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風呂で死にかけると、同じ異世界に呼ばれるんだが〜未完成の風呂を何度も作ってる気がする〜  作者: Studio No.13


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第21話「流れ込む」

『来い』

 その声は。

 全部。

 俺だった。

「っ……!」

 頭痛。

 視界が揺れる。

 無数のフード。

 赤い目。

 全員がこっちを見ている。

『来い』

『こっちだ』

『もうすぐだ』

『間に合う』

 声が重なる。

 頭の奥に直接流れ込んでくる。

「やめろ……!」

 耳を塞ぐ。

 意味がない。

 聞こえる。

 止まらない。

「下がれ!」

 男が叫ぶ。

 だが。

 足が動かない。

 フード達の向こう。

 給水タンクの裏。

 暗闇。

 そこに。

 何かが見えた。

 穴だった。

「……は?」

 屋上のはずだった。

 なのに。

 暗闇の奥に。

 丸い穴。

 黒い水が渦を巻いている。

 ありえない。

 距離感もおかしい。

 大きさも分からない。

 ただ。

 見ているだけで。

 吸い込まれそうになる。

『見ろ』

 声。

『思い出せ』

『お前もいた』

 頭が痛い。

 知らない景色が流れ込む。

 風呂。

 石。

 湯気。

 完成した浴槽。

 そして。

 崩壊。

「っ……!」

 喉が鳴る。

 見たことがない。

 なのに。

 知っている。

 次。

 別の景色。

 木造の浴場。

 天井が落ちる。

 誰かが叫ぶ。

 黒い水。

 排水口。

 赤い目。

 終わり。

「……ぁ」

 また。

 次。

 また。

 次。

 また。

 違う。

 全部違う。

 なのに。

 作っているのは全部同じ風呂だった。

「やめろ!!」

 男が俺を突き飛ばす。

 視界が揺れる。

 その瞬間。

 全部消えた。

 屋上。

 夜風。

 給水タンク。

 現実に戻る。

「……はぁ……っ」

 呼吸が荒い。

 男が胸ぐらを掴む。

「何見た」

「……」

「何見た!」

 初めてだった。

 こいつがこんな声を出すの。

「……風呂」

 言葉を絞り出す。

「いっぱい」

「……」

「全部失敗してた」

 男が固まる。

 数秒。

 沈黙。

 そして。

「見えたのか」

 小さく呟いた。

「何が」

 男は答えない。

 代わりに。

 無数のフードを見る。

 赤い目。

 誰も動かない。

 ただ。

 見ている。

 待っている。

 そんな感じだった。

「え?」

 俺は男を見る。

「こいつら」

 言葉が続かない。

「……何なんだ」

「……」

「なんで俺の声なんだ」

「……」

「何番目って何だよ」

 男は俯く。

 しばらく。

 本当にしばらく黙って。

 そして。

 諦めたみたいに口を開いた。

「順番を外した奴らだ」

 風が吹く。

 ぴちゃん。

 どこかで水が落ちる。

「外した?」

「ああ」

 男はフード達を見る。

「お前みたいにな」

 意味が分からない。

「俺は何も——」

「もう外れてる」

 即答だった。

「だから見える」

 背筋が冷える。

「普通は見えねぇんだよ」

 赤い目。

 同じ声。

 大量のフード。

「……じゃあ」

 嫌な予感。

 頭の奥がざわつく。

「こいつらは」

 男は答えない。

 だが。

 答えは顔に出ていた。

 そして。

 フード達の一人が。

 ゆっくり口を開く。

「違う」

 俺の声。

 だが。

 今までと少し違う。

「俺たちは外れたんじゃない」

 赤い目が揺れる。

「辿り着いたんだ」

 その瞬間。

 給水タンクの裏。

 黒い穴の奥から。

 大量の水音が響いた。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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