表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風呂で死にかけると、同じ異世界に呼ばれるんだが〜未完成の風呂を何度も作ってる気がする〜  作者: Studio No.13


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/36

第16話「底の声」

 黒い水が、

 靴の先に触れていた。

「うわぁ」

 反射的に飛び退く。

 でも。

 遅れて。

 ぞわ、と寒気が走った。

 冷たい。

 ただの水じゃない。

 触れた瞬間、

 頭の奥に何か入ってくる感じがした。

「下がれ!」

 男が俺の腕を掴む。

 乱暴に引く。

「うっ!」

 数歩下がる。

 黒い水は、

 そこで止まっていた。

 まるで。

 境界線みたいに。

「……なんだよ、これ」

 呼吸が乱れる。

 男は答えない。

 排水口を睨んでいる。

 顔色が悪い。

「おい」

 怒ったような声。

「お前、触れたか」

「……少し」

「最悪だ」

 即答だった。

「だから何なんだよ……!」

「静かにしろ」

「説明しろって言ってんだろ!」

 声が響く。

 その瞬間。

 ぴちゃん。

 排水口の奥で、

 また水音が鳴った。

「……っ」

 男の顔が強張る。

「だから黙れって……」

 低い。

 本気で焦ってる声。

 その時。

 頭の奥で。

『——聞こえるか』

「っ!?」

 耳じゃない。

 内側。

 直接響く。

 男が怪訝そうにこっちを見る。

「……どうした」

『近い』

 また声。

 低い。

 濡れてるみたいな声。

「……おい」

 男が一歩近づく。

「顔色ヤバいぞ」

 聞こえてない。

 こいつには。

『お前はもう』

 頭が痛い。

 ズキズキする。

 熱い。

 なのに寒い。

『底を見てる』

「……うるせぇ」

 気づけば口に出していた。

「は?」

 男が眉を寄せる。

「誰と喋ってる」

「っ……」

 呼吸が乱れる。

 排水口。

 黒い穴。

 そこから。

 ぴちゃん。

 ぴちゃん。

 ぴちゃん。

 水音。

 リズム。

 一定。

 まるで。

 声みたいに。

『来い』

「……だまれって」

 一瞬。

 景色が揺れる。

 暗い浴場。

 石。

 湯気。

 黒い水面。

 その向こう。

 何人も立っている。

 フード。

 動かない。

 ただ。

 こっちを見ている。

「うっ……!」

 頭を押さえる。

「おい!」

 男が肩を掴む。

「しっかりしろ!」

 その瞬間。

 視界の端。

 フードの一人が動いた。

 一歩。

 前へ出る。

 他の奴らより近い。

 そいつだけ。

 濡れていた。

「……っ」

 知ってる。

 あいつ。

 湯気の中で石を積んでた。

 ずっと。

 こっちを見てた。

『思い出せ』

「やめろ……」

『お前は』

 頭痛が強くなる。

 ガンガンする。

『ここへ来たことがある』

「……は?」

 息が止まる。

 その瞬間。

 フードが、

 ゆっくり顔へ手を伸ばした。

 外す。

 フード。

 その下。

「っ……!」

 また俺。

 でも違う。

 目が赤い。

 顔色が悪い。

 濡れてる。

 まるで。

 長く水に沈んでいたみたいに。

『失敗した』

 凍る。

『全部』

「……え」

『だから』

 そいつが口を開く。

『今度は間違えるな』

 直後。

 バチンッ!!

 視界が戻る。

「っ!?」

 膝をつく。

 荒い呼吸。

 ゴミ捨て場。

 夜風。

 男が目の前にいる。

「おい!」

 肩を掴まれる。

「今、何見た!?」

「……俺」

 掠れた声。

「また、俺だった……」

 男の表情が凍る。

「……マジかよ」

「なぁ」

 呼吸が苦しい。

「なんなんだよ、あれ……」

 男は答えない。

 代わりに。

 ゆっくり、

 排水口を見る。

 その顔。

 初めて。

 本気で怯えていた。

「……おい」

 小さい声。

「お前、多分」

 沈黙。

 風が吹く。

 そして。

「“順番”の外にいる」

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ