にちじょう の だいよう
墓志波ハイツのガランとした駐車場で不意に、茶髪オンナがささいな異変に気づく。
「あっ、乎代子。いつの間にかオシャレさんになったの?」
「あー、その。マクラちゃんに押し切られて……つけてるんだ」
イヤーカフを咄嗟に隠すと、乎代子はため息を付いた。
「なっ! なんでパビャ子にはくれないのっ?!」
「知らないよ」
「ああーっ?! ずるい!! ちょーだあい!」
予想通りの反応に何とも言えなくなっていると、駐車場の砂利を踏む音がした。嫌な予感がしてさらに気が重くなる。
「そんなもんつけて。縁起わりいなぁ」
「だ、誰ぇ?」
パビャ子は知らないようで首を傾げているが、こちらは2回目だ。あの奇妙な青年。リクルートスーツ集団の一人。
「やあ、二人とも。改めて自己紹介しよう。俺は安土 奏汰郎。アイシュワリヤの一人だ」
「……なんの用ですか?」
「別に対した用はない。俺はお偉いさんからラファスティとやらの代わりになるために派遣されただけさ」
ラファスティ。あれから姿を消した世話係を担っていた青年。
「あの野干オンナじゃなぁー……分かるだろ? まったく話にならんのを」
「ま、まあ」
尾先ヶ 間蔵が見当違いなものばかりをよこしてくるのは慣れてきていたが、正直言ってありがた迷惑であった。
「アイツは世間知らずすぎる」
「何か見返りが欲しいんですか、怪しすぎます」
「まさか。見返りなんていらねえよ。もうラファスティは帰ってはこない、それに至愚の見張りが手薄になっている。それだけで万々歳さ」
安土と名乗る青年は財布を取り出して、見せびらかした。
「焼肉屋にでも行くか? いつものな」
「わーっ! いいの?!」
「ちょっとパビャ子」
「行こうよ〜〜乎代子! 久しぶりの焼肉だよ!」
グイッと馬鹿力で手を引かれ、抵抗できずパビャ子に連れられる。
(ラフの代わりなんて居ない。帰ってこなくても、いないんだ)
日常を誤字脱字していたので直しました。




