ゆきさき
「あ、あのひと、こわい……」
槐角が震えながら訴えてきた。どうするものか。
「じゃあ、今日はどこか雨風をしのげる場所を探そうか」
「うん」
宿から出て初めて野宿をする事になる。廃墟化した家屋を探すか、洞窟でもいい。
とりあえず一晩明かして、それから考えよう。
「おい、姉ちゃん。そこでなにしてんの?」
大型自動車に乗った数人の男性たちがニヤニヤと横に停車してきた。なんて幸先が悪い。
「あ、いえ、ただそこら辺を歩いているだけで」
「その格好だと遠くから来たんじゃね? じゃあさ、駅まで送ってくよ? ね?」
嘘だろう。山奥まで大勢で来て、しかもヤンチャそうな男性たちだ。偏見はいけないがロクな事がない。
「大丈夫です」
「チッ、うざってえな。いいや、そっちのガキよこせよ」
「やめてくだい!」
槐角の腕を掴もうと、ドアを開けてガタイのいい輩が降りてきた。「うぜえぞくそアマ!」
「やめてっ!」
成人男性には力の差で圧倒的に敵わない。倉見は必死に振り払おうと、体に力を込めて――
「ぎゃあああっ! ムカデがっ! 止めろっ!!」
「食われる! 助けてくれええっ! クソっ! 何だよコレっ?!」
車内から阿鼻叫喚の騒ぎが起き、それぞれに飛び出してくるなり、見えない何かを引き剥がす動作を繰り返しのたうち回る。
(な、何が起きたの?! 私が、やったの?)
怒りに任せて、何かを発動した。だけど何かは分からない。倉見は槐角を引き寄せて、睨みつけ――
「ギッ!」
横から獣の俊敏さであの女性が主犯格の男性の、喉グラに噛みつき食いちぎった。大量の血しぶきがあがりあっという間に肢体が腐敗していく。
「な、何が起きてんだ!? あ、ギャアっ! グギ」
縦横無尽に獣が人間を殺め、残ったのは腐り果てた遺体のみだった。
「な、なに……なに」
腰を抜かして、その場にへたり込むしかない。だがクワ色の髪をした女性は四つん這いのまま、こちらを見据えていた。
「貴方は何者なの」




