よざくらの ひみつ
桜の花びらがフンワリと風に舞う。
夜桜を見つつ宴会する時間帯ではなくなり、ボンボリも消灯した。
荒川水系の一級河川である2つの川が合流する、奇妙な土地の近場。そこは3月末になれば市内の桜の名所となる。
親水公園では冷たい風が桜の終わりを告げさせていた。
無意味名 パビャ子は気温が上がり活動的になり、グウスカとヤブの中で寝入っていた虫を食べつつ、月明かりだけの桜を仰ぐ。
桜は世間から儚い、美しいの代名詞と持て囃される。妖しさを纏うからか、根本には死体が埋まっているからだと変な噂もある。
だがパビャ子には死体の栄養素を吸って咲き乱れようと、関係のない事。
むしろ花が集まり、泡みたいで好きではなかった。
それは少数派の意見ではなかろうか? それすら彼女には関係なかった。
桜の花びらが風に煽られヒラヒラと舞い散り、切り揃えられた土手の草原を滑る。そうしてまた風に舞い上げられる。
明日にはしぼんでしまう。今だけの光景。
茶髪オンナは不意に花びらが空で形を作り上げ、人の形になった気がして、視線を向ける。
と。確かに人になって迫ってきている。まるで透明人間が花びらまみれになってしまったかのようだ。
「わあ、何ぃ〜〜??」
「う、うあ、あ゛」
桜の花びら人間は呻きをあげ、こちらへ一歩一歩近寄る。ビチャビチャと嫌な音もした。
「お、俺をみつけて、くれえ〜〜だ、ずげで」
それだけ言うと桜は散った。パビャ子は一連の出来事に固まっていたが、また虫を探し始めた。
よくある話なのかもしれないな、と考えを改めてみた。
桜の下には死体が埋まっているから。




