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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆かんたんの枕☆  作者: 犬冠 雲映子
しし虫はここにはななきししらははかしみにしづがとにゆきてなきをれ

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すいめんか

 美麗之前は災禍が起きた日から少し時間が経ったのを、人間の感覚に置き換えて知る。

 桜が咲いた。春が来て、野鳥がうららかにさえずり、勝手に季節が進んでいく。

 被災した巨大な川べりの地域は忙しく、今も泥を撤去したりボランティアを募っているという。

 あの面倒な始祖の第一眷属はまだどこかで生きているらしく、自分たちは相変わらず存在していた。美麗之前の門下であるマクラに無断で遺言めいた願いを託して、消えた。

「そこまでしてあのじゃじゃ馬が良いのかしらぁ」

 パーラムの残骸たちを監視しろ、またしてや良からぬ方向へいかないようサポートしろ、と。

「どこまでも自分勝手なヤツだわ」

 吐き捨てると、隣にヒトの気配がした。

「こんにちは。美麗之前さま」

「貴方は確か、……誰の門下だったっけ。わすれちゃった」

「なんと酷い。亜別さまの門下、安土でございますよ。たまに伝令係として会いに来ていたのに」

 彼はニヤニヤとしているが、目は笑っていない。半月に歪め胡散臭さが滲み出ているが──確か、きちんと亜別からの伝言を届けに来ている。

 根は真面目なのか、亜別が恐ろしいのか。

 彼女にはどちらでも良かった。一瞥すると鼻を鳴らして、リクルートスーツ姿の青年が何を言い出すのかを待つ。

「亜別さまがパーラム・イターの残骸どもを見張るために安土めを遣わす事になりました。これはあの厄介者の願いではなく、独断でございます。タタタノミヤがどう干渉してくるか分からないため、またあのような厄災が起こらぬよう」

「なるほどね。亜別らしいわねえ」

 懐が広い素振りをしているくせに猜疑心の塊であるあのオンナが、始祖の直属を信用しているとは思えなかったので安心する。

 それに彼女の役割は我々の影響や存在を隠す事。パーラムは出すぎた真似をしていた輩だったから、派遣するのは何もおかしくはない。

「分かりました。貴方は嫌じゃないの」

「拒否権はありませんし、それに、あのムカつく()()()()()をしかり付けられるのなら」

「ちょっとお、私の門下の子よ〜?」

「個人的な感情をお許しください」

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