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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆かんたんの枕☆  作者: 犬冠 雲映子
たまやかたよみちわれゆくおほちたらちたらまちたらこかねちりちり 《パビャ子の編》

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かわ の いじわる は

 無意味名 パビャ子はさざめく草藪に己が立っているのを見た。

 嫌に風の強い夜だった。ビュウビュウと唸る風と鉄塔の電線が揺れている。

 空の曇りと比例して、辺りは暗い。その中に自分自身が佇み、こちらを見ている。

 お互い見つめ合う。鏡合わせ。きっとアレは存在しないもの。

 声をかけても反応しないし、強風に暴れる色素の薄い茶髪の合間から覗く瞳は無を宿していた。

「私、何か迷ってるのかな」

 小さく呟いて頭の中を整理整頓しようとする――が、パビャ子には無理な話だった。馬鹿な脳みそは答えなど出せない。

「大丈夫だよ、迷っていても」

 あちら側から勝手に言ってきた。「……」

「私は迷っていても大丈夫だよ」

 虚ろな目で彼女は言う。そうか、虚ろだ。自分自身には何もない。

 でもそれは洞太 乎代子だから、自分はそうではいけないのだ。

「大丈夫、か」

 自問自答。川べりは異界と隣り合わせ。居ないものが見えてもありえなくもない。

「何もなくても、私は私を演じていくよ」

 無の無意味名 パビャ子はそう伝えて、消えていった。風がひときわ、強烈に吹いてすべてをかき消したからだ。

「川は意地悪だなぁ……」

 拗ねてみせて風に任せ夜をさまよう事にした。風来坊、そうしていたいから。

風が強いです。

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