、エレインはティファリーではなく、アンを指名したからだ。

 夫であるノウンは、息子たちと共に領地視察に出ている。エレインはわざとノウンがいない時にやって来ていた。


(お祖母様の考えていることはお見通しですが、お母様だけではやはり心配です)


 青い顔をしている母を見て心配になったティファリーは、自分も一緒に話を聞くことにした。


 ティファリーが一緒に応接室に入ると、エレインはにっこり微笑んだ。

 ティファリーとは、後で話をしようと思っていたので、わざわざ呼び出さなくて良くなったからだ。

 メイドがお茶を淹れて出ていってすぐに、エレインは口を開いた


「アン、あなた、母親としてノーリーが可哀想だと思わないの?」

「ど、どういうことでしょうか」


 明らかにアンはエレインに怯えていた。いくら母親とはいえ、身分的には公爵夫人である。強く言ってもいいものだ。しかし、長年母から虐げられていた彼女は、エレインへの恐怖が勝ってしまっていた。


「ノーリーを家に戻してあげなさいと言っているのよ!」

「お祖母様、ノーリーお姉様を家に戻さないようにしたのは私です。お母様に何を言っても意味がありませんよ」

「……なんですって?」


 割って入ったティファリーに、エレインは眉根を寄せて聞き返した。


「そのままの意味です。お姉様を家に戻すことはありませんので、それが目的でしたらご期待には沿えません。今すぐにお帰りくださいませ」

「ティファリー、あなた、なんて生意気な口を!」


 エレインは顔を真っ赤にしてティファリーを睨みつけた。ティファリーも怯むことなくに睨み返した。すると、エレインは自分のもう一つの目的を思い出したのか、表情を和らげた。


「ま、まあ、そうね。ノーリーは悪いことをしたかもしれないわね。でも、もう少し優しい罰にしてあげたらどうかしら。あなたは今、ケイン殿下と親しいのでしょう? 殿下に冷たい人だと思われたくないんじゃないの?」

「ケイン殿下は私の考えに賛成してくださっていますので、心配には及びません」


(どうしてケイン殿下の話が出るのでしょう。もしかして、私と殿下の関係を勘違いしているのでしょうか)


 ケインがティファリーにご執心しているのは、多くの人が知っている。だが、当の本人は全く気づいていなかった。


 ティファリーがきっぱりと答えると、エレインは苦虫を噛み潰したような顔になった。


 エレインの記憶にあるティファリーは、目の前で俯いているアンと似たようなものだった。目の前で自分を冷たい目で見つめるティファリーに、怯えの色などない。今まで通りに事が運ばないのだと理解はできた。


「そんなに冷たい態度をとらないでちょうだいよ」


 エレインは媚びた笑みを浮かべて続ける。


「ねえ、ティファリー、あなたとは話をあまりしたことがないわよね。ゆっくり落ち着いて話をしましょうよ」

「お祖母様、私は落ち着いておりますよ。私たちがあまり話をしたことはないのは、あなたが私を嫌っているからです」

「そ、そんな!」


 今まではそうだったが、今は違う。エレインは焦った顔で否定しようとした。しかし、ティファリーはそれを許さない。


「お祖母様、よく聞いてくださいませ。自分で言うのもなんですが、お父様たちは過去の自分が私を信じなかったことを、かなり悔やんでおられます。ですから、私に強く出ることはできません。そして、それと同時につく必要のない嘘をつき、私を傷つけたお姉様たちに失望しています」

「な、何が言いたいの?」

「お祖母様がどんなに望んでも、ノーリーお姉様はこの家に戻ってくることはないということです」

「どうしてそんな! あの子だって反省しているのよ!」

「今まで平気で嘘をついてきたのです。その反省が嘘ではないと証明するには、罰を受け入れるしかないと思いますが?」


(馬鹿なことをしたと本気で思っているのなら、今の状況は自分への罰と受け止められるはずです)


 ノーリーの場合、命を奪うような罰を受けているわけではないし、ティファリーもそこまでは望んでいない。

 ただ、音を上げるには早すぎる。


「……あなたの言いたいことはわかったわ。とにかく、その、私とあなたの間には誤解があると思うの。だから……」

「落ち着いて話をしましょうとおっしゃるのですか? 申し訳ございませんが、私は色々と忙しいのです。また後日、連絡だけさせていただきますね。ですから、今日はお帰りくださいませ」

「……わかったわ」


 エレインは、これ以上食い下がっても意味がないと悟った。

 ティファリーに言い負かされるなど、エレインにとってはあり得ないことである。そして、こんなことになるくらいなら、ティファリーと仲良くしておけば良かったと悔やんだ。

 屈辱と後悔を覚えながらも、今日のところは大人しく帰ることにしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。