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風呂で死にかけると、同じ異世界に呼ばれるんだが〜未完成の風呂を何度も作ってる気がする〜  作者: Studio No.13


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第24話「忘れた場所」

 巨大な目だった。

「……っ」

 喉が鳴る。

 黒い穴の奥。

 暗闇の中。

 それだけが見えている。

 瞬きをしない。

 ただ。

 じっとこちらを見ていた。

 大きい。

 距離感がおかしい。

 人間じゃない。

 なのに。

 どこか見覚えがあった。

「見るな!!」

 男が怒鳴る。

 反射的に目を逸らす。

 だが。

 遅かった。

 視界が揺れる。

 ぐらり。

 足元が消える。

「っ!」

 屋上。

 夜風。

 給水タンク。

 全部が遠ざかる。

 代わりに。

 水音が響く。

 ぴちゃん。

 ぴちゃん。

 ぴちゃん。

 暗い。

 寒い。

 そして。

 静かだった。

「……ここ」

 知らない場所。

 いや。

 違う。

 知っている。

 思い出せないだけだ。

 足元を見る。

 黒い水。

 浅い。

 だが。

 どこまでも続いている。

 天井はない。

 壁もない。

 ただ。

 暗闇だけが広がっていた。

「……は?」

 声が震える。

 前方。

 何かが浮いていた。

 写真。

 古い写真だった。

 思わず拾う。

 そこには。

 俺がいた。

 小学生くらい。

 知らない公園。

 知らない友達。

 知らない景色。

「……誰だ」

 見覚えがない。

 なのに。

 俺だった。

 裏返す。

 何も書かれていない。

 その瞬間。

 写真が溶けはじめる。

 黒い水になる。

「えっ!?」

 思わず落とす。

 ちゃぷん。

 波紋が広がる。

 すると。

 周囲に次々と浮かび上がった。

 写真。

 ノート。

 鍵。

 スマホ。

 折れた傘。

 ゲーム機。

 見覚えのある物。

 ない物。

 大量。

 無数。

 全部。

 水面を漂っていた。

「なんだよ……これ」

『忘れたものだ』

 声。

 振り向く。

 フードだった。

 一人。

 水の上に立っている。

「……お前」

『捨てたものだ』

「意味が分からねぇ」

『覚えていないだろう』

 赤い目。

 静かな声。

『だからここにある』

 ぞわり。

 嫌な予感。

 頭の奥がざわつく。

「……ここは」

 フードは答える。

『底じゃない』

 水音。

『入口だ』

 その瞬間。

 遠くで。

 誰かが泣いた。

 子供の声。

「……っ」

 振り向く。

 暗闇。

 誰もいない。

 だが。

 また聞こえる。

 泣き声。

 近い。

 どこかで聞いたことがある。

 懐かしい。

 なのに。

 思い出せない。

『行くな』

 フードが言う。

「は?」

『まだ早い』

 その言葉。

 どこかで聞いた。

 順番。

 見るな。

 聞くな。

 近づくな。

 全部同じだ。

「なんでだよ」

『思い出すからだ』

 静かな返答。

「思い出したらどうなる」

 沈黙。

 フードは少しだけ考えて。

 そして。

『戻れなくなる』

 空気が凍る。

「……」

『俺達みたいに』

 赤い目が揺れた。

 その瞬間。

 背後から。

 誰かに肩を掴まれた。

「っ!!」

 振り向く。

 子供だった。

 びしょ濡れ。

 泣いている。

 顔は見えない。

 だが。

 分かった。

 直感だった。

 これは。

 俺だ。

 そして子供は。

 震える声で言った。

「なんで忘れたの?」

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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