かんがえ かた は それぞれ
とある廃墟となった病院では夜間になると、悲鳴や雄叫びがするという。規模は巨大、街からは少し離れた場であったが地域を担う医療施設だった……のであるが、相次ぐ不祥事で廃墟となったのだ。
まだどこかに人が監禁されているのだとか、無念の死を遂げた幽霊が叫んでいるのだとか──地元では様々な怖い話が噂されている。
この前、その病院がある近場でタクシー運転手が惨殺され話題になった。
いよいよ忌み嫌われ、廃病院には昼間でもどんよりとした空気が漂っている。
いきなり前触れもなく頂点に立つサリエリ・クリウーチが失脚した。だがたいして頂点が代替わりしても組織は変わらなかった。
モニター画面を眺める時間。メッセージを振り分ける時間。
人を調教する時間。
今の頂点は、人間が大嫌いだと『存じている』。だって生前からかの人物を知っているから。
「リヤン様」
制御室に入るとリヤンと呼んだ女の子に鋭い所作で敬礼する。
「今日も我々が天使代理人協会を取り仕切っていきましょう」
「うん。がんばろう」
誠実そうな口調でリヤンは答えた。
「今日も一丸となって人間を調教しよう。それと組織員たちの配給日だったな、何体か美味そうな人間を調達しようか」
「はい」
この世の者でない部類はみな、人の血肉が主食である。
いかに人を喰らうか、人を飼い慣らすか。それが現在の廃病院の重要な役割を担っていた。
不祥事続きの地域の一大施設の地下には霊安室、その他に隔離病棟なる空間があった。鉄格子、狭い独房のような間取り、そうして人権を無視した拘束具。
今は亡き院長は何に関わっていたのかは謎だ。だが、我々非人間にはありがたい遺物だった。
人を捕まえてきて、食糧難を防げる。
リヤンは鼻歌を歌いながら地下に向かい、隔離病棟の鉄扉を開いた。
「どれがいいと思う?」
「成人が良いかと。それと最近入荷した肉付きのいい個体もいます」
「じゃあ、ソレを。後は適当に選ぶよ」
「はい」
人間たちは恐怖で様々な反応をとる。喜怒哀楽、だがもう自分自身にはそれも鳴き声でしかなくなった。
(最初から化け物であったなら良かったのに)
スヴェトラナ・キラークイーンはわずかに唇を噛みしめた。




