こ どく
リヤン・アンシェヌマンは生前、とある時代、冤罪で処刑されたが……ひょんなことからスラッジという謎の高次元の存在に拾われてしまった。
捨てる神あれば拾う神あり、なんてことわざがあるが、勝手に掬われて困っている。ことわざとは意味合いが違うし、リヤンは並大抵の事でクヨクヨする性格ではない。
しかしアレは神ではない――とだけは確信している。
偽物の天使になってからは生前から頼りにしてきた金毛の猿たちと暮らしている。邪魔なヤツらは皆、言いなりの猿に似た生き物へ変えてきた。
成り果てた猿たちは自分には忠実に従う。だから一緒にいるのだ。
あと一人、生前からの弟子がいる。弟子はどうやらこちらを気にかけているらしく、逆らいもしない。
その憐憫の情を宿した目つきが嫌いではあるが。
「きー?」
「きやー??」
猿たちが首を傾げて何かを話し合っている。それを暇つぶしに眺めていると、弟子――今は秘書のスヴェトラナ・キラークイーンがやってきた。
「おはようございます」
「ねえ、どうしていつも霊安室で寝ているんだ? リヤンのようにベッドで寝ないのかい?」
「え……わたくしは、霊安室がお似合いなので」
歯切れの悪い返答で彼女は言う。
「自己肯定感が低いなあ。相変わらず」
「みな、わたくしを怖がってしまい場の空気を乱しますから……」
「そんな事ないと思うけど。そうだ。散歩に行かないか? リヤンも気分転換がしたいのでね」
市街地より外れにある廃墟化した巨大病院には荒れ果てた庭があった。現役時代はそこで患者がリハビリわしたり、看護師が休憩していたのだろう。
(生意気な人間どもが肝試しにやってきたら、一石二鳥だしね)
「ええ、ありがたきお言葉」
スヴェトラナがわずかに無表情を崩し、破顔した。まるで堅実な家臣の如し振る舞いに内心、苛つく。かつてはそうではなかったではないか。
それなのにいつの間にか、操り人形のようになってしまった。
(死脚にした覚えはない。なのに、リヤンの周りは皆こうなっていく。ムカつくなぁ)
「じゃあ、行こうか」
「はい」
「きゃああ〜〜」
猿たちと共に二人で外へ向かう。廊下には数人、配下たちがいてギョッとした顔をするなり早足で逃げていった。
個 毒。
蠱毒。
孤独。




