こんこん こっくりさん
洞太 乎代子は通りすがら、仲良さげに遊んでいる3人の子供たちを見て、もう学校の学期が終わったのだと知る。4月になれば新学期が始まる。
夕暮れ時にさしかかる春の風に包まれた日。
子供たちは何か地面にチョークをかいて、遊んでいるようだ。はしゃぎながらジッと『ソレ』を見つめている。
「コックリさん、コックリさん。お帰りください」
(あー、定番のアレか。地面でやるなんて斬新だなァー)
小学校低学年やそれ以上、必ずや通るオマジナイの遊び。コックリさん。
乎代子は自分自身の基盤となった八重岳 イヨ子の記憶を介してでしか遊んだ記憶はない。
あまりよろしくない、とか、コックリさんは恐ろしいと聞く。それか自己暗示だとも言われている。
実際、コックリさんは何者なのかを乎代子は知らない。狐か、狸か、ましてや悪霊か。
どれも変わらない。何も無い事で遊戯しているのだ。
「どうしようっ!帰ってくれないよ……」
「手、放しちゃお」
「ダメだよ。放したらヤバいらしいし、とにかく帰ってもらわないと」
どうやら呼び出したナニカは帰ってくれないようだ。
アスファルトの上でガリガリと小石が動く音がする。低学年の力ではありえない挙動に、こちらも行く末が気になって立ち止まった。
「もうヤダ!!」
1人の子が恐怖のあまり手を放してしまった。残りの子供たちは唖然と石を見る。
カン!と石は弾け砕けた。
異常だ。
「き、キイイ!!!ぎゃああああ!!」
手を放した子が白目をむいて、さらに首を掻きむしっては奇妙な叫びをあげる。
「わあああああああ!!!!!!」
蜘蛛の子を散らすように2人は逃げていく。残されたのは泡をふく哀れな被害者のみであった。
「はーあ、やっぱりそうだよな。友だちとか、そういうのは」
乎代子は立ち去って帰ろうとしたが──違う笑い声がしてギョッとした。
宙に浮いたリクルートスーツ姿の若者がケラケラ笑っている。
「けんけん、きやんきやん。ばかばかばか、お前が呼び出さなければそうならなかったよ!あははっ!ご愁傷さま!」
茶髪の髪を結ったソイツは乎代子の腐れ縁のパビャ子の似た何かだと即座に理解した。
「なぁに。そこのオンナ。けんけん。この『コックリさん』が見えてるの?」
「その子」
「あー、混ざりものか。じゃぁ、コックリさんはなーんも手出しできないね。この子はアタシの物。あげないもん」
ケラケラ笑うと、ガッチリとその少女の肩を掴んだ。
「そういう所はあんたら共有の質なのか」
「え?知らないし、アタシらに知り合いがいるの?まー、いいや!壊れるまで遊ぶから邪魔しないでよーっ」
「はいはい」
リクルートスーツ茶髪族(?)の執着する物を妨げるとめんどくさいのは重々承知している、だから引き下がるしかない。
(パビャ子も拗ねるとクソめんどくせぇから)
歩き出し、また通りかかった通行人が駆け寄るのを傍目に無責任に徹した。
アレはもう手遅れなのだから。




