にげる
「グゥゥ……うう」
唸りを上げると、躊躇なく腐乱死体を貪り始めた。
それに猛烈な吐き気を覚えるが、槐角は怯えてさらに腕にしがみついてくる。あれは何だ?
人間の形をしているが、中身が全く異なるじゃないか。
(私も同じ?)
クワ色の髪をした女性。リクルートスーツ。そうして人肉を食べる。
そういえば横にいる少女も最初、草藪から飛び出し――自分自身の喉を引き裂いた。
(……私も人間を食べなきゃいけないって事なの)
どこからか悲鳴がして、振り返るとハイキングをしていた老夫婦がこちらを見て恐怖に腰を抜かしている。
血の海と腐乱死体。
そうして怪しげな集団。
「ギギギっ!」
腐肉を貪っていた女性が新たな獲物を見つけたと言わんばかりに構えの姿勢をとった、ので慌てて抱えて、自動車に乗り込む。
車内には監禁用の道具らしきものや、札束が置いてあった。彼らは犯罪集団だったのか。
とりあえず犯罪に使用された恐ろしい車を運転し、ガソリンを確かめる。まだ大丈夫そうだ。
「お姉ちゃん」
「大丈夫よ。遠くにいって状況を整理すれば……」
ハッと後部座席を見やると、あの化け物が半透明のまま四つん這いで暴れまわっている。なぜ半透明になっているのか分からないが、もう、ヤケクソで道を走るしかなかった。
「おうち、いこう、ひとのおうち」
「え、ダメだよ。こんな状況……でも、そうよね。何でもいいから通報しないと」
カーナビを設定して、街から離れた山道沿いを走る事にしよう。ダムの近くについたら、まずは車内でもいいから二人でこれからを決めよう。
倉見はそう考え、法定速度を超えた速さで車を走らせる。
「お腹空いてきた……最低だ……」




