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風呂で死にかけると、同じ異世界に呼ばれるんだが〜未完成の風呂を何度も作ってる気がする〜  作者: Studio No.13


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第18話「上にいるもの」

 ぴちゃん。

 屋上扉の向こう。

 確かに、水音がした。

「……っ」

 喉が鳴る。

 男が俺を見る。

「どうした」

「……水音が」

「は?」

 びちゃ。

 下の階段。

 あの足音が、まだ近づいてくる。

 逃げ場がない。

 なのに。

 スマホ画面。

『開けるな』

 その文字だけが、妙に鮮明だった。

「おい!」

 男が苛立った声を出す。

「何見てんだ!」

「……通知」

「は?」

『上は近い』

 その一文。

 頭の奥が、嫌にざわつく。

 近い。

 何が。

 底?

 違う。

 もっと嫌な何か。

 ぴちゃん。

 また。

 今度は近かった。

 扉の、すぐ向こう。

「……誰かいる」

 男の顔色が変わる。

「開けんな」

 即答だった。

「でも下は——」

「上の方がヤバい」

 びちゃ。

 びちゃ。

 階段の下。

 黒い影が、確実に上がってくる。

 逃げる場所がない。

「……どうすんだよ」

「黙れ」

 男が低く言う。

 呼吸が荒い。

 焦っている。

 初めてだった。

 こいつがここまで余裕を失ってるの。

「……チッ」

 男は周囲を見る。

 狭い踊り場。

 逃げ道はない。

 その時。

 ガタン。

 屋上扉が、少しだけ揺れた。

「ひっ」

 二人同時に固まる。

 ……内側から。

 押された。

 ぎぃ。

 古い金属音。

 扉が、ほんの少し開く。

 暗い隙間。

 そこから。

 細く、水が流れ落ちてきた。

「……は?」

 透明じゃない。

 黒い。

 どろりとした水。

 扉の下から、

 黒い水がゆっくり垂れてくる。

 ぴちゃん。

 ぴちゃん。

 その奥。

 誰かいる。

 見えない。

 でも。

 “立っている”。

「下がれ」

 男が小さく言う。

「見るな」

 その瞬間。

 隙間の奥で。

 赤い目が光った。

「っ!!」

 反射的に息を呑む。

 次の瞬間。

 ガン!!

 扉が外側から叩かれた。

「うおっ!?」

 建物全体が震える。

 もう一発。

 ガン!!

 扉が歪む。

「クソッ……!」

 男が後ずさる。

 下。

 びちゃ。

 びちゃ。

 下から来る。

 上にもいる。

 挟まれてる。

 意味が分からない。

「なんなんだよこれ……!」

「静かにしろ!!」

 怒鳴った瞬間。

 下の足音が止まった。

「……」

 沈黙。

 ぴちゃん。

 水音だけ。

 嫌な静けさ。

 そして。

 階段の下から。

『——いた』

 声。

 頭の中じゃない。

 今度は。

 直接、聞こえた。

「っ……!」

 男の顔から血の気が引く。

「……嘘だろ」

 びちゃ。

 一段。

 びちゃ。

 また一段。

 ゆっくり。

 上がってくる。

『見つけた』

 ぞわり、と鳥肌。

 声が違う。

 さっきの“来い”とは違う。

 もっと近い。

 もっと濁ってる。

 まるで。

 水の中から喋ってるみたいな声。

「おい」

 男が震えた声を出す。

「絶対、返事すんな」

「……」

「名前も言うな」

 意味が分からない。

 なのに。

 本能が理解していた。

 これは。

 返したら駄目なやつだ。

 びちゃ。

 びちゃ。

 ゆっくり。

 階段を上がる音。

 見えない。

 なのに。

 “いる”のが分かる。

 そして。

『お前』

 声が止まる。

 すぐ下。

『何番目だ?』

 空気が凍った。

「……は?」

 番号。

 順番。

 またそれだ。

 男が歯を食いしばる。

「答えるな」

 でも。

 頭の奥で。

 別の声が響く。

『お前は、もう近い』

 あのフードの声。

 赤い目。

『思い出せ』

「っ……!」

 頭痛。

 視界が滲む。

 一瞬。

 見えた。

 暗い空間。

 大量の水。

 並んだ影。

 全部。

 フード。

 全部。

 こっちを見ている。

 その中の一人が。

 ゆっくり。

 フードを外した。

「——ぁ」

 俺だった。

 次の瞬間。

 ガン!!!

 屋上扉が吹き飛んだ。

読んでいただきありがとうございます。

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