24 笑われる姉
(何が起こったか気になりますが、私の存在を気づかれると面倒ですね)
そう思ったティファリーは、ケインと共にノーリーの視界に入らない場所で様子を見ることにした。
低木に囲まれているため、その隙間からこっそり覗いてみる。
鳩舎は王城から歩いて5分もかからない場所にあり、高床式の木造の小屋だった。窓が多くあり、中からも外からも鳩の様子がよく見えるような間取りになっている。
30羽ほどの鳩が飼育されており、鳩同士はとても仲がいい。
今日はよく晴れており、時刻は昼過ぎのため鳩舎の中は明かりをつけずとも見通すことができた。
一羽ずつが休めるように、ボックス型の木の棚があり、ゆったりしたスペースがある。
大きな窓からノーリーの姿も見え、鳩たちと箒で格闘している姿が確認できた。
「退きなさいって言ってるでしょう!」
「フェフェフェフェ」
鳩たちがノーリーを見つめ、まるで人間が笑っているかのような鳴き声を上げていた。
「どうして笑うのよ! 失礼じゃないの!」
「フェフェフェフェフェ」
ノーリーが叫ぶ度に鳴く鳩たちが増えていく。馬鹿にされている気がして、ノーリーは怒りが抑えられない。
「あんたたち! いい加減にしなさいよ! 私がケイン殿下の妻になったら、あなたたちなんて焼き鳥にしてやるんだから!」
「フェフェフェフェフェ」
「笑うなって言っているでしょう! というか、どこからそんな声を出しているの! 普段はホッホローしか言わないくせに!」
ノーリーが怒れば怒るほど、鳩たちは「フェフェフェフェ」と鳴く。
「あれは笑っているんじゃなくて興奮している時の鳴き声なんですけど、本当に笑っているように聞こえますね」
苦笑して言ったティファリーに、ケインは呆れた顔でノーリーを見つめながら頷く。
「ギンバトたちは賢いからな。こう鳴いたほうが彼女が怒るとわかっているんじゃないだろうか」
「もしお姉様が仲間を攻撃したら、きっと一斉に襲いかかるのでしょうね」
「彼女のことを元々敵だと認識しているようだから、容赦しないだろう」
鳩に遊ばれているノーリーを見つめ、ティファリーは思う。
(いじめなんてくだらないことをする人ですから、そう賢くはないと思っていました。でも、さすがにここまでとは思っていませんでしたね)
ため息が零れたティファリーにケインが眉根を寄せて尋ねる。
「それにしても、彼女はどうして俺と結婚できると思っているんだろうか」
「うう。そうですね。おそらく、何歳になっても夢を見ていたいんだと思います」
「夢を見ることは悪いことではないが、現実を見てほしい」
呆れた顔のケインを見て、ティファリーはつい笑いそうになったが何とか堪えた。
(ノーリーお姉様はしばらくの間はこのまま放置でいいでしょう。やはり、ゲッティを片付けなければなりませんね)
ティファリーが気合を入れていると、ケインが彼女に尋ねた。
「婚約者の件はどうするつもりだ?」
「このままですと被害者が増えていく一方ですので、潰しにかかろうと思います」
両手に拳を作って微笑むと「そうか。応援する。俺にできることなら何でもするから言ってくれ」と言って、ケインも微笑んだ。
社交場では彼が微笑む姿を見たことは一度もなく、笑い方を忘れたのではとまで陰で噂されていた。
ポッポたちを本当に大事にしているからこそ、助けた自分に心を許してくれているのかもしれない。
当たり前のことをしただけだったが、縁をつないでくれたポッポたちに、ティファリーは感謝した。




