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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆かんたんの枕☆  作者: 犬冠 雲映子
しし虫はここにはななきししらははかしみにしづがとにゆきてなきをれ

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いかい ちかてつ にて

「あー、悟られなくて良かったんじゃないですかー?」

 イスいリル・カー・わグナーが安値の缶コーヒーを片手に、そんな言葉を言う。

「え。あの幽霊社員と知り合い? ワグナー、おまいさん、意外だぞっ」

「セクハラ? モラハラ? キショいです」

 ミハルは肘鉄をくらい、呻くが彼女はウームと曖昧な返答をよこした。

「有名ではありますね。隠し神じゃないんですか、縁戚みたいな種族でー」

「いや、アイツも偽天使じゃないんかよ」

 伝書鳩とは偽天使の集いすらないのか? 有象無象の隠れ蓑になっていないか?

「ミハルさんが言える事じゃなくないすか? 別に咎められもしないなら、いても良いじゃないですか」

 缶コーヒーを飲みきると、広大な駅のホームを眺める。人っ子ひとりいない。それもそのはず、隠し神が創り出した異界だからである。

 古い年代のコンクリートが目立つ、無機質な空間。ホコリ臭くて空気が重たい。ひんやりとした風がどこからか吹いていて、地下鉄特有の心地よさがあった。

「これから私は根の堅洲国に行きますけど、何か買ってきてほしいものあります?」

「ないよ。いつもありがとうな」

 列車がたまに駅に来て、根の堅洲国という場所へ通じている。どういう理屈かは謎ではあるが……それはこの世の者でない部類では『普通』なのだ。

「バティとかいう、密教系のキツネ集団に因縁があるとしたら……ミハルさんはその人との交流をやめるべきですねえ」

「……ほうか」

 金の切れ目が縁の切れ目、というけれども関係とはあっけなく終わるのも承知だ。子供ではない。

(人間ごっこも潮時なんかな)

 ちょっとした楽しみがなくなるのか。寂しい気もしたが――

「正直すぎるんですよ、ミハルさん。もうちょい悪いヒトになりましょーよ」

「えっ?」

「止めといた方が良いとか言ったけど、こすいヤツで通して、遊ぶものもありなんじゃないすか? ほら、スリリングで楽しいでしょう」

 アハハ、と彼女はあっけらかんとして笑う。

「だから私、こんな風になっちゃったんですけどねー」

「イスいリルちゃんの良い所だと思うよ。そういうの」

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