表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー  作者: 井上 斐呂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
307/333

第307話 付きまとう何か

熊を倒して完全に縄張りを掌握してから二週間が経過した。あれからタルタインの自宅と魔境の拠点を行ったり来たりして二重生活を行っている。


街では買い物と街の散策を中心に生活をしていった。魔境でも調査を中心とした活動を行っている。


地下を広げる工事も進み部屋をいくつか増設した。緊急避難用の寝室を一つ作ったのだがそれ以外は特に使い道を決めていない。いや、使い道が無いと言った方が正しいだろう。無駄に広げている。


しかし、建築は面白い。それに、地下室には浪漫がある。特に用はなくとも広げていくことになるんだろうな…


俺の狩り場と隣接する狩人とも顔合わせをすることとなった。南東側に隣接するのは背が高い金髪碧眼の女狩人で名前はアイシャと言った。


百才近くにもなるベテランの狩人でここら辺のルールを教えてもらったので早速マーキングを施していった。


他の狩り場との境界あたりにある木に自分独自のマークと共に色分けした記号を描いて他の狩人に知らせるものだ。


ここから先は入ってくるなとか、ここは通っていいとか、この先に水場があるとか…


この周辺の狩人だけに通じる独自の記号で摩擦を産まないように遣り取りを行っているらしい。


それを行う事でいよいよ俺もここの狩人として馴染んできたような気がしてきた。そんなこんなでいつものように狩り場を探索していた時だった。


妙な気配を感じる。何かに見られているような感覚… それをふとした瞬間に感じては消えていく。


《・・・・・》


ジュジュも何かを感じている。俺の気のせいでもないようだ。


魔境から感じる魔力に紛れてなかなか正体を掴ませてくれない。遠くから探りを入れてきているような感じがある。


索敵術か、もしかしたら遠視術を使っているのかも知れない。


今のところ敵意はない。ただ俺達を観察しているだけみたいだな。


こちらの移動に合わせてあちらさんも動いているようだ。常に一定の距離を保ってつかず離れずで俺達の行動を追いかけているようだ。


なんとなく気味が悪い。こう言った行動をしてくるのは相当に知能が高いことを示唆している。大抵こういうのは厄介な相手だと相場が決まっているのだが果たしてどうだろうか?


遊んでいるだけか、はたまた本気で狩る前の品定めか…


どちらにせよ最終的には戦うことになる予感がする。


この日は一時間程で気配は消えたのだが次の日も同じように視線を感じることになった。


急遽予定を変更して拠点に滞在する期間を延長する。もしも俺達がここから離れれば拠点を破壊される可能性がある。他の狩人を襲いに行くかも知れない。


しばらく狩りはしないつもりだったが向こうから来るならしかたがない。どう言うつもりかは知らないがこちらは本気で相手をしてやると腹を決める。


視線のする方向に向かって俺もジュジュも威嚇を飛ばした。すると視線は消えていった。とりあえずは引くことにしたらしい。


さて、ここからどう出てくるかな?


この時からことあるごとに同じように気配を感じることが増えていった。直接姿を現す事はなかったが確実に距離は近づいて来ている。


それにより相手の力の程が掴めてもきた。周辺の魔物達が萎縮している。それが魔境の空気に影響を及ぼしてきている。


上級上位の魔物が脅威に感じるぐらいだ。この大魔境の深淵にいるような存在であるらしい。


おまけに知能が高くて慎重……なかなかにハードだな


~~~~~~~~~~~~~~~~


数日が経過したある日、拠点で眠っていたらあいつの気配を感じた。


ジュジュも感じたようで意識を覚醒させて警戒モードに入っている。


《とりあえずは様子を見よう 》


相変わらず相手に敵意のようなものは感じられない。ただの偵察のようではある。もしかしたら遊びかも知れないが…


こちらの反応を楽しんでいるのか?


そう考えると気味の悪さと共に怒りが湧いてくるがここは抑えて冷静に行動する。


一応、武器は装備しておく。“絶雷”を腰に差して心を落ち着かせる。


暗闇の中で精神を集中させ相手の気配だけを感じ取っていく。


ヤツはゆっくりとこちらに近づいてきていた。そして、俺達が中にいる大木の目の前までくる。


そこからなかなか動こうとしない。


俺達が中にいるのはもうわかっているはずだ。位置を感じ取ろうとしているのか? 俺達が動き出すのを待っているのかも知れない。


静寂が流れる。お互いに動きがないままじりじりと過ごしていたらヤツはおもむろに動き出した。


拠点の周りをぐるりとなぞるように移動していく。俺の拠点を手でペタペタと触って感触を確かめているような動作をしているようだ。


手…? 直立出来る生き物か…


大きさは随分と大きい。体高は八メートルぐらいあるんじゃないだろうか? 魔力を極限まで抑えていて強さはわからないが微かに感じる振動や空気の動きから存在の大きさが伝わってくる。


また熊だろうか? いや、なんとなく違う気がする…


ヤツは拠点の木の周りをたっぷり時間をかけて二周ほどすると同じような足取りでゆっくり魔境の奥へと去って行った。


なんなんだろうな?


この行動の意味をはっきりとは掴みかねているがここまで接近してきたと言うことは近いうちにヤツと戦うことになるのだと直感する。


おそらく今日の夜が明けて明日中には姿を見せるだろう。


まあ、今じゃない…


俺達は気を落ち着かせると再び眠りに就いた。


翌朝、拠点の周辺にヤツの痕跡がないかを調べていく。


大木周辺の地面には何も残されていなかった。綺麗に足跡を消して去って行ってる。


次にヤツの気配が消えていった先を辿ってみる。すると大きな足跡を発見した。


拠点から三十メートル程離れた場所に一つだけ残されている。これ以外には見つからなかった。


挑発……なんだろうな…


思い出したかのように一つだけわざと残された足跡… 自分を追ってこいと言うメッセージのように見える。


いいだろう、やってやる…


だが、まずは相手の分析だな。足跡を調べてどんな魔物なのか特定していこう。


形から見るに猿系の魔物だと断定する。一見、人間の手形のようにも見える指の長い形は樹上で生活する猿で間違いないだろう。


特殊な変異を遂げた竜種の可能性もなくはないが竜種ならこんな回りくどいことはしなさそう…


猿の魔物として考えると相当にデカい猿であるのは間違いないな。足跡は縦が一メートル超、横が五十センチはある。


夜は八メートルぐらいあると感じたがあながち間違ってはいない感じだ。アッシェバーンで戦った大猿ぐらいだろう。


一応、エンジュにも確認しておこうか…


どう思う?


《足跡の大きさや形状を類似の魔物と比較すると体高は真っ直ぐに伸ばして七メートルと言ったところでしょう… 》


俺の見立てとそこまで変わらないな… まあ、そんなところだろう


《狩猟ギルドや帝国騎士団のデータベースに今回の魔物と同一と思われる個体が記載されていますね。検索いたしましょうか? 》


……そんなことが出来るのか


まあ、せっかくだからやってもらうか


《承知いたしました。検索開始… 》


どのぐらい時間がかかるんだろうな?


《終了しました 》


はやっ、どんな感じだろうか…


《対象には固有名が付けられていますね。名はガン・ザシャ。猿の魔物で体長は約七メートル。空術と木術を使うことが確認されています。詳しい戦力は不明のようですが過去に上級狩人が二名ほど犠牲になった可能性があると記載されています 》


固有名が付けられていると言うことは騎士団が強い魔物だと認定しているってことだな。帝国騎士団がどれぐらい強いか知らないが討伐されずにこうして記録に残っているなら慎重でしぶとい性格なんだろう。


苦労しそうだ…


空術と木術を使うようだが多分それだけじゃないな。他にもいろいろありそうだ。能力を暴きつつ戦うとするか。


とりあえず地面に付いた足跡を消して朝食を取ることにした。


朝食後はすぐにヤツを探しに行く。俺達から探しに行かなくても放っておけば痺れを切らしてヤツの方から寄ってきそうだが拠点に来られるのは迷惑だ。


午前中一杯を探索に当てるがヤツを見つけることは出来ずに終わる。視線や気配を感じることもなかった。


どこかで寝ているのだろうか?


昼食を取り、再び探索を開始して数時間が経過した。しかし、相変わらずヤツと遭遇することはなかった。


ここで遭遇出来なければまた夜にやってくるかも知れない。そうなると面倒だな…


そう言ったことを考え始めた時ジュジュが何かを捉えたようだ。


《・・・・・》


ジュジュが示す先に意識を集中して探索術を使ってみる。


……いたな


距離にしておよそ三百メートル。木々に遮られて姿は見えないが確実にヤツがいる。


まっすぐにそちらへ歩いていくと向こうもこちらへ歩いてきた。


ヤツの気配からは「見つかっちゃった、テヘッ 」みたいな遊びの空気を感じる。かくれんぼをしているつもりだったらしい。


ふざけやがって…


強い者特有のおごりと言うべきだろうか? 実際ヤツは強い。魔境では強い者が正義だ。おごる権利はあるんだろう。


まあ、それも今日限りだ…


互いの距離は縮まっていき残り五十メートルぐらいのところで相手の姿がはっきりと捉えられるようになった。


ヤツは地面に少し短めの足で直立していた。手足の毛は普通の長さだが胴体を覆う毛だけが妙に長い。まるで昔話や時代劇に出てくるみのを被った人間のようだ。


そのせいで足が短く見える。奇妙な体型をしていた。


大きさもあってまさしく怪物と言っていいだろう。ファンタジー作品に化け物として出てくるトロールはこんな感じなのかも知れない。


更に接近していき三十メートル程の距離で互いの足が止まる。見つめ合いながら出方をうかがう時間が始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ