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嘘ばかりの婚約者様、どうぞ愛する人とお幸せに  作者: 風見ゆうみ


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4  堪忍袋の緒が切れた令嬢

 ポッポとポポーポは、水を飲み、餌を食べて満足したのか、用意していた赤と青の薄いクッションに座って眠り始めた。


「帰巣本能はすごいみたいですが、それ以外はあまり賢くないのですかね」


 安心しきった様子で眠っている二羽を見つめ、ティファリーは呟いた。

 一般的には鳩舎で眠るものだが、二羽はティファリーの部屋で眠ってから帰っていく。


(怪我していた時に、この部屋で眠っていましたから警戒心が薄れているのでしょうか。……それにしても、ポッポたちは公爵邸の誰と連絡を取っているのか知りたいものです)


 ティファリーが傷ついた二羽を見つけた時は、足に手紙は付いていなかった。


 届け終えて帰ろうとしたところで襲われたのかもしれないと、手当てをしている時に考えた。


(あの時はお姉様二人は嫁にいっていたので、受取人から除外できます。ですが、お父様もお兄様たちも何も言いませんでした。きっと秘密のやり取りをしているのでしょうけれど、何のやり取りをしているのか、とても気になります)


 気にはなるが、父たちが知らないと言うのなら、それ以上問い詰めても無駄だと思った。


「さあ、まずは侯爵にお手紙を書かなくては」


 ゲッティとの婚約破棄について、昨日のうちに両親に相談してみたが、二人はティファリーの話を信じなかった。


『ノーリーはティファリーのことを本当に大事に思っているのに、そんなことを言ってはいけないよ』

『そうよ。それにねティファリー、ノーリーは言いがかりで侯爵に離縁された可哀想な子なの。これ以上貶めるようなことは言わないでちょうだい』


 両親の自分への愛情を疑っているわけではない。しかし、どうして姉の言うことばかり信じるのか。


 何度問いかけても、納得のいく答えはもらえない。


(お父様もお母様も、私よりもノーリーお姉様のことが好きだからでしょうか)


 そう思うと、筆の進みが遅くなる。


「マイナス思考になってはいけません! ノーリーお姉様の本性を見抜いた方もいるのですから、わかってくれる人が必ずいるはずです!」


 ティファリーにとって、侯爵は一つの希望でもあった。

 手紙を書き終えたティファリーは、ノーリーに知られず、侯爵に届けるようにフットマンにお願いした。


 そして、手紙の返事を待っている間に、両親と婚約破棄についての話をすることにした。


 ノーリーのことについて話すつもりはなかった。


 ティファリーの目的は、ゲッティとの婚約破棄と婚約祝いとして、彼に与えた宝石店を公爵家に返してもらうことだった。


 ゲッティに宝石店の権利書を渡す時、ティファリーの父は契約を交わしていた。


 それは、ティファリーとの婚約が解消もしくは破棄された場合は、宝石店の権利書を公爵家に返すことだった。


(あの時は、お父様らしくないことをするものだと思いましたが、こんな日が来ることを予想していたとか?)


 首を傾げたティファリーだったが、扉がノックされて思考が遮られた。


「朝食のご準備ができました」と、中に入ってきたメイドに声をかけられる。


 ポッポたちは一度眠ると、かなり長い時間眠る。夜は木陰に隠れて警戒しており、あまり眠れていないのかと思い、ティファリーは静かに部屋を出た。


 すると、浮かない顔をしているメイドの背後に、ノーリーが立っていることに気がついた。


 赤色の胸元が大きく開いたドレスの隙間から見える白い肌に、いくつもの赤い痕が見える。


 胸元が開いていないドレスなら見えない場所にあり、今のように大きく開いているものでも、ショールで隠せる位置に付けられたものだ。

 しかし、わざとティファリーに見せつけるため、ノーリーは近くにいたメイドにショールを持たせていた。


「あらあら、昨日はたくさん泣いたの? 可哀想に」


(もう我慢の限界です)


 嘲笑するノーリーを、ティファリーは睨みつけながら口を開く。


「もうノーリーお姉様の思い通りにはさせません」

「な、何を言っているのよ!?」


(今まではくだらないと思って、気にしないようにしてきましたが、それももう終わりです)


「私は絶対に幸せになりますので!」


 そう宣言し、驚いた顔をしているノーリーの横を通り過ぎ、ティファリーはダイニングルームへと向かった。




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