ゆうれい しゃいん
シッチャカメッチャカになったオフィスを、黙々と三人で片付けていると、珍しい輩が出社してきた。
「忘れ物?」
アリーが皮肉めいた問いかけをよこしたが、彼は首を横に振った。
「ミハルに聞きたい事があるんで」
かったるいと言いたげに書類やインテリアが散乱したルームを見渡す。
「三人で終わるんですかコレ?」
「じゃあ、貴方にも手伝ってもらおうか」
「はぁ。別にいいッスけど」
どこまでも怠惰なヤツ。ミハルは内心、会話は避けたいなと書類を無心に分けた。
かの伝書鳩の幽霊社員は相変わらずだるそうな動作で整理整頓をしている。
(なんつー名前だっけなあ。ホントに来ないから顔も忘れてたわ)
アリーやダッチバーンはさも気にしていない。それもそうか、ミハルに用があると言われたのだから彼女たちは無関係だと思っているのだ。
(カーッ、ムカつくぜ)
倒れたパキラを立てていると、いきなり幽霊社員が接近してきた。
「あの、ミハルさん。バテイノスクネと知り合いじゃないですよね?」
「バテイノスクネ? 誰だそれ?」
素面で驚いだ。宿禰、そんな大層な名がついた人物と仲良くなってはいない。
それにいつの時代の人物だ?
「ああ、勘違いでした。すいません。あ、俺、ラディウムって言います。よろしく」
「あ、ああー、よろしく」
名刺を渡され、こちらも名刺を渡した。彼はラジエルの枠を任されていた偽天使だったのか。
「じゃあ、帰ります」
「オイッ! まだ片付けが終わってないぞ!」
颯爽と消えたラディウムをアリーが鬼教官の如く追いかけていった。
「なあ、ミハル。その名刺、捨てるかどっかに置いといた方がいいよ」
静かにしていたダッチバーンが口を開く。顔面蒼白で何かに怯えている。
「なるほど。盗聴器って訳かー、どうしたんだろうな」
「やべー気配がしたよアイツ……」
ブツブツと彼女は不安を口にしている。そこまで怖がるならば……なら、金庫にしまっておくか?
(あ、バティの事か! アイツ、バティと知己なん? 世間も狭いな)
宿禰に気を取られて良かったのかもしれない。
ミハルは半開きになったデスクの金庫に名刺をねじ込んだ。




