第七回 帝国崩壊編(第十七章~第十八章)
●主な登場人物・勢力紹介●
※本ページには、『異世界艦隊日誌』第十七章から第十八章までの内容および結末に関するネタバレが含まれています。
※人物の所属や階級、立場は、原則として第十八章終了時点を基準としています。
※本ページでは、帝国崩壊編で重要な役割を担った人物を中心に紹介しています。名前のあるすべての登場人物を網羅したものではありません。
●フソウ連合●
●鍋島貞道
フソウ海軍総司令長官。フソウ連合の外交最高責任者。
崩壊へ向かう帝国の情勢を分析し、帝国海軍との秘密交渉を進める。
帝国海軍を全面的に信用しているわけではないが、親衛隊や急進的な反乱勢力が帝国全土を支配するより、規律を維持している海軍が北部地区を守った方が国際秩序を安定させられると判断した。
帝国海軍との間に秘密休戦協定を結び、物資、修理、支援艦艇を提供する。
その見返りとして、キナリア列島の譲渡とジュンリョー港周辺の期限付き使用権を求めた。
直接内戦へ介入するのではなく、支援と外交によって、自国にとって望ましい勢力均衡を作ろうとしている。
ソルシャーム社会主義共和国連邦が予想以上の速度で勢力を拡大すると、正式な譲渡を待たず、キナリア列島を先に確保することを決断する。
これまで他国の領土を積極的に奪おうとしなかった鍋島にとって、極めて珍しい強硬策だった。
しかし、フソウ連合とアルンカス王国を結ぶ補給・通信拠点として、キナリア列島は重要な位置にある。
理想や義理だけでなく、国家の安全保障を優先する現実的な判断もできる指導者へ成長している。
●東郷夏美
フソウ海軍大尉。鍋島長官の秘書官。
帝国情勢に関する大量の情報、秘密交渉、支援艦隊派遣などの事務を支える。
帝国が複数の勢力へ分裂していく中、鍋島が必要とする山本、新見、川見らを招集し、長官の判断を実務面から支援する。
表立って帝国政治へ関与する人物ではないが、フソウ連合の複雑な外交・軍事政策を長官の最も近くで支えている。
●ショウメリア公国・旧帝国海軍●
●ノンナ・エザヴェータ・ショウメリア
旧帝国海軍大佐。後にショウメリア公国の指導者。
かつてアデリナの副官として、彼女の感情的な判断を支えてきた「銀の副官」。
その正体は、帝国五大公爵家の一つであり、謀略によって滅ぼされたショウメリア公爵家の血を引く唯一の継承者だった。
父ミハイル・ショウメリア公爵は、帝位継承争いの中でグリゴリーの謀略によって殺害され、一族も失脚させられた。
ノンナは母の死後、自らの出生と父の死の真相を知り、ショウメリア家の名誉を取り戻すため行動を始める。
帝国海軍へ入り、長い年月をかけて仲間と影響力を増やし、国家崩壊の中で北部地区と海軍をまとめ上げた。
感情より現実を優先し、必要であれば王国やフソウ連合とも秘密交渉を行う。
アンネローゼを捕らえる機会がありながら、彼女がすでに「災厄の魔女」ではなくなったと判断し、共和国へ向かわせた。
帝国が崩壊すると、帝国という名と体制に固執せず、北部住民と艦隊を守るため、ショウメリア公国の独立を宣言する。
アデリナとは、主君と副官として長く行動してきたが、今後は異なる国家を率いる競争相手となる。
復讐だけでなく、自分を支えてきた人々と北部住民のために国を作ろうとする人物である。
●ビルスキーア・タラーソヴィチ・フョードル
旧帝国海軍少将。ショウメリア公国軍の中心人物。
ヒュドラ作戦で新見正人と戦った、冷静で優れた指揮官。
帝国崩壊編では、ノンナとともに北部地区と帝国海軍の統制を維持する。
親衛隊と中央政府が信用できないと判断し、王国とフソウ連合へ秘密交渉を行うことを支持。
交渉担当者の選定や、アンネローゼを乗せた雑草号への対応にも関わる。
ショウメリア公国独立後も、軍事と政務の両面からノンナを支える。
ノンナの血筋だけに従っているのではなく、彼女の能力と目指す未来を認めている、最も重要な協力者の一人である。
●ダーリア・ユーリエヴィチ・ドロウ
帝国海軍からフソウ連合へ派遣された交渉担当者。
法律と交渉に精通した、決断力のある女性。
フソウ連合との秘密休戦・支援交渉を担当する。
交渉中に皇帝暗殺の報を受けても、本国の命令を待たず、交渉を継続した。
帝国政府が崩壊する可能性を理解し、帝国海軍と北部住民を救う機会を優先したためである。
鍋島の穏やかな態度と、帝国側に有利すぎる条件へ不気味さすら感じながらも、最終的に協定を締結する。
国家が混乱する中でも、自らの判断で外交を成立させられる、帝国側に残された優秀な人材である。
●レナート・スヴャトスラーフ・ミッセルン
帝国海軍側の密使として、ウェセックス王国との交渉を担当した商人。
ビルスキーア少将の縁者でもあり、帝国海軍と王国を結ぶ非公式な外交経路となる。
皇帝暗殺後はいったん本国への確認を優先したが、その後も交渉を進め、王国と帝国海軍の休戦と協力関係を成立させる。
軍人ではない立場と商人としての人脈を利用し、帝国海軍の生き残りへ貢献した人物である。
●新シルーア帝国・旧親衛隊●
●アデリナ・エルク・フセヴォロドヴィチ
元帝国海軍中央艦隊司令長官。後に新たなシルーア帝国皇帝。
「黄金の姫騎士」と呼ばれた、帝国屈指の海軍指揮官。
ティルピッツ喪失とヒュドラ作戦の敗北によって失脚していたが、親衛隊長官エリクの要請を受け、教国艦隊迎撃のため復帰する。
プリンツ・オイゲンと新造駆逐艦を率い、教国艦隊を誘導・分断し、親衛隊の装甲艦部隊と協力して壊滅させた。
ノンナを失った後も、以前ほど感情任せに突進せず、自ら考え、部下の意見を聞きながら指揮するようになっている。
モッドーラ軍港が孤立すると、最後まで戦うことではなく、将兵、民間人、物資、艦艇を西部へ脱出させる「エスケープ・プラン」を立案する。
軍港を失っても、未来のための人と力を残すことを優先した。
撤退途中、ノンナ率いる艦隊と対峙するが、一発も撃たずに通過する。
その出来事によってノンナへの未練を断ち切り、彼女を対等な敵として認める。
ラッサーラでは住民の支持を受け、人々を導く喜びと責任を知り、西部地区の皇帝となることを受け入れる。
艦艇と戦いだけを愛していた女性が、国家と民衆を背負う指導者へ変化し始めている。
●ゴリツィン大佐
アデリナの新たな副官。
ノンナほどの洞察力や経験は持っていないが、アデリナの指揮を支えながら成長していく。
モッドーラからの撤退計画では、燃料、艦艇配置、敵に発見される危険などを指摘し、アデリナと作戦を調整する。
以前のアデリナなら反論と受け取って怒った可能性がある意見にも、現在の彼女は耳を傾ける。
アデリナの変化を示すと同時に、新しいシルーア帝国を軍事面から支える人物である。
●ドミートリイ・ロマーヌイチ・プルシェンコ
旧帝国親衛隊上級大将。西部地区の統治責任者。
親衛隊に所属しながら権力欲がなく、倫理と規律を重視する穏健な軍人。
親衛隊長官エリクからは扱いにくい人物として中央から遠ざけられ、西部地区を任されていた。
しかし、中央政府の干渉が少なかったことと、彼の堅実な統治によって、西部地区は帝国内でも比較的安定した地域となっていた。
帝国中央が崩壊すると、自分には人々を惹きつける名声や野心がないとして、指導者になることを拒む。
代わりに、国民的人気と軍事的実績を持つアデリナを迎え、新国家の皇帝となるよう求めた。
自分が表に立つより、適任者を支えることを選ぶ忠実な軍人である。
●エリク
帝国親衛隊長官。
皇帝カルルと宰相グリゴリーの権威を利用し、帝国の実権を奪おうとした人物。
反乱や宗教問題を口実に親衛隊の権限を拡大し、帝国魔術師ギルドを利用して新たな艦艇を手に入れる。
皇帝暗殺後は、事件の責任を東部地区とドクトルト教国へ押しつけ、中央政府を完全に掌握しようとした。
しかし国民の支持を得ようとはせず、恐怖と暴力だけで国家を支配しようとしたため、親衛隊は急速に孤立する。
社会主義共和国連邦の宣言後、各地の親衛隊部隊は次々と離反・敗北した。
帝都から難民に変装して逃亡したものの、最後は規律を失った親衛隊兵によって殺害される。
自ら作り上げた暴力装置に呑み込まれた、旧帝国崩壊を象徴する人物である。
●ソルシャーム社会主義共和国連邦●
●アレクセイ・ユーリエヴィチ・ハントルン
帝室の血を引く、帝国東部の指導者。
皇位継承権を放棄し、長く一市民・都市責任者として東部の人々と生活してきた。
親衛隊による虐殺と圧政から東部住民を守るため、中央政府への抵抗を開始する。
民衆からの信頼が厚く、東部地区をまとめる象徴的な存在となる。
ただし、新国家の理念や政治体制については、部下であるイヴァン・クラーキンの影響を強く受ける。
国民を守るために始めた抵抗運動が、やがて自分の想定とは異なる社会主義国家へ変化していく可能性を抱えている。
●イヴァン・ラッドント・クラーキン
アレクセイ・ハントルンの部下。新国家の思想と宣伝を主導する人物。
帝国の身分制度、貴族、皇帝、親衛隊を否定し、すべての人間が平等に富を得られる国家を作ると訴える。
その主張は、貧困に苦しむ民衆へ急速に広がり、帝国全土で反乱や離反を引き起こした。
ソルシャーム社会主義共和国連邦の建国宣言を主導し、新国家の中心人物となる。
表向きは平等を掲げているが、自らの権力と思想への自信を強めており、やがて一党独裁的な指導者となる危険性を持つ。
旧帝国の圧政に代わる、新たな独裁の芽を象徴する人物である。
●ドミートリー・イヴァーノヴィチ
国民義勇軍第三軍団の指揮官。
旧親衛隊部隊や民兵をまとめ、帝都やモッドーラ攻略に参加する。
一般住民や難民には比較的寛容な命令を出す一方、戦闘では兵力差を利用した攻撃を行う。
ただし国民義勇軍は急造組織であり、部下や各部隊を完全には統制できていない。
新国家の軍隊が、旧帝国軍とは異なる規律ある組織になれるかどうかを問われる立場にある。
●帝国魔術師関係者●
●アンネローゼ
元帝国魔術師。かつて「災厄の魔女」と呼ばれた女性。
他人の心を操り、ウェセックス王国やフソウ連合を内側から崩そうとした。
イタオウ地区で重傷を負い、密輸船雑草号に救助されたことで人生が変わる。
魔力を失い、自分が弱者となったことで、これまで理解できなかった他人の優しさや命の重さを知る。
親衛隊からも命を狙われ、帝国海軍には捕捉されるが、ノンナによって解放される。
共和国へ渡った後、自らの罪を船長へ告白し、それでも受け入れられたことで結婚を決意する。
アンネローゼという名と魔女としての立場を捨て、普通の女性として生きる道を選んだ。
帝国崩壊の中で、国や権力ではなく、一人の人間として再生した人物である。
●グリゴリー・エフィモヴィチ・ラチスールプ
元帝国宰相。強力な魔術師であり、アンネローゼの祖父。
皇帝カルルを擁立し、長年にわたって帝国政治を裏から支配してきた。
ショウメリア公爵家を謀略によって失脚させ、ノンナの父を殺害した張本人でもある。
皇帝暗殺、魔術師ギルドの崩壊、アンネローゼの離反によって、自らが積み上げた権力と野望をすべて失う。
長年の過労も重なり倒れ、宰相を辞任。
帝国の事実上の支配者だった老人は、帝国崩壊を止める力も、動機も失っていく。
彼が過去に行った謀略は、ノンナによるショウメリア公国建国という形で、自らの帝国を分裂させる原因となった。
●雑草号関係者●
●雑草号の船長
共和国へ密輸品などを運ぶ雑草号の船長。
海上で瀕死のアンネローゼを救助し、彼女の正体を知らないまま船員として受け入れる。
後にアンネローゼから、魔女として犯してきた罪を告白される。
それでも過去だけで現在の彼女を判断せず、自分が知っているアンネローゼを妻として受け入れた。
帝国や魔術とは無縁の一人の船乗りでありながら、その無条件に近い信頼によって、災厄の魔女を一人の人間へ戻した人物である。
●雑草号
小型の密輸船。
軍艦でも国家の使節船でもないが、重傷のアンネローゼを救助し、彼女へ新たな人生を与える舞台となる。
帝国親衛隊や帝国海軍から追跡を受けながらも、船長と船員たちはアンネローゼを見捨てなかった。
国家や大艦隊が崩壊と戦争を生み出す一方、名もない小さな船の人々が、一人の女性を救ったのである。
●ドクトルト教国●
●イオーアンネース総主教
ドクトルト教国の最高指導者。
親衛隊による宗教弾圧と東部住民への虐殺を非難し、東部を救うための軍事介入を決定する。
重戦艦を中心とする大艦隊と、三万名の精鋭部隊を帝国へ派遣した。
しかし親衛隊の新戦力とアデリナの指揮能力を過小評価し、艦隊と兵力の大半を失う。
人々を救うという大義と、教国の影響力を拡大したいという政治的思惑が混在しており、その判断によって教国へ甚大な損害を与えた。
●主な国家・勢力●
●旧聖シルーア・フセヴォロドヴィチ帝国
かつて世界最強とも恐れられた大国。
皇帝、宰相、親衛隊、帝国海軍、貴族、魔術師が、それぞれ別の思惑で行動し、統一された国家運営ができなくなっていた。
皇帝暗殺、宰相辞任、親衛隊崩壊によって中央政府は消滅。
第十八章終了時点では一つの国家として存在せず、三つの後継国家へ分裂している。
●ショウメリア公国
ノンナ・エザヴェータ・ショウメリアを指導者として、帝国北部地区と旧帝国海軍が建国した国家。
旧帝国の悪評と失敗から距離を置くため、帝国という名称を捨てた。
フソウ連合、ウェセックス王国と秘密休戦・協力関係を結んでいる。
強力な海軍を持つ一方、艦艇修理、物資、産業復興では外国の支援を必要としている。
ノンナの血筋、帝国海軍の組織力、北部住民の支持を基礎とする国家である。
●シルーア帝国
西部地区がアデリナを皇帝として建国した、旧帝国の後継国家。
国号から「聖」と「フセヴォロドヴィチ」を外し、過去の帝国とは異なる国家であることを示そうとしている。
旧親衛隊のうち比較的規律を保つ西部部隊と、アデリナがモッドーラから救出した艦隊・将兵を基礎とする。
謎の「連盟」から支援を受けており、ショウメリア公国や連邦との対立が予想される。
●ソルシャーム社会主義共和国連邦
帝国東部の反乱を起点として建国された社会主義国家。
皇帝、貴族、身分制度を否定し、すべての人間へ平等な富と権利を与えることを掲げる。
その理想は帝国全土の民衆から支持され、中央・南部へ急速に勢力を広げた。
一方、国民義勇軍による虐殺や略奪、イヴァン・クラーキンへの権力集中も始まっている。
主要な強国からは警戒され、その思想を植民地や貧困地域へ広めることで、国外にも影響を与えようとしている。
●帝国親衛隊
皇帝直属の軍事組織。
長官エリクの下で中央政府の実権を掌握し、魔術による新造艦艇も手に入れた。
しかし国民の支持を得られず、恐怖、弾圧、虐殺だけで帝国を維持しようとしたことで、社会主義共和国連邦の宣言後、各地で急速に崩壊する。
西部のプルシェンコ部隊やアデリナ艦隊は新シルーア帝国へ移行したが、それ以外の多くは壊滅、離反、軍閥化している。
●帝国海軍
かつて帝国の主力軍事組織だった海軍。
敗戦、軍港破壊、中央政府との対立によって弱体化したものの、ノンナとビルスキーアの指揮によって北部地区では規律を維持した。
王国・フソウ連合との秘密交渉を経て、旧帝国から離脱。
第十八章終了時点では、ショウメリア公国海軍へ移行している。




