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風呂で死にかけると、同じ異世界に呼ばれるんだが〜未完成の風呂を何度も作ってる気がする〜  作者: Studio No.13


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第17話「外れた順番」

「“順番”の外にいる」

 風が吹く。

 ゴミ袋が揺れる。

 黒い水は、

 まだ排水口の周りで滲んでいた。

「……なんだよ、それ」

 呼吸が乱れる。

 男は少し黙って。

「本来」

 低い声。

「順番ってのは、段階なんだよ」

「段階?」

「近づき方」

 意味が分からない。

「普通はもっと遅い」

 男は黒い水を見る。

「夢を見る」

「……」

「水音が残る」

「……」

「鏡がおかしくなる」

「……」

「そこから、少しずつ向こう側に寄る」

 背筋が冷える。

「でもお前」

 男の視線が俺に向く。

「飛ばしすぎてる」

「……は?」

「普通、声なんか聞こえねぇ」

 ぞわり、と寒気。

「……」

「フードの顔も見えねぇ」

「……」

「なのにお前」

 男の顔が歪む。

「もう“会話”してる」

 言葉が出ない。

 確かに。

 さっき。

 俺は返事をした。

 無意識に。

『来い』

 あの声。

 頭の奥に残っている。

「……なんなんだよ、あれ」

「知らねぇよ」

 男は即答する。

「でも」

 少し間が空く。

「多分、“前の奴”だ」

「……前?」

「失敗した奴」

 空気が冷える。

「順番壊して」

「底に近づきすぎて」

「戻れなくなった奴」

 思い出す。

 あのフード。

 濡れた顔。

 赤い目。

 そして。

 ——俺だ。

「……っ」

 吐き気が込み上げる。

「おい」

 男の声。

「まだ思い出そうとするな」

「……」

「引っ張られる」

 ぴちゃん。

 また水音。

 今度は近い。

 すぐ横。

「ん!」

 反射的に振り向く。

 ゴミ捨て場の奥。

 積まれた黒いゴミ袋。

 その隙間。

 何かいた。

「……は?」

 濡れてる。

 黒い。

 人影。

 顔は見えない。

 でも。

 目だけ。

 赤かった。

「下がれ!!」

 男が怒鳴る。

 同時に。

 人影が動いた。

 ぐちゃ。

 濡れた音。

 一瞬で距離が詰まる。

「うわっ!?」

 肩を引かれる。

 転びそうになる。

 その瞬間。

 黒い影が、

 さっきまで俺のいた場所を通った。

 速い。

 ありえない。

「走れ!」

 男が叫ぶ。

「は!?」

「いいから!!」

 今度は本気だった。

 俺たちは一気に走り出す。

 夜のアパート。

 階段。

 廊下。

 息が苦しい。

 後ろ。

 びちゃ。

 びちゃ。

 濡れた足音。

「っ……!」

 追ってきてる。

「なんなんだよ、あれ!」

「見るな!!」

 男が叫ぶ。

「目ぇ合わせんな!!」

 その瞬間。

 反射的に後ろを見た。

「っ」

 いた。

 階段の下。

 黒い影。

 フード。

 赤い目。

 じっと、

 こっちを見ている。

 そして。

 ゆっくり。

 腕を上げた。

『——来い』

 頭の奥で声が響く。

「うっ……!」

 視界が揺れる。

 足が止まりそうになる。

 その瞬間。

 男が俺の胸ぐらを掴んだ。

「聞くな!!」

 怒鳴り声。

 同時に。

 ピシィン !!

 壁の消火器ケースを殴る。

 甲高い音。

 意識が戻る。

「っ……はぁ、はぁ……!」

「走れ!」

 また走る。

 階段を駆け上がる。

 二階。

 三階。

 屋上扉。

 男が蹴る。

 ガンッ!!

「開け!!」

 もう一発。

 鈍い音。

 その後ろで。

 びちゃ。

 びちゃ。

 ゆっくり。

 でも確実に、

 近づいてくる。

「っ……!」

 男が舌打ちする。

「クソッ……!」

 その時。

 スマホが震えた。

 また通知。

 さっきまでと違う番号。

『開けるな』

 息が止まる。

「……は?」

 目の前。

 屋上扉。

 その向こう。

 逃げ場。

 なのに。

『上は近い』

 空気が凍る。

 男が振り返る。

「どうした!」

 俺は答えられない。

 ただ。

 屋上扉の向こう側から。

 ぴちゃん。

 水音が聞こえた。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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