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風呂で死にかけると、同じ異世界に呼ばれるんだが〜未完成の風呂を何度も作ってる気がする〜  作者: Studio No.13


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第15話「見られた側」

「お前、何を見た!?」

 肩を強く掴まれる。

「っ……!」

 視界が揺れる。

 夜風。

 ゴミ捨て場。

 でも、

 頭の奥だけまだ熱かった。

 湯気。

 水音。

 石。

 黒い穴。

 フード。

 あの口元。

「……俺」

 掠れた声が漏れる。

「なにが?」

「……俺、だった」

 男の表情が固まる。

「……おい」

「フードの奴」

 呼吸が浅い。

「顔、見えた」

「見たのかよ……」

 男が小さく呟く。

 その声、

 少し震えていた。

「……なんで俺なんだよ」

「知らねぇよ」

 即答。

 でも、

 明らかに動揺している。

「普通、顔なんか見えねぇ」

「じゃあ何なんだよ、これ……!」

 声が荒れる。

 自分でも分かる。

 怖い。

 今までと違う。

 底を見た時より。

 もっと近い。

 もっと嫌な感じ。

「……落ち着け」

「無理だろ」

「黙って聞け」

 男の声が低くなる。

「“見られた側”は、そうなる」

「……見られた?」

「底に」

 沈黙。

 風が吹く。

 どこかで水が垂れる音。

 ぴちゃん。

「……あそこな」

 男は小さく続ける。

「見に行く場所じゃない」

「……」

「向こうから見返してくる」

 ぞわり、と背中が冷える。

 思い出す。

 あの感覚。

 底を覗いた瞬間。

 “目が合った”。

 そんな感じ。

「……お前も見たのか」

「……少しだけ」

 男は視線を逸らす。

「だから分かる」

「何が」

「近づいてる」

 嫌な沈黙。

「……何に」

 男は答えない。

 代わりに。

 俺の顔を見る。

 じっと。

「……なんだよ」

「お前」

 男の眉が寄る。

「目、赤くなってる」

「は?」

 反射的にスマホを見る。

 インカメ。

 暗い画面。

 そこに映る自分。

「……っ」

 本当に、

 少し赤い。

 充血とかじゃない。

 もっと妙な色。

 水に長時間潜った後みたいな。

「……なんだよ、これ」

「だから言ったろ」

 男の声が低い。

「壊れ始めるって」

「ふざけんな」

 即座に返す。

「俺まだ普通だろ」

「普通の奴は」

 男が小さく言う。

「風呂の音、追いかけねぇよ」

 言葉が止まる。

「……」

「さっきから何回も見てた」

「……は?」

「排水口」

 息が止まる。

 無意識だった。

 でも。

 確かに。

 さっきから、

 ずっと気になっていた。

 ゴミ捨て場の端。

 雨水用の排水口。

 黒い隙間。

 暗い穴。

 そこから。

 ぴちゃん。

 また水音。

「ん……」

 視線が吸われる。

 嫌なのに。

 見たくないのに。

 気になる。

「見るな」

 男の声。

 低い。

「近づくな」

 でも。

 水音が鳴る。

 ぴちゃん。

 ぴちゃん。

 ぴちゃん。

 近い。

 まるで。

 呼ばれてるみたいに。

 一歩。

 無意識に足が動く。

「おい!」

 肩を掴まれる。

「うっ!」

「行くなって!」

 強く引かれる。

 その瞬間。

 排水口の奥で。

 ぐちゃ。

 何かが動いた。

「っ!?」

 黒い。

 濡れてる。

 人の手みたいなものが、

 一瞬だけ見えた。

 次の瞬間。

 引っ込む。

「は……?」

 呼吸が止まる。

 男が舌打ちする。

「クソ……早ぇ」

「今の、何だよ……」

「見るな」

「だから何なんだよ!」

「まだ見つかりたくねぇんだよ!」

 男が初めて怒鳴った。

 空気が張り詰める。

 その瞬間。

 スマホが震えた。

『もう遅い』

 凍る。

『お前はもう見られてる』

 直後。

 ぴちゃん。

 すぐ後ろで、

 水音がした。

「……え」

 振り向く。

 誰もいない。

 でも。

 俺の足元。

 いつの間にか。

 濡れていた。

 黒い水が、

 靴の先に触れていた。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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