第329話 改修 x 強化
タルマンがだいぶ傷ついてしまった。それに不具合を起こしたことが気にかかる。
すぐにでも調べたいところだったがまずは獲物の検分からだ。
操縦席から降りると遺体に近づいて状態を確認する。
まあまあ状態良く倒せたな…
奇しくも回復の間を与えることになったので毛並みが思いのほか良い。殴りまくったため千切れている毛もあるが全体としてはしっかりと長めのさらさらした毛がみっしりと生えていて高く売れそうだ。
首にはジュジュの噛み痕がついていた。いつものようにここから電流を流して仕留めたようだ。
「ジュジュ… 仕舞うよ 」
《・・・・・ 》
ジュジュが降りるのを確認してから亜空間に引き込む。とりあえず拠点に戻ることにした。
~~~~~~~~~~~~~~~
早速、不具合を起こした原因を突き止めたいところだがタルマンの見た目は結構ボロボロになっている。
特に腹部の装甲は脇の辺りから中心に向かって大きな爪痕が付いていて開けられた隙間から内部が覗く。中心にはフリーズを起こした際に蹴り飛ばされて出来た大きなへこみがある。
塗装の剥がれは相手とぶつけ合っていた前腕部装甲が一番ひどいが、よく見ると全身至る所に細かな剥がれがあった。
足回りは歩いている時にも地面と擦れて徐々に剥がれていくし飛び石でも削れる。戦闘で激しく動いていたら大した理由がなくともいつの間にか傷は付いてそうだ。
もっと良い塗料があれば保ちそうな気がするが実戦用ロボのための塗料なんて開発される予定はなさそう。
激しい使い方しかする予定がないからな… 戦うロボの宿命か…
亜空間から修復用に魔鉄のインゴットを取り出すと鉄術で傷を埋めていく。へこみも直して元の形を取り戻したら剥がれた部分に塗装をし直して修復は完了した。
さて… 不具合の原因を突き止めるか…
操縦席に乗り込んでハンドルを握りシーケンサーを降ろす。まずは状況を再現しなければならない。
二度の動作不良から出力を上げすぎると不具合が発生すると当たりをつける。それで間違いはなさそうだが、本当にいつでもそうなるのか試す必要があった。
魔力圧を徐々に上げていく。
どうなるかな…
やがて一定以上の出力に達すると動かなくなった。戦闘中とかは関係ないようだ。一度そうなるとしばらくは命令を受け付けない状態が続く。
何度か試してみると、何もしない方が回復が早いと言うことがわかった。魔力の影響を受けて不具合が起きていると結論づける。
最初の不具合がすぐに直ったのは相手の攻撃により魔力が相殺されて消えたからなのだろう。
その後も何度かやってみてどうやら制御系の方が先に不具合を起こしているようだとわかった。
出力を変えてやってみると立ち直りまでの時間が二段階ある。より大きな出力だと運動系まで不具合を起こしてその分時間がかかるのだろうという予想からだ。
しかし、何度試してみても根本的な原因の特定には至らなかった。
魔力がオーバーフローを起こしていることを疑って、回路を取り出して直接魔力を流してみたがどうにも魔力量に因らず正常に動いているみたいだった。
魔力が関係しているのは確かだが直接的には関係していない。そんな奇妙な現象が起きている。
う~ん、わからん…
ちょっとコアで調べてみるか…
再び座席に乗り魔力を込めてみる。俺の魔石と肉体で動かしているところをコアが横からモニタリングするような形だ。タルマンに起きているあらゆる変化を残さず観測していく。
徐々に出力を上げていき再び例の現象が起きる。
なるほど…… そういうことか…
これはコアの力がなければなかなか判らなかっただろう。少なくとも魔力を観測する装置が欲しい。
原因は機体から発せられる魔力波にあった。フレームに魔力を流して強化していくと材料の魔鉄から魔力波が生じる。それが一定以上の強さになると魔導回路に組み込んだ魔石が信号として受け取って不具合を起こす。
魔力波がノイズになっているということだ。
何とかしないとな…
相手から強力な攻撃を受けた時にもこの現象が起きる可能性がある。魔力を込めて物体を殴った時、衝撃波と共に魔力が伝わって魔力波が生じるからだ。
今後、パイロットの安全のために装甲を強化して耐えられるようになったとしても、機体が動かなくなったのではどうしようもない。
どうするか…?
方法論としては魔導回路を何かで覆ってノイズを遮断するか、魔石にノイズと正規の信号を分けるような回路を組み込むことの二通りが考えられる。
両方やってみるべきなんだろうけど魔石回路をいじると何かの拍子に正規の信号まで受け付けなくなる可能性もある。魔石に関してはまだまだ不明な点があった。
とりあえずはノイズの遮断のみでやっていくことにする。
どんな素材がいいか…
魔力が通しにくい素材としては石やガラスだ。亜空間の中でそれらを試していき遮断性能が高い高密度セラミックを作り出すことに成功した。
これを使用しタルマンに搭載されている全ての魔導回路を覆っていく。魔石の形状とそれらを繋ぐケーブルに合わせて成形して挟み込む。これでぴっちりと覆うことが出来た。
早速、その効果を試すことにする。
機体の様子を確認しながら出力を少しずつ上げていった。やがて、不具合を起こしていたラインまで上昇する。
ここまでは大丈夫…
問題なく動かせた。さらに出力を上げていき動力系が不具合を起こしただろうラインを越える。それでも機体は通常通りの動きが出来た。
ちまちまやる必要はないか…
大丈夫そうなので一気に最大出力まで引き上げる。実戦なら出力の急激な変化が起こるのが当然。それを想定してより過酷な状況を試してみる。
急激に上げ下げしてみたり、それを行いながら実戦を想定して機体を激しく動かしてみる。
それでも不具合を起こすことはなかった。バーニアの制御もうまく出来ている。
これでとりあえずは完成だな…
この世界にふさわしいロボット、その基本形態が出来上がったという実感がある。
あとはフレームを強化したり外部装備を開発して取り付けるといった具合か…
もっと大きくて強力なロボも作りたい… しかし、そこまでやると目立ちすぎるな… 流石に材料の調達とかに無理が出てくる。
亜空間内でこっそりやっておくこととしよう。コアもあれから回復してきて魔力にもだいぶ余裕が出てきたことだし…
~~~~~~~~~~~~~~~~
ジョーを狩った翌日はタルタインに戻ることにする。戻ったら工房でタルマンの強化を行う予定だ。
その際、ジョーを解体してギルドに持っていくか丸ごと持っていくか悩むことになった。どうやって毛皮を剥ぐのが最善なのかわからなかったからだ。
皮の質を見極めて刃を入れなければ価値が下がるような気がする。俺にそれが出来るとは思えない。
タルマンを上手く使えば丸ごとでも運べそうな気がした。梱包のやり方を考えればいけるだろう。
丸ごと運ぶと決断し梱包を開始する。木で頑丈なパレットを作るとその上に乗せてロープで固定した。
それをタルマンに乗って持ち上げると森の中を進んでいく。途中の魔物はジュジュがいるのでどうにでもなる。だが、ジョーの体高は五メートル、幅は二メートル近くにも及ぶ。非常に運びづらかった。
なんとかギルド拠点までやってくると解体場に運び入れて受け入れ手続きが完了する。解体師は随分とやる気を出している様子だった。苦労をした分の甲斐はあった様に思う。
もっと前からこうしてやれば良かったか?
木術を使ってパレットを強化すればタルマンがなくとも運べたような気がする。
いや、それはそれで大変か… 同時に自分の強化もしなくてはならない。やはりタルマンは必要だ。
それからハイエースを運転して家まで帰った。しばらくは街での生活をしながら工房での作業をすることになる。
さて… 開発を始めるとするか…
まずは装甲の強化を考えてみよう。
今回、ジョーの攻撃により結構な損傷を受けた。あと一歩で戦闘不能になっていたところだ。ケーブルが集中する前面は強化しなければならない。
魔鉄の質を上げるのが手っ取り早いがそんな上質な魔鉄が流通しているはずもない。上から追加で装甲を加えるのが現実的な手段だろう。交換可能なものにすれば整備性の向上にも繋がる。
腹部と前腕部に取り外し可能な追加装甲を取り付けて完了だ。
次に、拡張装備を考えてみる。
殴り合いだけでは魔物が使ってくる魔術に対応するのが難しい。様々な武器を交換して使っていくのがいいような気がする。
その方が格好良いしな…
《それが主眼なのではないですか? 》
かも知れない… だが、それがいい
俺の言葉にエンジュは黙ることになった。
理屈じゃないんだよ、理屈じゃ…
まあ、まずは盾でも作るとしよう。曲面を持つタワーシールドを作り出した。これで相手の攻撃を受けたり逸らしたりしつつもこちらの動きを隠したりも出来る。
盾の裏にはコンバットナイフとメイスを設置出来るようにした。これで近接戦闘にバリエーションが生まれる。
そしてやはり遠距離武器が欲しいな。牽制程度にしか使えないが、あれば全体が引き締まる気がする。
《ちょっと何を言ってるかわからないですね… 》
バズーカを作るか…
エンジュを無視した。説明したところでわかるまい…
タルマンが手で持って扱えるバズーカを作り出し持たせてみる。大きな筒状のものを携えた姿はよりいっそう無骨さが増して威圧感を醸し出すようになった。
ほら、引き締まっただろう?
《言わんとするところはわかります… ですが…なんでしょう 》
少しでも伝わったのなら良しとする。しかし、バズーカで重要なのは弾の方だ。
火薬は割と普通に手に入る。それを弾頭に詰めて当たった瞬間に爆発するような仕組みにする。
弾を飛ばす方法はどうしようか?
バーニアで培った技術を利用して液化燃料で飛ばす仕組みにしてみよう。弾頭の形状や羽根を工夫して真っ直ぐ飛ぶように設計した。
射程距離は三百メートル程度。そのぐらいあれば十分だろう。
装弾数は三発。打ち尽くしたらバズーカ本体を捨てて接近戦に持ち込む。爆発に驚いているスキをついて一気に勝負を決める。そんな戦術が想定される。
装弾数は一発でも良かったかも知れないな… まあ、多い分には問題ないか…
他には煙玉のようなサポートアイテムを扱いやすくしておきたい。あの時は俺が手動で使ったがそれだと格好良くない。もっとスタイリッシュに決めなければダメだ。
《……そうですね 》
しかし、装備させる場所がないな…
腕や足と干渉しない位置にしなければならない。しかし、それだとけっこう場所が限られる。
機体の前面では攻撃を受けて破壊される恐れがある。かと言って背面にするとバーニアと干渉する。ほとんどの位置で噴射の影響を受けてしまう。
……胴体の内部に入れ込むとしようか
それならば戦いの最中でも、手動での弾の補充を可能に出来る。利便性は良さそうだ。見た目の格好良さには繋がらないがダサくもならないだろう。
本体バーニア用の燃料タンクの大きさと位置を調整してスペースを確保すると特殊弾の発射装置を設置する。前面装甲に穴を開けて発射口を通した。穴の部分を補強して完成する。
穴の数は四つ、射出機も四つだ。四種類の弾をあらかじめ用意することが出来る。操縦者が手動で入れ替えることでもっと多くの種類を使うことも可能だ。
武装が増えた… 発射口が機体についたことでより引き締まったな…
しかし、まだ少し物足りない感じがする。考えた結果、上腕の部分に武装を追加することにした。戦車とかについているような榴弾発射装置を付ける。
三つの筒が縦に列なったような、おなじみの装置を取り付けると兵器感が増してぐっと引き締まった。
これにも装甲のような効果があって攻撃を受けると破損することで衝撃を和らげる機能がある。
追加装甲の感じと相まって人型の戦車と言った雰囲気を醸し出していた。
ひとまずタルマンの改修はこれでいいだろう。実戦テストをしなければわからない問題もあるだろうがいい感じにまとまったんじゃないだろうか。
自画自賛してみる。
だが、武装を付けたことで新たな課題も出てきた。予備の弾薬を含めてハイエースで全てを一緒に運ぶには重すぎる、大きすぎる。
魔境には拠点があるから誤魔化しがきくだろうが今後のことを考えると専用の運搬車両があった方がいい。
俺の目的を考えたらある程度人目につくように活躍させなければならないのだからな。
ということで専用トレーラーを開発していくことにする。ロボにこう言った物はつきものだ。
こちらにも大型トレーラーは存在しているので大きく分厚いタイヤは売っている。それを購入して改造して使えば出所の証明にもなるだろう。
いや、いっその事、市販のトレーラーを買ってそれを改造してしまうのがいいんだろうな…
帝国の方がレイゼルトよりそこらへん厳しそうだから既に出回っている物を使っていった方が審査は通りやすそう。
方針が決まると早速行動を開始した。




