おきかわる
「今月の満月はナマクビムーンです!」
午後六時。三人で焼肉屋で集まっていると、奇妙な話題がテレビで流れていた。よくある天気予報の豆知識、といったもの。
ナマクビムーン。そんなの聞いた事が無い。
「やべえ。このテレビ、何者かに電波ジャックされてんじゃないの?」
焼肉をさばいていた洞太 乎代子が若干引いている。
「新しい呼び方じゃね〜?」
パビャ子は気にせずにモグモグと生肉にがっついていた。(焼いてから食え〜〜~)
乎代子の心の声も虚しく、三人しかいない焼肉屋は異常な天気予報の話題を流し続けていた。
近年は外国の月の呼び方が普及し、事ある毎に話題になっていたが……。ビーバームーン、など。
「化け物の仕業だったら面白いかもな」
安土 奏汰郎がニヤニヤしながらテレビから視線を離した。
「別にいいんじゃない? 名前が意味不明になるだけなら」
「気持ち悪いじゃん。生首ってさ。切られてみろよ、痛いぜ」
「まあ」
人間が頭部だけになるのは本能的に嫌悪感を抱く現象のは多数派なのかもしれない。それは人類としての学習ゆえか。
「それによ。ゆるゆる置き換わってくの、やばいじゃんか。この世の者でない部類でも厄介な部類だぞ」
「へー。この世の者でない部類って色んなヤツがいるんだ」
肉を食み、乎代子は想像がつかないと思考停止した。
「いるよ。コイツみたいなのとか、俺みたいのとか」
「パビャ子は……」
(あっ)
焼肉のタレを皿に垂らしてベロベロなめている様を見やり、正気に戻る。これはいつだかの焼き回しで――安土の言う通り、置き換えられている。
なぜ、今まで普通に過ごしていた?
乎代子は絶望し、箸が震える。それを彼は意地悪そうなか眺めている。
(クソがっ! )
「自由でいいよな……この人さぁ……」
「自由なのがやべえの……」
この世の者でない部類は人の概念に縛られない。だから人の世に悪影響を及ぼす。
ラファティはそう説明してくれた。
「私は、自由じゃなくていいや」
「……そんな顔すんなよ」
(それはそっちのセリフだ)
笑ってみたのに、彼はなぜか寂しい表情になった。彼は人でない者のくせに、人一倍、泥臭いヤツだった。
(ラフ。あんたはもういないのかよ、ムカつく)
目の前で当然の如く喋る化け物をヒッソリと睥睨する。
(コイツに流されてたまるか)




