ごうをにつめて ぐつぐつと
のどかな昼間であった。クスの黒髪をブラシで梳かしていると、いきなりボロボロのドアが開け放たれた。今にも分解しそうなのに、乱雑に扱われ、金属部分が悲鳴を上げる。
「サツか?!」
ついに不法侵入がバレたか、と乎代子は終焉を悟るが――訪ねてきたのは警察官ではなく、見知らぬ貧相な男だった。
「お前らが俺たちを不幸にし続けてきたのか! 許さねえ!!」
開口一番にそんな事を言われ、苛ついてしまう。
「えぇ? 知りませんよ。ンなこた」
「知らないだと?! お前らがかけた呪いのせいで一家全滅だ! 母さんも父さんも、皆、惨い死に方で」
男性は痩せこけ、肌も土色をしている。不健康そうなのは一目瞭然で……呪いのせいかは、分からないが状態は良くないのだろう。
「そうだ。そこにいる死脚のせいで、だ」
その後ろからさらに珍妙不可思議な格好をした女性が現れた。
「死脚……クスの事? でもそれって、このアパートが廃墟化する前からの話じゃないの?」
「ならばお前らは見つけて養っているのか。呪いの根源を? とち狂っているな」
怒る男性と不思議な女。わけも分からず、乎代子は眉をひそめる。
「クスは私の大切な家族だし、多分ですけど、呪った人も死んでるんじゃないですか?」
「クッ……なんて話だ……なんで、俺たちが」
「だから知りませんよ。呪われる原因があったんじゃないですか? あなた側にも」
「このっ! ――グア!! うっ、ぎゃ」
突如、息をつまらせると男性は地面に伏して動かなくなってしまう。それを前に二人は黙り込んだ。
「……呪いが成就してしまったか。はあ、働き損だったな……はあ」
「えーっと、状況を説明してもらえませんかね」
彼女――拝み屋によれば、男性の一族はある代を境に良くない出来事が立て続けに起き始めたという。もとより裕福な豪商であら、評判もよろしくない一族ではあったが、あまりの悲惨な不幸により徐々に没落していったのだそうだ。
そうして藁をも掴む思いで拝み屋へ依頼し、ここにたどり着いた、と。
「ふう。その呪具はあまりにも強力だ。私にはどうにもできない」
「なら良かった。クスは、私の大切な妹ですから」
「おねえ」
「……。そう。私を導いた犬の霊も、きっと結末を知っていたのだろう。……では失礼する」
拝み屋は案外サッパリした性分らしい。
「あの、貴方は至愚をご存知ですか」
「いいや。知らないね。この世界にもう正当な魔術を使える現代人はいないから」
それだけ言うと、彼女は廃墟化したアパートを去っていく。クスは首を傾げているが、優しく撫でるしかできなかった。
(なら……私たちみたいな呪具になる人はいない。良かったのかもしれない)
書いていたら新しいキャラクターができてしまい、私もどうしていいやら分かりません。




