42 元婚約者と祖母の嘆き ②
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前半はゲッティ視点になります。
どんなに嫌だと拒否しても、ゲッティは鉱山で働かなければならなくなった。
相変わらず彼は嘘をつくことが悪いという自覚はなく、自分の想像は実際に起きたこととして、記憶を修整していた。
問題が起こったのは、彼が働き始めて二十日後のことだった。労働者同士のトラブルで、ゲッティがとある若い男に暴力を振るわれたのだ。
事の発端はゲッティで、何か理由をつけてすぐに休もうとする上に、サポートしてくれる同じチームの仲間たちに仕事が遅いと言い出した。
仲間たちも最初のうちは我慢していた。しかし、黙っていてもゲッティの性格が改善するわけでもない。
それを見かねた労働者のリーダー格の男がゲッティに注意をしたところ「平民のくせに!」「お前らのような奴は、僕の言うことを聞いていればいいんだ!」などと暴言を吐いた。
カッとなったリーダー格の男は、ゲッティを力任せに殴った。ふっ飛ばされたゲッティは「痛い、痛い」と泣いて、監視員に助けを求めた。
しかし、相手にされなかった。どうせ、また嘘をついていると思われたからだ。
「大袈裟だな。本当は痛くなんかないんだろう」
「違います。……痛い。痛いよ。誰か……、助けて」
地面に倒れ、涙を流すゲッティの脳裏に浮かんだのは、ティファリーと過ごした幸せな時間だった。
(あの頃は幸せだった)
贅沢な暮らし。両親の愛情。ティファリーの優しい微笑みを思い出し、ゲッティは目を閉じた。
それから3時間後、ゲッティが目を覚ました時には、彼は医務室のベッドの上だった。
気を失った彼をいつまでも放置することができず、リーダー格の男がここまで運んできていたのだ。
(痛い……)
殴られた頬に手を当てたが、痛みを感じてすぐに手を離した。
誰かにこんなに強く殴られたことは初めてで、ゲッティは白い天井を見つめながら考える。
(どうしてこんなことになったんだ? ティファリーが許してくれていたら……いや、ノーリーが僕を惑わせなかったら……)
いつものように誰かのせいにしようとしたゲッティだったが、さすがに自分の非から目を逸らすことはできなかった。
(……ああ、そうか。僕が悪いのか。ティファリーを裏切ったのは、僕なんだ)
幸せな日々を手放したのは自分だと、やっとわかったゲッティは、硬いベッドの上で涙を流した。
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ゲッティが鉱山に送られたあとも、女性たちは鳩舎で働くことを望んだ。鳩たちはゲッティやノーリーを嫌っているだけで、他の世話係については悪感情を抱いていない。彼女たちに悪さをすることはないため、鳩の可愛さに虜になってしまったのだ。
だが、そうなると、世話をする人が長期間、多い状態になってしまう。そのため、鳩舎での仕事を嫌がっているノーリーを移動させることになった。
今の鳩舎での仕事はノーリーにとっては罰である。移動できると聞いて、彼女はとても喜んだ。
これで公爵邸に戻れると思ったのだ。しかし、そう上手くはいかなかった。
ノーリーが帰ってくるのであれば、ティファリーが、家から出ていくと言い出した。妹を溺愛している兄たちはそれを拒み、両親もティファリーが出ていくことはないと言った。
その結果、ゲッティが働くことになった鉱山の近くにある労働所に送られることとなった。
寝泊まりする場所は二階建ての木造住宅の一室で、一人部屋ではあるが、今までいた部屋の半分の広さもない。窓際にベッドと書き物机があり、外開きの扉を開いてすぐのところに木製のチェストが置かれているだけ。多くの人たちと共同生活をすることになり、ノーリーはそれだけでも苛立ちを感じていた。
ここは悔い改めなければならないことをした人物たちが集まり、己の過ちを認め懺悔して過ごす場所だ。時には鉱山で働く人たちに食事を配ったり、彼らの話し相手になることもある。
労働所の職員から施設での話を聞いたノーリーは、嫌だと拒否をした。
「妹の婚約者と浮気をしたくらいで、どうしてこんな目に遭わなければならないの!? 私は家に帰りたいのよ!」
「ご両親は一向に反省の色のないあなたに、悪いことをしたという自覚を持っていただきたいようです。あなたが罪を自覚しない限り、ここから出ることはできません」
きっぱりと拒否されたノーリーは最終手段として、祖母に手紙を書いた。
そして、その手紙を読んだ祖母――エレインは、ノーリーを公爵邸に戻すこと。そして、ティファリーには改めてケインとの仲を取り持ってもらおうと、公爵邸を訪ねてきたのだった。




