がたん ごとん
無意味名 パビャ子は道すがら、変なものを見た。
『この先右ひだり、列車多シ』
「列車ぁ?? 道路なんだけどぉ〜?」
パビャ子からしたら突き当たり、T路地になっている。その先には斜めに防衛道路があり、陸橋の下、本当の電車が走っているはずだ。
観音地蔵のあるこのT路地の、パビャ子の前に横たわる道には線路はない。通るのは車か自転車か。
真夜中になり、人気はさらになかった。風の通り道なのでカタカタとノボリが揺れる。
それ以外、音もない。
しかし列車、それも蒸気機関車を思わせる警笛がして近づいてきた。重厚な車輪の音と共に、満員電車が通過する。
乗客は皆、どこかしら欠損しており、暗い表情をしていた。パビャ子には分かった。
彼らは電車に飛び込んだ人々だと。
凄まじい速さで通過すると、世界はあっという間に元へ戻った。そうして看板も消えていた。
「あー、みんな、またひかれに行くんだね」
通勤通学、その時間帯に連れ戻されていくのだろう。自殺をしたものは現世で永遠の苦しみを味わうという。
「あっちも苦しかったらどうするんだろう? また、死のうとするのかな?? 知らないや。私にはカンケーないし」
希死念慮を抱いたとしても、パビャ子は死ねない。身体が此岸に留まり続けろと、固定する。
この世の者でない部類たつは彼岸へいけずに、固定され、歪んでいくのだから。
遠くから終電と思わしき、本物の車両が発するガタンゴトンという馴染みある響きがしてパビャ子は歩き出した。




