やさしい きつね
尾先ヶ 間蔵はオカッパ気味の横にはねたくせ毛がポイントの、27歳に見えるひたすらに明るいっ子。
絶望と引き換えに願いを叶える。または希望と引き換えに、物事を叶える。
それがどうなるかは祈る者は知らずに。
物事は紙一重で、明日はどうなるかは分からない。飢えるか富むかも。
マクラは大きな武家屋敷に幽閉された子供を見る。なんと時代錯誤な。
豪華絢爛なお召し物とは反対に堅固な檻に囲まれている。
「お姉さんが本当の座敷わらし?」
「そう見える? マクラちゃんが?」
「だってこの部屋、人が入れないようになってるから。座敷わらしなのかなって」
「この世には座敷わらしは――」
「きやんきやん。座敷わらしは居ないけどおキツネさまはいるよお」
横槍を入れられ、眉をひそめる。いつの間にか横っちょには見慣れた同期がいた。
悪野狗 嗤使。
子供に憑依してオモチャにする、悪趣味な輩だ。
「なぁーに、邪魔しに来たの?」
「いいや、魔法をかけに来たんだ。こんこん」
ウインクして彼女は手を差し伸べた。「ワラシちゃんはね。君みたいな子には優しいんだよ〜〜」
「座敷わらしさんたち、たくさんいるんだねっ」
軟禁されていた少女は目をキラキラと輝かせた……が、二人は顔を見合わせ、首を横に振る。
「私たちはね、霊験あらたかなおキツネさまのお使いなのよ」
座敷わらしと銘打って信者を集めていた怪しい拝み屋の富を反転させ、ワラシに後を任せた。
狂い出した信者の子供。我は拝み屋に封じられし天狐なり、と嘘八百を語らせ、信用を台無しにしたのだそうだ。
「キツネさんたち、いなくなっちゃうの? さみしいよ」
座敷廊から放たれた少女は悲しげにつぶやき、外の夜景を眺めている。
「君は自由になったの。ワラシとは違うよう」
「そうだよ。私たちにできなかった事をたくさんするんだよ」
「ありがとう! キツネさま!」
お辞儀をすると少女は手を降って走っていった。
「キツネさま、だって。嘘つき〜〜」
「しょうがないじゃん? でも間違いじゃないし、マクラちゃんは美麗之前さまの門下だからね!」
それに対して反論できないのか、ワラシは微妙な顔で黙り込んだ。




