14 第二王子の目的 ②
前々から、ティファリーの次兄――ラシードから、彼女のことは耳にたこができるくらい話を聞いていた。
怪我をしたポッポたちをティファリーが看病したと聞き、ケインは、いつか彼女に恩を返さなければならないと思っていた。
ティファリーがゲッティとの婚約の破棄に難航していると知ったケインは、まずはティファリーの言い分がどんなものか調べた。
発端はゲッティとノーリーの浮気現場を見たからということだったが、イトメニア公爵家やパス伯爵家はそれを否定していると知った。
改めてケインが自分の部下に調べさせたところ、ノーリーと逢引していたことが報告された。
なぜ、イトメニア公爵家は、ノーリーの関与を否定するのか。理由が分からず、ケインは王城に出入りしているソラードに理由を尋ねた。
『姉はそんなことをする人じゃない』
ソラードは自信満々に答え、ティファリーが誤解しているだけだと苦笑していた。
公爵家の名を傷つけたくないから、そんな嘘をつくのかと考えたが、ケインは彼らがそんな人物ではないことも知っている。
なら、どうしてなのか。
そう考えている時に、ケインのもとにウノユ侯爵から連絡があった。
『殿下がティファリー嬢の件を調べているとお聞きしました。ぜひ、彼女の力になってもらえませんか』
興味を持ったケインは彼と二人きりで話し、ノーリーの本性を知った。
ノーリーは侯爵家に嫁いだあとも、自分よりもちやほやされる人物を嫌っていた。
使用人に愛されている、美しくて優しい義妹に陰で嫌がらせを始める。義妹はすぐに飽きるだろうと軽く流していたが、ノーリーは一向に止める気配を見せない。
堪忍袋の緒が切れた義妹は兄に相談し、真実が発覚した。
『ノーリーは公爵家の使用人を脅し、自分にとって都合の悪い事実をもみ消しているようです。イトメニア公爵の側近も彼女の言いなりです』
妹以外の家族の前では、ノーリーは淑女を演じていた。そのことに、侯爵も薄々気がついていたため、子作りに励むことはなかった。
話を聞き終えたティファリーは、ショックを受けている父たちを見て、眉尻を下げた。
(ノーリーお姉様はお父様たちの前ではか弱い女性を演じ続けてきました。騙されていたと知ってショックを受けるのは仕方のないことですね)
ティファリーは父たちを責めるつもりはなかった。ただ、気づいてくれればそれで良かった。
「ティファリー、本当にすまなかった」
兄二人を挟んで座っている父に謝られ、ティファリーは慌てる。
(ケイン殿下から話を聞いたというだけで、すんなり信じてもらえるのも、何だか悲しい話ではありますが、わかってもらえないよりかは良いですよね)
「あの、お気になさらないでください。わかっていただけただけで十分です」
兄たちにも何度も謝られたティファリーは、笑顔で言った。
「ノーリー氏をどうするかは公爵に任せる。問題はティファリー嬢の婚約の破棄の件だ。ティファリー嬢は何か打つ手を考えているのか?」
「……上手くいくかは分かりませんが、考えていることはあります」
誰かに話をするのであれば、成功すると確信を持ってからにするつもりだった。しかし、ケインの無言の圧力に負けて話し始める。
「婚約の破棄について、ゲッティは私と争うつもりのようですが、裁判をするにはお金がかかります。彼が裁判費用を捻出できないように、伯爵家の財産を削るつもりです」
ヒイトイ王国での裁判費用は前払いである。プロの弁護人を雇うことができなければ、よっぽどのことでない限り負ける。
勝ちは目に見えているが、ティファリーはできれば長引かせたくなかった。
裁判を起こそうとしているのは向こうのため、訴訟費用を支払うのはゲッティたちである。
金遣いの荒い彼らは、婚約祝いでもらった宝石店の利益で遊び呆けていた。しかし、その収入源がなくなってしまったため、彼らは裁判費用を捻出しようと新たに宝石店を立ち上げ、ティファリーに譲られた店に対抗しようとしていた。
「従業員の生活もかかっていますから、負けるつもりはありません」
まずは受けて立ち、マイナスの状態で商売を始める彼らを経済的に叩く計画を、ティファリーはケインたちに話した。




