うたがいは あんちゅうの ばけもの
疑いは暗中の人影
幽霊みたり枯れ尾花
夜って見間違いますよね。色々
夜中、午前二時ぐらいだったろうか。
風の強い日中で道路には様々な物が転がっている。桜も散り、春はめちゃくちゃにされてしまったみたいだ。
ある男性は残業を終え、帰路についていた。帰宅のショートカットに使っている公園の一角に美しい衣を纏う、清廉な女性を見かけた。初めは幽霊か、妖怪か――あり得ないものを目撃してしまったと、肝を冷やしたが……。
不意に視線が交差し、見惚れた。
なんと儚げで美しい女性なのだろう。薄幸の美女、といった表現が似合う。色白の姫君。
高貴な身分なのか、衣もきらびやかである。
なぜ変哲もない公園にそのような姫が出るのか。ここは古戦場だった、とか、城であったとかは耳にした事がない。
くたびれていた男性は緊張を忘れ、話しかけて見たくなる。下心ではなく、なぜ、そんな悲しそうな顔をしているのか、と。
「あ、あの」
生け垣の向こうに佇む姫君に話しかけてみた。
「……どうしました? 何か、あったんですか」
「私が見えるのか」
鈴の音のような美しい響き。まさか狐が化けている? そんな馬鹿な。
今の世、おとぎ話の如し状況があってたまるか。
「何か悲しい事がおありですか。あまりにも、寂しい顔をしていたので」
「……私が、何に見えている?」
「え?」
「寂しい顔をしている理由が分かると。お前に? 私の苦しみが!」
いきなり激昂した姫さまは飛びかかってきた。そうして引っ掻かれ、異変に気づき悲鳴を上げる。
人の顔をした獣が鬼の形相で目を光らせ、こちらの顔をズタズタに鉤爪で引き裂いた。
「ば、ばけものーっ! た、たすけてくれ! だ、だれかあああっ!!」
「化け物? 私を化け物にしたのはお前らだ!! 死ね! この薄情者めがっ!!」
「ヒィッ! 止めろっ! 止めてくれーっ!」
絶叫が止んだ。人面獣が喉を引き裂き、息の根を止めたからだ。静寂と洗い吐息だけが残る。
「クソッ、……私は、私は!」
巨大なアライグマの身体をした人面獣……隠る舞は涙を流し、うずくまった。人間が憎い。
自分自身をこんな姿にした――人間どもが。
今日はエイプリルフールかぁ……特に嘘はありません(汗)。




