しんぱしー ともだち
悪野狗 嗤使は河川敷で赤子が泣いている声を耳にして、まだ泣き止まぬのかとため息を付いた。
あの子は何があって川に居付いたのだろう。またしてや、何の未練があって寂しいのだろう。
母親から飴も貰えず、泣いていたら可哀想。可哀想。
嗤使は自らの境遇を思い出し、嫌な気分になった。
「わーう」
いきなり河川敷を駆けてきた謎の半人半妖のような、子供に声をかけられる。ボロボロになった着物に不釣り合いなシュシュ、と光る首輪。
一級河川のヌシではなさそうだ。
「なにー? キミも仲間? 寂しい仲間?」
「あ? ぐ?」
「可哀想に」
「クス! いきなり走っちゃ……あ、うわ……」
懐中電灯を片手に追いかけてきたのはこの前の混ざりものであった。
「この子の知り合い??」
「あー、えっと、一緒に暮らしてる。ね、クス」
「う! おね!」
「お姉さんなの?」
不格好な生き物は顔を明るくして「そうだ」と言いたげである。
「私たちは何ていうんだろう、呪具っていうらしいんだ。だから……わ、私が姉として接して良いかな、て」
「へー、可哀想な人だったんだ。じゃー、意地悪しないどくね? じゃあさぁ」
「クスはオモチャじゃない」
「違うって」
てっきり人妖的な何かだと思っていたが、彼女たちはヒトに利用されて作られた『哀れな』生き物だった訳か。
「ムー! オネーサン、名前は? アタシは嗤使!」
「え、あー、洞太 乎代子……」
「乎代子ね! 覚えたからねっ、ね、クスと友達になっていい??」
乎代子は微妙な顔をしたが、クス自体は乗り気のようで根負けして仕方なく頷いた。
「分かったよ……あんまり悪知恵とかは教えないでよ」
「えーっ、ワラシってそんなイメージなの〜? じゃあ、改めてよろしくね~!」
「アパートに魑魅魍魎が増えてく……」
ボソリと呟いた嘆きに気づかず、 嗤使はワクワクする。シンパシーを感じた、そうして少なからず仲間と出会えた気がしたからだ。




