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風呂で死にかけると、同じ異世界に呼ばれるんだが〜未完成の風呂を何度も作ってる気がする〜  作者: Studio No.13


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33/36

第33話「残る」

 異世界。

 湿った空気。

 石を積む音。

 水が流れる音。

 昨日と変わらない風呂。

 そう思った。

 でも。

 違う。

 静かすぎる。

 誰も話していない。

 俺が来たことに気付くと、村人達は少しだけ視線を向けて、また作業へ戻った。

「遅い」

 フードが言う。

「悪い」

 反射で返す。

 自分でも驚くくらい自然だった。

 木材を持ち上げる。

 石を運ぶ。

 考えない。

 何も。

 昨日のことも。

 約束のことも。

 全部。

 忘れる。

 そのつもりだった。

「そこ」

 声が飛ぶ。

「右だ」

「ああ」

 直す。

 違和感があった。

 言われる前から。

 そうした方がいいと分かっていた。

「……」

 まただ。

 体だけが覚えている。

「おい」

 横から村人が声を掛けてきた。

「昨日言ってた場所だ」

 振り向く。

 昨日。

 広げた方がいいと言った場所。

「どうだ?」

 確かに。

 昨日より広くなっていた。

「ありがとう」

 思わず口にする。

 村人は少し笑って。

「礼ならいらん」

 そう言って去っていく。

「……」

 自然と息を吐いていた。

「っ……」

 胸が痛む。

 また。

 あの感覚。

 約束。

 思い出すな。

 考えるな。

 石を置く。

 木を運ぶ。

 水を見る。

 作業だけ見る。

「避けても」

 一瞬、

 そう聞こえた。

 振り向く。

 誰もいない。

 村人達は働いている。

 フードも動いている。

「……気のせいか」

 そう思った瞬間。

 ぴちゃん。

 水が鳴る。

「避けても」

 今度ははっきり聞こえた。

 足が止まる。

 水面。

 誰もいない。

 だが。

 揺れている。

「残る」

 ぞわり。

 背中が冷えた。

「どうした」

 フードの声。

「……いや」

 目を逸らす。

「何でもない」

 嘘だった。

 何でもなくない。

 避けたはずだ。

 考えないようにした。

 なのに。

 残っている。

「……」

 作業を再開する。

 手は動く。

 だが。

 耳だけが。

 水を探していた。

読んでいただきありがとうございます。

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