にゅにゅにゅ〜
草木も眠る丑三つ時。乎代子とパビャ子、クスは散歩をしていた。
暇つぶしではないけれども三人で宛もなく歩くのが最近の日課になっている。程よく田舎の町は夜になるとシンと無人になる。クスを人の世界を見せてやりたい、と乎代子は一定の距離をめどに散歩をするのだ。
「うわ、何?」
廃墟化したアパートから離れたある道で汚水があふれ、腐臭を放っているではないか。
「う」
「こら、舐めちゃいけません」
汚水をなめようとしたクスを止めると、周りに人がいないか探すも元より人気ない場所である。騒ぎにすらなっていない。
「水道局か、消防に連絡したほうが良いのかな」
「ベチャ、アッ! これ、まずい! 人の味がするっ!」
四つん這いになり汚水を飲んだ無意味名 パビャ子にもはや呆れるしかないが、コヤツは肥やしでもアルミ缶でも食べる輩だ。咎める気にもならない。
「そりゃそうじゃん。人が出したし尿なんだから」
「違うよっ、人の体の味がする!!」
「人の体……遺体?」
(まさか、いつもし尿を飲んでるのか、こいつ……い、いや、あのマンホールを確かめるかべきか……? )
ザバザバと汚水を噴出するマンホールを見やり、固唾をのむ。
「おね」
「大丈夫。アレは……」
そう言いかけた時――防犯灯の灯りがいっせいに明滅し始めた。脂汗がブワッと出る。嫌な予感がする。
「にゅ〜〜〜〜」
首を傾げる、いや、くの字に曲げた人の形に近い――この世の者でない部類がヌボッと屋根から顔を出して、歯茎をむき出しにしてきた。
「にゅにゅにゅ」
笑った。笑いはある種の威嚇だ。
「わあ、あのひとがマンホールに人間詰めてんだ」
パビャ子がお気楽に言う。2メトール以上はあるはずの化物はナナフシに似た身体を現すと、こちらへ寄ってこうようとしている。
「わ、私たちは何もしませんから! じゃ、じゃあ! 行くぞ! パビャ子!」
「え?」
敵意はありません、と態度を示しながら……ご飯のストックになる前にそそくさとその場から、退散した。
「クス。世の中にはあんなヤツがいるから気をつけような」
「私たちもあんま変わらなくない?」
廃墟化したアパートの前の墓地で一息つく、ここまでくればあの化け物もついてこないだろう。
「私は人の肉を食わないし、ああやって背も高くない!」
「そこ??」
「パ」
「クスちゃん、コイツおもしろいよね〜」




