おそろい あくせさり まじない あくせさり
洞太 乎代子は至愚が現れないのを少しだけ物足りないと感じていた。
もう二度とあの日々は戻らないのか、と。
クスの帯を整えつつ、髪を三つ編みにセットしてあげる。彼女は嬉しそうに微笑み、こちらも自然と破顔した。
「クス。今夜はどこに散歩へ行こうか」
「おねえ」
「a」
「パーラム先輩〜〜、久しぶりでーす。何か不便はありませんかー??」
この間、壊れそうになったドアをまたしても勢い良く開け放つ輩がいる。実際に長年支えてきた平蝶番が壊れてしまったらこのアパートからでていく羽目になるのだが。
「えーと、マクラちゃん」
己をマクラちゃんと呼ぶ、尾先ヶ 間蔵の名前を反芻する。人の名前を覚えるのが苦手でしかたない。
「マクラちゃん、覚えてもらって嬉しいですう!!」
キャラキャラと彼女は笑う。いつでも楽しそうで羨ましい。
「次来るときはドア、そっと開けてくれると嬉しいんだけど」
「はーい!」
(あーあ。次は覚えてなさそうだな)
マクラはそそっかしく部屋に上がると、何やら紙袋からアクセサリーを取り出した。
「マクラちゃんとおそろいのイヤーカフ!! 可愛いでしょっ」
「イヤーカフ? そんなものあるんだ」
「そうなんです〜〜っ! ほら、キツネと月のイヤーカフなんです。つけてくれますよね?!?!」
拒否権はないと言わんばかりに詰め寄られ、頷くしかなかった。
「マクラちゃんはオシャレにも気を使う派なんだね」
「はい。だってうら若き乙女ですから」
頬を赤らめ、彼女はわざとらしい仕草をした。
「この子にも何かない?」
クスを見やると、うーん、とマクラは悩みだした。やはりおそろいは憧れの先輩とやらとだけが良いのだろうか。
「死脚に物を与えると力が強まってしまいますので」
「え、クスの事を知ってるの?」
「はい。死脚は強力な呪具なんで、ある程度有名なんです。ネットではフーリンシェンホワンなんて、言われています」
ネットの間では生後間もない赤ん坊の遺体をある手順で祀り、写真や絵にして呪いたい相手へ見せる事で寿命を奪うという――呪術と言われているらしい。
――ああ、人間の死体を使う、マジナイの一種から生まれた死脚という呪具さ。異国のマジナイを使って製造される、アジア諸国か、アラブ系の。とても危険な呪法だと耳にした事はあるが……
至愚は確かそう言っていた。
「死骸を使う魔術は強力なんです。ほら、蠱毒の類いやネクロマンシーとか有名でしょう?」
「ネクロマンシーは名前だけは知っているかも、蠱毒って確か生首を辻に埋めて人に踏ませるヤツだよな」
「さすが先輩! 物知りですっ。そういう死を倍増させた呪具は物を与えたり、祀ったりすればするほど強くなっていくんです」
犬神や猫鬼。または蛇神。彼らは祀られれば祀られるほどに使役者へ恩恵をもたらす。
「ん……待てよ? じゃあ、私に物を与えて……マクラちゃん、もしかして」
「あー、えっと! パーラム姐さんには長生きして欲しいんでっ!!」
アワアワと見破られ、彼女は最後にはテヘペロと反省もせず誤魔化した。
「じゃあ、クスにあげようか」
「ダメーっ! パーラムさんとおそろがいいのーっ!!」
検索してはいけない言葉らしいですが……、肝心の画像はでてこなかったです。
外国の良くも悪くもな、おまじないにはものすごく興味があります。




