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風呂で死にかけると、同じ異世界に呼ばれるんだが〜未完成の風呂を何度も作ってる気がする〜  作者: Studio No.13


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第14話「前の俺」

「そのメッセージ、見せろ」

 男が一歩近づく。

 空気が変わっていた。

 さっきまでの軽さがない。

 妙に張っている。

「……なんで」

「いいから」

 低い声。

 俺は少し迷って。

 スマホを見せる。

『そいつは底へ行かせたがってる』

 男の視線が止まる。

「……は」

 乾いた笑い。

 でも目が笑ってない。

「マジかよ」

「なんなんだよ、これ」

「知らねぇ番号か?」

「さっきからずっと来てる」

「内容は」

「開けるな、とか。静かにしろ、とか」

 男の顔が少しずつ険しくなる。

「……お前、それ」

 言いかけて止まる。

「なんだよ」

「いや……」

 男は視線を逸らす。

 ゴミ捨て場の床。

 黒い水。

 まだ広がっている。

「普通、そこまで来ねぇ」

「は?」

「“向こう側”から干渉するの」

 背筋が冷える。

「向こう側……」

「しかも直接」

 男は小さく舌打ちする。

「最悪だな」

「だから何なんだよ、それ」

「知らねぇよ。俺だって全部知ってるわけじゃ——」

 その時。

 スマホがまた震えた。

 画面。

 通知。

『そいつを信じるな』

 空気が止まる。

「……」

 男も見ている。

 数秒。

 沈黙。

「……見せろ」

 今度はさっきより強い声。

 俺は反射的にスマホを引く。

「なんでそんな必死なんだよ」

「は?」

「お前こそ何なんだよ」

 口に出した瞬間。

 男の顔が歪んだ。

「……はぁ」

 深く息を吐く。

「だから経験者だって言ってんだろ」

「それだけじゃねぇだろ」

「……」

「なんでそんな詳しい」

 男は答えない。

 代わりに。

 黒い水を見る。

「……お前さ」

 小さい声。

「最近、変な夢見てないか」

「……は?」

「知らない風呂」

「うっ」

「同じ場所」

「……」

「何回も行く」

 息が止まる。

「……なんで」

「やっぱりか」

 男は目を閉じる。

 嫌そうに。

「最初は夢なんだよ」

「最初?」

「繰り返すと境界が薄くなる」

「だから意味——」

「鏡、見たろ」

 言葉が止まる。

「……」

「水面も」

「……」

「覗いた」

 心臓が跳ねる。

「……なんで知ってる」

 男は少し黙る。

 そして。

「俺もやったから」

 その言い方。

 妙だった。

 ただの経験談じゃない。

 もっと近い。

 そんな感じ。

「……」

 風が吹く。

 ゴミ袋が揺れる。

 その瞬間。

 視界の端。

 ゴミ捨て場の奥。

 黒い影が見えた。

「は!?」

 振り向く。

 誰もいない。

 でも。

 一瞬。

 フードみたいなものが見えた。

「……おい」

 男の声。

「どうした」

「いや……」

 言いかけて止まる。

 今の。

 見覚えがあった。

 湯気の向こう。

 暗い浴場。

 石を積む背中。

 フード。

「……」

 頭が痛い。

 ズキ、と。

 変なノイズみたいな感覚。

 その時。

 スマホがまた震えた。

『思い出すな』

 凍る。

「……は?」

 指先が冷える。

 なんで。

 今。

 それを。

「おい」

 男が怪訝そうに覗き込む。

「今度はなんて来た」

 画面を見せる。

 男の顔色が変わる。

「……なんだよ、これ」

「俺が聞いてる」

「いや待て……」

 男が初めて、

 本気で困惑した顔をする。

「そこまで明かすのはおかしい」

「だから何が」

「普通、“思い出させない”方向には——」

 言いかけて止まる。

 その瞬間。

 頭の奥で。

 声がした。

『見るな』

 ぞわっ、と鳥肌が立つ。

 耳じゃない。

 もっと内側。

「っ……!」

 膝が揺れる。

 視界が歪む。

 湯気。

 熱。

 暗い石造り。

 何人もの背中。

 積まれていく石。

 水音。

 その奥。

 黒い穴。

 底。

 そして。

 その前に立っている。

 フード。

 ゆっくり振り返る。

 見えた口元。

 その瞬間。

 呼吸が止まった。

 ——俺だ。

「え!?」

 景色が戻る。

 荒い呼吸。

 夜風。

 ゴミ捨て場。

「おい!」

 男が肩を掴む。

「お前、何を見た!?」

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

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