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機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー  作者: 井上 斐呂


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315/333

第315話 接触 x 操縦騎士

目の前で二体の機動騎士が上空から降りてくる。どうやら完全に俺が目的のようだ。


苦情を言いに来たにしては対応が念入りだな…


俺とコミュニケーションが取りたいようなそんな雰囲気を感じる。


ひとりでパトロールに出かけていたジュジュも何事かとこちらに駆け寄ってきた。興味津々と言った感じだ。


やはりロボが好き…

《違いますよ… 》


二体は俺の正面三十メートルぐらいの少し開けた場所に降り立とうとしている。


そこに向けてタルマンをゆっくりと前進させていく。俺の方からもコミュニケーションの意思を見せておこう。せっかくだから近くで見ておきたいしな。


《そちらの方が重要なのでは? 》

その通り…


だが、パイロットと話が出来るなら何かしらの情報が引き出せないかという期待感もある。タルマンに対する反応も見ておきたい。


―………シュォォォォォォォ………


微かな空気音をさせて静かにゆっくりと機体を下げていきやがて地面に足を付ける。風が巻き起こって周囲の枝葉がしなると言うことも土が巻き上げられると言うこともない。厳かな雰囲気すら感じる見事な着地だった。


パイロットの腕がいいのか、フライトユニットを動かす魔導回路が優秀なのか、あるいは両方か?


構造を調べれば判明するだろう。調べてみたいが触らせてはくれないだろうな…


そんなことを考えていたら手前の一機に動きがあった。人体で言うとみぞおちに当たる部分が上から下へカパッと開いていく。そこに搭乗口があるらしい。随分と狭いように見える。


前に突き出たハッチの裏側をガイドにして搭乗口の闇の中からパイロットが操縦席ごと前にスライドして出てきた。


そうすることで操縦室と搭乗口を小さく設計することが出来ると言うことなんだろう。機動騎士の外観も随分とスリムだ。


外に出てきたパイロットは座席を後ろに下げると操縦桿やらが着いている体の前面を覆うような装置から離れる。それから頭に被さっていたヘルメットのようなものを上に上げて外した。


中から出てきたのは赤茶けた癖のある髪を後ろになでつけた男だった。目の色も同様で魔力変異をうかがわせる。


そんな男が話しかけてくる。


「我々は帝国騎士団だ。話を聞かせてもらっていいか? 」

「かまわない。なんだろうか? 」


男はわざわざ顔を出して話しかけてきた。外部スピーカーとか着いてないんだろうか? 顔を見せて話すのが礼儀という価値観もあるか… なんとも言えないな


「俺はイスハム・レノ、二等操縦騎士だ。そちらの名は? 」


帝国では名字があるのが普通らしい。俺に名字はないけど…


「俺の名はレインだ。上級狩猟者の位に就いている 」

「そうか… ではレイン。早速聞きたいのだがいいか? 」

「かまわないがなんだ? 」

「そのダ…乗っている物はなんだ? 」

「…今、ダサいと言わなかったか? 」

「いや? 気のせいだろう 」

「そうか……まあ、いい。こいつの名はタルマン、俺が作り上げた人型機械だ 」


気のせいではなかったと思うのだがそう言うことにしておこう。話が進まない。だが、覚えておけよ…


「名前までは聞いていなかったんだが…そうか、自分で作ったのか…えっ? 自分で? 」

「そうだ 」

「ず、随分と器用なんだな…それで何のために作ったんだ? ここで何をしている? 」


何のため? 何を…? なんだか警官の職務質問って感じがするな。似たような物か…


「とりあえず作ってみた… 何のためかはこれから考える。何をしているかと言えばこいつを動かす訓練だ 」

「……。狩人だったな…そいつで獲物を仕留めるのか? 」

「いや、そこまでは考えていないな 」

「? ならなんで作ったんだ? 」

「それはこれから考えると言っただろう。理由はない。今は、な…」

「?? 良くわからんな… 」

「わからなくていい… いずれ世界は知ることになるだろう 」


しっかし、ロボに乗ってるやつですらこんななのか…先が思いやられるな…

まだこの世界にロボットは早すぎたようだ…


「俺の方からも聞いていいか? 」

「なんだ? 」

「あんたが乗っているそれの名前はなんて言うんだ? 」

「すまないがその質問には答えられない。一応、機密なんでね 」

「そうか、残念だな… なら次の質問だ、俺のタルマンとあんたが乗っているやつを比べてみてどう思う? 」

「どう思う? どうって…… 」


イスハムはそう聞かれて大いに戸惑っているようだった。眉間にしわを寄せてタルマンを真剣な眼差しで見つめる。しかし、思い浮かぶことがないのかだんだん苦しい表情になっていく。


腕を組んでうんうんと唸るような顔を見せる。下唇を上に突き出してへの字に歪ませて睨むように見ている。


やがて、俺の視線に耐えきれなくなったのか首を捻りつつ自信なさげに答えた。


「……カッコいいと思うぞ? 」


この魔力波はウソをついているやつの魔力波だ…

ちょっとボコボコにしてやろうかな

《やめてください 》


「じつに素直な感想だな 」

「ああ、俺は正直なんだ 」


ウソつきはそう言うよな… 本当の正直者なら断言はしねぇ


「俺からの質問は終わりだ 」

「そうか…こちらももう十分だ。俺達は戻ることにしよう… 」

「俺も訓練に戻ることにする。それじゃあな… 」

「ああ 」


イスハムはそう言って座席に座り直すとヘルメットを被る。座席を前にスライドさせて操縦桿が付いた前部装置を胸元に密着させる。


あれはもしかすると魔石の魔力の動きを直接読み取る装置なのかも知れないな…


イスハムが桿を握ると操縦席は搭乗口に吸い込まれていきハッチが閉まっていった。そして、来た時と同様に微かな空気音をさせ、ふわりと垂直に浮かび上がっていった。


ある程度の高度に達すると水平飛行に移行してアルバインの方向へと飛んでいく。


機影は森の枝葉に遮られてすぐに見えなくなっていった。


しばらく消えていった方向を見つめながら思う。


やはり、ロボはいいものだ…


確認が終了したのでイスハムは管制塔に報告をしようかと思い通信を開こうかとしたが少し迷う。


今さっき合った出来事を脳内で反芻してみたのだがいまいち要領を得ない感じがある。


(結局、あいつは何をしていたんだろうな? )


とは言え報告をしないわけには行かない。通信回線を開いてみる。話ながら考えればいいかと考えた。


「管制塔、こちらリゼラ一号機、イスハム 」

『こちら管制塔 』

「例の反応について確認が終了した。危険は無し 」

『危険無し、了解。詳細を報告せよ 』


詳細を聞かれても答えづらい。とりあえずここでの報告は適当に済ませて帰還してから子細を詰めていくことにした。


「…反応源は狩猟者。あ~、何かをしていた模様… 」

『ん? 何かとは何だ? 具体的に答えよ 』

「口頭では答えづらい… 帰還してからにしてくれ。リゼラの画像情報を参照したい 」

『………了解した。帰還を待つ 』

「了解、報告終了 」


リゼラの頭部に備え付けられた理力作動式義眼には映像を記録する機能も備え付けられている。説明には十分な映像が撮れているはずだ。


イスハムは映像記録を見せながら説明しなければ自分が遭遇したものがどういったものだったか伝わらないと結論づけたのだ。


わざわざ魔境の中にあんなものを持ち込んで動かしている狩人を理解出来ないでいた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


機動騎士が去ったあと、先ほどの遣り取りについて考えをめぐらせていった。


結局伝わらなかったようだな…


結論を端的に言えばそうなる。だが、そのことについては悲観するべきでもないだろう。ロボットという言葉が、概念が無いような世界だ。いきなり受け入れられるはずもない。


少しずつやっていくしかない…


まずは技術を磨いていく。それから、有用性を示していって徐々に浸透させていくという戦略でやっていこう。


そうと決めたら操縦技術を磨いていく。思わぬ接触で訓練を中断されたがすぐに再開しよう。


元の位置に戻るとハンドルに魔力を込め出す。


「ぬおおおおおっ! 」


再び魔境の森の中に俺の叫び声が響いていった。


また、来ないよな……? 来たら来たで、あれと力比べがしてみたいな…今度、申し込んでみるか… 応じないなら挑発でも…

《やめてください 》


~~~~~~~~~~~~~~~


帝国騎士との邂逅からさらに数日が経過した。


訓練も馴らしも十分に行うことが出来たのでそろそろ実戦がやりたくなってくるような頃合いだ。


《帝国に喧嘩を売らないでくださいね 》


それはそうだ。そんなことをしたら四六時中監視を受ける羽目になる。国外追放もあるかも知れない。


《……… 》


魔物と戦ってみることにしよう。奥の方に行けば正面から向かってくるヤツもいるだろう。


《危険なのでは? 》


ガン・ザシャのようなヤツはもっと奥にいるだろうからそこまで深入りしなければ不測の事態にはならないはずだ。


そう考えて、タルマンに乗ったまま魔境の奥へと進んでみることにした。


狩りではない。あくまで性能試験であって殺すまではしないし危なくなったらすぐにでも引き返すつもりだ。


…ゥィィ…ゥィィ…


微かではあるが魔境の中ではいささか目立つ駆動音を響かせながら木々の間を歩いていく。


中級ぐらいのウサギとかシカとか草食系の魔物はここら辺にもいるはずなんだが臆病だからこんな目立つヤツは普通避ける。


そのぐらいではタルマンの相手としても不足だ。理想は上級上位の魔物だが出会うとしたらそれより上のクラスだろう。俺の見立てでは厳しい戦いになる。


撤退を視野に入れておこう。場合によってはタルマンを亜空間にしまってダッシュだ。


彷徨っていたら日が暮れてきた。夜が来る前にテントを張って野営をして、朝が来たら探索をする。


そんなことを繰り返していたら終に魔物の痕跡を発見した。


大木の中程に硬くて鋭いものを擦りつけたような傷が付いている。これは縄張りの主張だろう。


おそらくはシカ系の魔物…


傷の位置から言って頭頂部の高さは四メートルを超える。縄張りを作ると言うことは繁殖期が近いのか、あるいはその最中と言ったところだ。かなり凶暴になっている可能性がある。


この中に入ったならば確実に向こうから攻撃を仕掛けてくる。こちらにとっては好都合と言えなくもない。


さて、やるとしようか…


一瞬、迷ったが他に当てもないので足を進めていく。進む先は縄張りの中心だ。そのまま三十分ぐらい進んだところで場のプレッシャーがキツくなってきた。


相当怒っているみたいだな…


相手は既にこちらの侵入を察知している。かなりの速度で接近してきているようだ。圧はどんどん高まっていく。


ここで待つとしようか…


必要以上に奥に入るつもりはないが、外に向かって進むと恐れをなしたと見なされて追ってこない可能性もある。迎え撃つ意思を見せるためにこの場に留まってこちらも魔力を上げていく。


《ジュジュ… 》

《・・・・ 》


一応、ジュジュにはいつもの遊撃の位置に付いてもらって準備は整った。あとはあちらさんが迎えに来るだけだ。


こいよ…



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