じゅうじろ の ぴえろ
無意味名 パビャ子は道端――十字路の真ん中にピエロの置物があるのを見た。
世にいうアフロのピエロではく、角のような不思議な帽子を被った方のだ。小首を傾げ、可愛らしく道路に座っている。
不自然だ。
誰か落としものだろうか? 最近はぬい活も流行っているし。
……と、は思わずパビャ子は近づいてみた。
「誰が置いたんだろ。車がきたらぺちゃんこになっちゃうよ」
するとギギギと動かないはずのピエロの置物がこちらを見た。
「ぺちゃんこになるのはお前だ、」
しゃがれた宣言に、反論する前にとんでもない速さでつ突っ込んできたトラックに突き飛ばされる。
「いたたあ……」
アスファルトを転がり、やっと電信柱にぶつかり止まる。パビャ子は傷つかないのでぺちゃんこにならないので、頭が痛くなっただけだった。
「あんのピエロお〜〜〜〜っ!」
「だ、大丈夫かあ!?」
トラックから降りてきた運転手がアワアワと茶髪オンナへかけよってきた。だが無傷なのをみて更に驚いた。
「き、救急車呼ぶから!」
「大丈夫。あんまり傷にならなかったから……それより」
ピエロは粉々になっておらず、それ以前に最初から存在していなかったみたいだ。
「アイツ! どこいったんだー!!」
「あ、ちょっと!」
あれからピエロは現れなかった。だが、乎代子が廃墟化したアパートにため息をついて帰って来た。
「近所でものすごい事故があってさ。あそこの十字路で、遺体みちゃったわ」
「え」
「ぺちゃんこ、みたいな……あー、アンタのせいで見慣れているけどちょっとキツイな」
不平を述べるよりもぺちゃんこという言葉にあのピエロが浮かぶ。
「へー、乎代子はピエロ、見ないでよ」
「はあ?」
彼女は分からないようだ。いや、分からない方が良いのだろう。
私は観音菩薩地蔵の前に置かれているのを見ました。びっくりしますよね。
ピエロ。




