表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆かんたんの枕☆  作者: 犬冠 雲映子
しし虫はここにはななきししらははかしみにしづがとにゆきてなきをれ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/113

ゆめ が あいまい に なる

 パーラム・イターは薄暗い世界でひたすらに舟の渡しをしていた。ふとこれは現実ではない、と悟り……ああ、まだ未練を残しているのか、と自嘲する。

 全てをぶち壊し、逃げてきたはずなのに。まだ。

 不思議と家族を殺めた八重岳 イヨ子が浮かぶ。規模は違えど逃げたのは同じだ。

 あの娘には妹がいた。確か――

「お姉さん。逃げるなんて最低ね」

 舟に居ないはずの実の妹が憎々しい口を利く。「せっかく与えられた優遇を捨ててまで、ほんっと贅沢な姉だわ。肉親から外したいくらい」

 褐色肌の、異国の服を纏ったあの日(・・・)のままの妹は睥睨の双眸をしている。

「そこまで私が悪いか? 私は、何も知らない子供の時に人攫いにあって――!」

 言いかけて吐き気がする思い出を飲み込む。

 アレには永遠に伝わらないのだろう。なにせ『夢幻』の産物なのだから。

「そこまで私を憎悪の対象にするのならば刺すなり、殴るなりしろよ。それができないのか? 弱者めが」

 妹は老齢さを宿したまま、ピクリとも動かない。そこがまた苛ついて、パーラムは飛びかかり殴り倒した。

「消えろ! 私の中から消えやがれっ!」

「――それが、貴方の答えなんですか」

 殴られていた老婆がいきなり、イヨ子の妹に変貌する。血を流し顔が変形しているのにもかかわらず。

「妹さんは後悔していると思いますよ。まだ此岸にいるだろうし、あんな言葉を言わなければ」

「黙れっ! 人間風情に何が分かんだよっ! クソ! クソクソ!!」

 激情に身を任せていると、笑い声が聞こえ我に返る。何かがおかしい。笑っているのは己の声色である。





「あ……?」

 乎代子はハッと手を止めて、自分自身が何をしているか悟る。夢の中ではパーラムで。

「乎代子、ストレスたまってたんだね〜」

 無意味名 パビャ子がニッコリとしてそんな事をいい、全身の力が抜ける。なんてひどい事をしていたのだろう。

 彼女を殴り倒していたんだ。

「ごめん、ごめん……あたし、おかしくなっちゃったんだ」

「大丈夫だよ」

「嫌だよ。私は、嫌だ」

 真夜中は静まり返り、幸いにもクスやサリエリの残骸は眠っていた。乎代子はパビャ子にすがりつくようにもたれかかる。

「パビャ子さんは傷つかないから、なんでそんなんになるの??」

「……。いつか、分かるよ。多分」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ