表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー  作者: 井上 斐呂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
328/333

第328話 X ジョー

シロクマ? そんなにかわいいものじゃないか…

《シロクマも野生で出会ったなら可愛くないですよ 》

そりゃそうだ


脳内でエンジュと漫才をするが俺には相手の姿が見えていない。ジュジュにも位置がわからなくなったようだ。あまり余裕はない。


だが、俺も空術を使えるんだよ…


空気中に魔力域を広げていき掌握していくと空間内の相手の位置がわかるようになる。しかし、相手も空術使い。同じように領域を広げていきキャンセルを仕掛けてきた。


そう来るっ…よなっ!


空中で魔力域同士の押し合いが始まる。互いに全域を掌握しようと圧を高めていくがほとんど均衡したまま睨み合いになった。


ならばと地中でも領土紛争を仕掛けてみるが相手も土術は得意らしい。そちらでも力の均衡が開始された。


しばらく状況を維持していると諦めたのか領域を引っ込めていく。俺もそれに習って納めると相手は迷彩術を解いて姿を完全にその姿をさらしてきた。


先ほどチラッと見た通り真っ白な熊だった。色以外はオーソドックスなヒグマと言った感じだ。がっしりした体格はそのパワーを誇っているかのよう。接近戦に特化しているように思う。


体長は五メートルほどで魔力に比べてやや小ぶりなように感じる。それでも俺を見下ろしてくる様は壁のようだ。


迷彩術で察知されないように接近して不意を突き、そこから力で以て一気にねじ伏せる。そんな戦術を得意としているのだろう。


それが破られた今、果たしてどんな戦術を取ってくるのか? こうして向き合っている以上、何かあるはずだ…


警戒しながら出方をうかがっていると威嚇が飛んできた。威嚇合戦の始まりだ。


こちらもタルマンに魔力を流して大きく見せていく。再び均衡状態が続くと今度はあっさりしたものでふっと魔力の波動が消えた。


そこから瞬く間に熊の姿が変化する。白かった毛並みに色が付き輪郭が周囲に溶け込むようになった。


迷彩色か…


茶色に緑、黄土色と斑に組み合わせてカモフラ柄に仕立て上げる。その姿は鍛え抜かれた兵士のようだ。サバイバルナイフは持っていないが鋭い鉤爪にはそれ遙かに上回る威力がある。


気は抜けないな…


タルマンの腕を操作してボクシングのようなファイティングポーズを取らせると相手は正面から突進を仕掛けてきた。それに対してこちらも真っ直ぐに走り出す。


力比べはこちらも望むところだ。


衝突をすると体重で劣るこちらが弾き飛ばされそうになった。だが、その瞬間に背中側のバーニアを吹かして体勢を持ち直させる。


―ゴォッ…!


減速した相手に再度、加速して正面からぶち当たる。今度はタルマンの方が上回った。


そのまま押し込んでいって背中を巨木に打ち付けてやる。押し潰すようにタルマンを腹部にめり込ませてやってから少し後ろに後退すると拳を連続して繰り出していく。


俺の拳に対して相手も腕を振るって去なしながら爪による一撃を加えようとする。至近距離での応酬が始まった。


熊の鋭い爪は時折、タルマンの腕部装甲に爪痕を残すが薄皮一枚で済んでいる。ほどんど塗料を削り取るだけで基材に損傷はない。


逆に俺の攻撃は的確に相手の体に突き刺さっている。先ほどの体当たりの衝撃が尾を引いているのだろう。熊の腕を掻い潜って腹部に拳がめり込んだ。


しかし、苦しそうに口を開けるがそれだけで終わる。一瞬で回復させると何事もなかったかのようにこちらの攻撃に対処してきた。


やるな…

だが、押しているのはこちらだ…


さらに攻勢を強めようとした時だった。不意に熊の姿が消える。


―なにっ!

―ドゴッ!


次の瞬間、タルマンを衝撃が襲い後ろに吹き飛ばされた。


いきなりの出来事に手が止まってしまった。その隙を突かれて攻撃を受けたらしい。


そのまま吹き飛ばされる勢いに乗り、地面を蹴って距離を取る。索敵術を使い相手の位置を探ると同時に着地して体勢を整えた。


すると、こちらが位置を把握する前に相手の方から迷彩術を解いて姿を現してくる。位置は変わらず巨木を背にしたままだ。こちらも探索術をキャンセルする。


にらみ合いが始まった。


息を整えたいという思惑もあったのだろう。主にこれからどう攻めたらいいか考えたいのもありそうだ。


ここからどう来る? ジョー…

《ジョー? 》

コイツの名前だ。G.I.ジョーから取った。

《G.I.ジョー… アメリカ発のミリタリー系アクションフィギュアですね。1964年にハズブロ社から発売されました。よく知っていましたね 》

そうだったのか、そんなに詳しくは知らなかっ…


ジョーが動き出した。真っ直ぐこちらに接近してくる。その姿は空間に溶け込むようで視認しづらい。空術で輪郭をにじませて風景と一体化させているようだ。


ならばと索敵術を仕掛けるが対抗してきて位置がぼやける。


目視の方がましか…


そのまま正面から接近戦に持ち込まれる。ジョーが繰り出してくる爪の斬撃を後退しながら腕部装甲で受け止め去なしていく。


チッ…やりづらいな…


先ほどと違って今度はこちらが劣勢を強いられるようになった。相手の攻撃を眼で捉えにくいことでこちらの動きがワンテンポ遅れる。精度も悪い。


…どうするか?


防御の合間に索敵術を仕掛けていったがこれも的確にキャンセルしてくる。そして…


消えたっ!


こちらが反撃の拳を繰り出しジョーがそれを躱した瞬間、フッと姿が掻き消えた。


どこだっ!?

―ガキィッ!!


索敵術を使う間もなく吹き飛ばされる。衝撃でくるくると回転しながら宙を舞っていく。


しかし、幸いなことにタルマンが傷ついても俺は無傷だ。飛ばされながらも索敵術を展開して相手の位置を割り出して特定してやる。


同時に機体を制御して足から着地し体勢を整える。


見ればジョーは迷彩術を解いてこちらを攻撃した位置で立ち止まっている。警戒して深入りを避けたようだ。追撃は来なかった。


牽制は成功した…


しかし、攻撃を受けたタルマンの腹部は大きな損傷を受けている。咄嗟に俺自身を守るためにガードを上げたため、がら空きになった腹を狙われた結果だ。


装甲を貫通して引き裂かれ内部を掠めている。ケーブルや燃料タンクまでやられていたらマズかった。タルマンを捨てて戦う必要があっただろう。


全体強化が間に合って良かった…


もしもガードを上げていなかったらヤツは直接俺を狙っていたと思う。その場合の方が深刻だったかも知れない。死にはしないだろうがそのまま牽制出来ずに追撃を許すことになっただろう。


ジュジュがサポートに入ってくれるだろうが俺は回復に徹して立て直しに時間をかけざるを得なくなる。


やはり、パイロットの安全を守るのが一番か…


ロボットの方は最悪使い捨てでいい。それこそが機械の役割だ。


設計思想のヒントになりそうなものを掴みつつもこの場の戦闘は何とかしなければならない。可能であればタルマンで狩りたいところ…


そのためにも相手の戦術を破らなければならない。


………これを使ってみるか


ジョーの方から仕掛けてくるような魔力の膨らみを感じた。だが、機先を制するため、俺の方が早く動く。


こちらから駆け出して正面から接近する。対して相手はその場で迷彩術を使用して姿を消した。撹乱戦術を取る気でいるようだ。


―それは好都合


俺はタルマンのヘッドライトを付ける。電流を操って一気に強い光を照射した。一瞬の光の後にすぐに消してまた付け、繰り返す。


―パパパパパ……


フラッシュが連続して相手の姿が浮かび上がってきた。連続する光の変化に魔術が対応出来ていない。丸見えとは言い難いが見えている。


そこだっ!

―キュィィィィィ……


見えるようになった相手にドリルパンチをお見舞いする。思いきり胸の部分に突き刺さり仰け反らせながら吹き飛ばした。完全に意表を突かれた形だろう。


それでも後ろ足で踏ん張って体勢を維持しようとする。反撃をしかけてくる気だ。


だが、そんな隙は与えない。


バーニアを吹かして前進、肉薄すると怒濤のラッシュを叩き込む。


振り抜かれる拳からは衝撃が伝わってくる。手応えは十分。骨を軋ませ内臓を揺さぶる。俺の魔力が相手の魔力を削っていった。


このまま押し切るっ…


留目に入るために込める魔力を増大させていく。機体は限界ギリギリまで魔力で満たされていった。


―これで終わりだっ!


最後の拳を心臓に向けて放つ。これで死ななくともジュジュが駄目押しに入るだろう。勝利は確定していた。だが…


んおっ?

―プスン……


突然動かなくなった。


なっ…なぜだっ…


慌てて中枢回路に命令を送ってみるがうんともすんとも言わない。ハンドルを握る手から魔力を強めたり弱めたりして刺激をしてみる。


しかし、動き出すことはなかった。


―ベコッ!

「うおっ! 」


衝撃を受けて吹っ飛ばされる。


動きを止めたタルマンにジョーの放った蹴りが炸裂した。爪で切り裂かれ弱くなっていた腹部装甲が大きく凹まされ背中から地面に落下する。


クソッ… どうなっているんだ!?


降りて戦う… その選択肢も考えたがジョーは回復に専念するようだ。多少の時間はある。


立て直せるか?


その合間に不調の原因を調べようかと考える。再び魔力を流していった。恐る恐るといった感じにちょっとずつ出力を上げていく。するとどうだろう…


あれ…? 動くぞ…


すんなりと各部の魔導回路は決められた仕事を熟していき設計通りに全身の関節は動き始める。


バーニアを吹かしてすぐに倒れた状態から起き上がるとジョーと向かい合う。ちょうど回復を終わらせたようだ。


また睨み合う形になる。


同じ手は通じないかも知れないがそれは向こうも同じだろう。迷彩術は使ってこない…そんな雰囲気がある。


果たして予想通り、ジョーは魔力を増大させていった。まったく隠す気のない魔力。強力な魔術の前段階に当たる。


小細工は通じないとみて全力で叩き潰しにくるつもりなんだろう。


正しい判断だ…


対するこちらは魔力全開では戦えない。原因は良くわからないが出力を上げすぎると不具合を起こすことで間違いなさそう。


相手もそのことを理解しての結論だろう。


(いちじる)しく不利… だが、こういう時こそ操縦技術が試される。


タルマンを降りて戦うのが最善なんだろうがそれは野暮というもの。最後までこいつと戦う。


まあ、勝算はあるしな…

《負けは嫌ですからね 》

ホントにな… まだ、意地では死ねない


ジョーの魔術は完成したようだ。俺が使う風神装のような魔術… 膨大な空気を操って纏い、自在に使う。移動、防御、攻撃全てを限界まで強化する魔術だ。


多様な使い方が出来る。様々な戦術が考えられる。だが、こいつの性格からすると近接戦闘に最大限利用してくるはず…


予想して相手の出方を注視しながら待つ。


そして…


―おぉっ!


爆発したような轟音を上げながら物凄い勢いで巨体が飛んできた。一直線に俺へと接近してくる。横に跳んで躱すとグンと方向を変えて再び飛んできた。


チッ…


バーニアを点火。出力を制御して機体の加速を強化する。小刻みな動きでジョーの突撃を躱していく…が…


キツい…


こちらは避けるタイミングを測り直前で吹かして直線軌道で避ける。だが、魔術の方が圧倒的に機敏で滑らかな動きだ。おまけに躱す度に魔術の精度が上がっているのか追尾性能が上がってきている。


ぬおっ!

―ガッ!


上腕部を爪が掠めた。塗料と金属の粉が飛ぶ。このままではいずれ直撃を喰らう。


いくらタルマンで質量が増えているとはいえ、相手の方が質量は上。さらに魔術で強化されている。正面から直接迎え撃ってぶち当たれば確実に当たり負けるだろう。


ならばどうする?


考えた末、一つの方策に辿り着いた。


やってみるか…


相手の突進を大きく飛び上がって躱す。それと同時にバーニアを最大推力で吹かした。


ロケットのような轟音を上げて機体はぐんぐんと上昇していく。目の前には青空が広がっていた。


加速と共に高度は上がる。このまま宇宙まで行ってしまうような錯覚を覚えたがそんなことはない。その前に燃料が尽きてしまう。


燃料メーターは残り半分ほどを指していた。一時(いっとき)の空中戦をやるには十分な量だ。


今は地上四百メートルほど。高度も十分に取れている。ここら辺で加速を止めた。ジョーも俺を追って上昇してきているようだ。魔力の接近を背中に感じる。


小さくバーニアを吹かして地上を向く姿勢になり下界を見渡す。


真っ直ぐこちらへ上昇してくる相手の姿を捉えると高度を維持して待ちの姿勢を取った。


そろそろか…


十分に距離が詰まってきたところで俺は操縦席に備え付けていた煙玉に点火させて周囲一帯を白煙で覆い尽くした。用意していた玉を全て使い濃厚な煙で包み込む。


大盤振る舞いだ…


それなりの値段はする。十分に元は取れるが抵抗のある作戦だ。理由がない限りやりたくはなかった。


視界が効かない中ではまず音を頼りにすることが考えられる。常時バーニアを吹かしているこちらが不利にも思えるが相手も膨大な大気を纏っていて音を出している。周囲の音が聞こえづらい状態だ。


条件は同じ。ならばお互いに索敵術を使って探り合うことになるだろう。


こちらが索敵に入ると相手も索敵を始めた。予想通りだ。


本当は大規模に空気を動かして煙幕を払って欲しかったんだが流石にそこまで思い通りには行かないものだ。その隙を突いて接近するのが早かった。


空中戦でも自信があるのか煙幕の中をこちらへとゆっくり進んでくる。正面切って負けることはないと考えているのだろう。それは正しい。


だが、力だけで勝敗が決まるわけでもない。


―キュィィィィィ………


タルマンの右手を握らせ拳を作ると高速で回転させ始める。背面にある大口径バーニアを切ると気化燃料を放出していく。


互いの位置が同じ高度に来て正面から向き合ったとき、同時に動き出した。


俺は消していたメインバーニアを点火させる。同時に姿勢制御用バーニアを全開にして推進する。すると背後で大きな爆発が起こった。爆風に押されタルマンは前へとはじき出されていった。


自分の方が速い…そう思っていたのだろう。互いを視認出来る距離まで来た時、ジョーの目は驚愕で見開かれていた。


爪が振り下ろされるよりも速く、突き出されたドリルパンチが心臓を捉える。風圧の鎧を回転が貫いた。


インパクトの瞬間、タルマンに込める魔力を限界まで上げる。相手の魔力を打ち消して体内に魔力波が浸透していった。


手応えは十分。ジョーは完全に意識を失ったようだ。そして、タルマンも不具合を起こして機能停止に陥った。


一緒に落下していく。


落下の途中で機能が回復したのでバーニアを吹かして減速させる。先に落下していくジョーの姿を見送った。


ゆっくりと地上に降りるとジョーに留目を刺したジュジュが俺を出迎えてくれる。例によって獲物の上で誇らしげにしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ