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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆かんたんの枕☆  作者: 犬冠 雲映子
しし虫はここにはななきししらははかしみにしづがとにゆきてなきをれ

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かんがえ かた は それぞれ

 とある廃墟となった病院では夜間になると、悲鳴や雄叫びがするという。規模は巨大、街からは少し離れた場であったが地域を担う医療施設だった……のであるが、相次ぐ不祥事で廃墟となったのだ。

 まだどこかに人が監禁されているのだとか、無念の死を遂げた幽霊が叫んでいるのだとか──地元では様々な怖い話が噂されている。

 この前、その病院がある近場でタクシー運転手が惨殺され話題になった。

 いよいよ忌み嫌われ、廃病院には昼間でもどんよりとした空気が漂っている。






 いきなり前触れもなく頂点に立つサリエリ・クリウーチが失脚した。だがたいして頂点が代替わりしても組織は変わらなかった。

 モニター画面を眺める時間。メッセージを振り分ける時間。

 人を調教する時間。

 今の頂点は、人間が大嫌いだと『存じている』。だって生前からかの人物を知っているから。

「リヤン様」

 制御室に入るとリヤンと呼んだ女の子に鋭い所作で敬礼する。

「今日も我々が天使代理人協会を取り仕切っていきましょう」

「うん。がんばろう」

 誠実そうな口調でリヤンは答えた。

「今日も一丸となって人間を調教しよう。それと組織員たちの配給日だったな、何体か美味そうな人間を調達しようか」

「はい」

 この世の者でない部類はみな、人の血肉が主食である。

 いかに人を喰らうか、人を飼い慣らすか。それが現在の廃病院の重要な役割を担っていた。

 不祥事続きの地域の一大施設の地下には霊安室、その他に隔離病棟(・・・・)なる空間があった。鉄格子、狭い独房のような間取り、そうして人権を無視した拘束具。

 今は亡き院長は何に関わっていたのかは謎だ。だが、我々非人間にはありがたい遺物だった。

 人を捕まえてきて、食糧難を防げる。

 リヤンは鼻歌を歌いながら地下に向かい、隔離病棟の鉄扉を開いた。

「どれがいいと思う?」

「成人が良いかと。それと最近入荷した肉付きのいい個体もいます」

「じゃあ、ソレを。後は適当に選ぶよ」

「はい」

 人間たちは恐怖で様々な反応をとる。喜怒哀楽、だがもう自分自身にはそれも鳴き声でしかなくなった。

(最初から化け物であったなら良かったのに)

 スヴェトラナ・キラークイーンはわずかに唇を噛みしめた。

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