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異世界ふとん至上主義!  作者: 一人記
第二章

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第百四十二話『価値と搾取』


「は!?く、クソがっ、お前ェッ!!?

自分がなにやってんのか解ってんのかよッ?!」


 赤髪クソ野郎のAが呟く。

どうやら切られた事が相当衝撃なようで、痛みも傷もないことに驚きながらも私のことを睨みつけてそう叫んできた。


「あぁ、理解してるつもりだが?

私は、そこに居る友人を助けるためにお前たちを攻撃してる。それ以上でもそれ以下でもないな。」


 地に伏している赤髪に、そう言って槍を構える。

こいつらは友人を......アヌを痛ぶろうとしたのだ。それならば、痛ぶられる覚悟ぐらいはあるのだろう。


だからこそ、私は槍を構えて遠慮なく振りおろそうとしたのだが......


「は?!ちげーよ!?

お前、身分の差を理解してんのかって話だよ!?

オレとお前じゃ血の高潔さが違うんだって言ってんのが分かんないのか!?タダの平民風情の弱者の癖に!!」


そう言われて、私はふむと頷いて口を開く。


「あぁ、そういう話か。なら、大丈夫だ。

私は老若男女身分問わず平等主義者だからな。人を尊敬こそすれ、そこに優劣の差などないと再三考えているよ。」


 こいつらがたとえ貴族だとしても、ルドルフさんの弟だったとしても、例え魔王だったとしても殴り込む自信が私にはあるぞ?


それに、たとえ彼らの血が貴族のものだったとしても、だ。


  血の種類によって変わるのは、精々輸血時の適合種が多いか少ないかぐらいのものだしな。

人はそんなもので変わらないのだ。精々、血液型占いで嫌な事を言われて一喜一憂させられるぐらいのものでしかないと私は認識している。


「......私はO型だからな。結構人から大雑把って言われるから、反骨精神なのかもしれないが。まぁそれはいいとしてだ。」


「は......?お前、何言って───」


「そして、そういった意味で言えば、私はお前たちのことを尊敬に値する人間だとは思えない。

故に、私は躊躇無くお前たちに抵抗して、攻撃を加えているというわけだ。理解出来たか低脳?」


 弱者と言われている者はいつまでも弱者のままでいてはいけない。抵抗しなければいつか死んでしまうのだから。

搾取されてされてされて、され切って、いつかは死んでしまうのだから抵抗しなければならないのだ。



───しかし、抵抗した結果、どうなるかは知らない。



私は罪に問われるかもしれないし、捕まるかもしれない。



「なが......ちゃんっ......!

わ、わたしのことは良いから、早く逃げてっ......!?」



......だが、私の友人(アヌ)を傷つけようとしたのだ。


私の友人の事をバカにして。


友人の立場を簡単に脅かして。

私の友人に対して自分の快楽の為に危害を加えようとしたのだ。


少なくとも、その落とし前はつけてもらわないといけないだろう。


「そ、そうだッ!小精霊の言う通りだ!

お前らには関係ないだろう!オレらの問題に首を突っ込むのはやめて、大人しく下がってればいいんだよ!この入学組の出来損ない共がッ......!」


「......だからさぁ。

そういうことじゃないんだ。赤髪A。」


「へ......?」


「関係あるとかないとかじゃなくさ。

私の目の前で、私の大切なものを傷つけようとしているという事実が不快でならないんだよ?分かるか?」


そう、これは私の自己満足だ。


精々、私に目をつけられたことを後悔するといい。


私は、自分が大切だと思うこと以外には、あいにく興味も関心も持てない質ではあるが───



「だからこそ、私は私の全てを賭けて。

私の、大切なものを傷つけようとしたお前らを傷つけてやろうと思うんだよ。

ここからは、そういう闘いだ。分かるか?」


「ひ、ぁッは?く、来るな......ッ!?」


「だからさ、お前。

とりあえず、お前がアヌに頭下げるまで切りつけ続けていくから、覚悟して挑めよ───?」



だからこそ、私はそう言って。

赤髪Aに向けて再度『蒼霊の槍』を突き刺そうと、尻もちをついた首元に当て付けていて───?



「お前こそ、弟から離れろッ、死ねッ───!!!」


「───あ?」



しかし、次の瞬間だった。



───後方、私の視界外から、

真っ赤な炎の槍が私目掛けて飛んで来たのだ。



「は、ははっ......!?

やった、やってやったぞ!?」


「お、お前......お前が弟を切った罰だッ?!

お、俺たちフィリオン家の兄弟に楯突くなんて......、絶対に許されない行為なんだぞッ!ハハッ、ハハハハッ......!!?」


 赤髪Bが呟く。

まさか、当たらないとでも思っていたのか。

自らの魔法が私を焼き尽くしたことに動揺しているのだろう。


彼は、虚栄を張るように引きつり笑いながらも、慌てたように言葉を走らせて、煙の舞い上がる私の方を見て瞳を揺らしている。



「お、お前なんて、そのまま、焼け死んでしまえばいいんだよッ!!!

兄上の婚約を断った生意気な新学寮長も、俺たちの学生寮を奪ったアイツも、そしてお前も、俺達に逆らったのがいけないんだッ......!?」



その様子は、どこか狂ったような口調であり。

揺れ動く瞳が、先程まで私の居た位置を見つめたり、そして周りにいる何処かザワついた様子の学生達を見渡したり......


何処か、落ち着かない様子だった。


まぁ、しかしそれはそうだろう。

だって、今しがた人を殺したのだから。少しは動揺もするし、いくら貴族様とはいえ、周りの目を気にするというものだ。



「......そ、そうだ!そうだよな?!そうだろッ?!!

なぁ!?アイツも、新学寮長も、お前も、等しく犯罪者として裁かれるべきなんだよッ!?」



しかし、その後。

赤髪Bは、幾ばくかブツブツと何やら呟いた後、ゆっくりと顔を上げて引きつった笑みを浮かべて口を開き......




「だって、俺達に楯突いたんだから!!

それは、当然の報いだろッ???!なぁ!???」





そう言って、赤髪Bは自らの火炎魔法の先。






「だから、だからッ!!

お前が悪いんだッ俺はなにも悪くないッ───??!」





私の焼けた死体が有るであろうその先に、揺れる瞳でもって目線を移して───




「......は?なにも、無い?」





「へぇ、新学寮長さん、此処でやるんだ?

こんな所で危ない橋渡っちゃって、自分の身晒してでも、人助けなんてしちゃうカンジなんだぁ?」






 しかし、赤髪Bの魔法が放たれた先に私の姿はなかった。

その代わり、その遥か上空から、何処か含みのある笑みを浮かべたような軽い少女の声が聞こえてきて、言うのだ。



「ははははっ───!

ソレってさ、とっても面白そうじゃんね? いいね、アタシも混ぜてよ?なんか楽しそうだしさぁ!」


「......お、お前ッ!?お前は、さっきの───!?」



 そして、その身を焦がすような炎の槍の着弾地点。

赤髪Bが驚いたように立ち竦んでいる、その少し上空の建物の屋根に、私の体はゆっくりと下ろされて。



「あ、あの、ありがとうごさいます?」


「ふふん、油断禁物っしょ?

まぁでも、これでセリフ被りの借りも返せたし!改めてアタシカッコよく登場できたし一石二鳥って言うか?まぁ、そんな感じでね!」



「───アタシ、"フラリア"ね?

新学寮長さん、これからシクヨロ〜ってことでー!」



 私は先程の少女。

セリフ被りをした少女である、"フラリアさん"にそう言われて、軽い口調で自己紹介されながらピースを向けられた......というか。


「え、あ、はい。宜しくお願いしま......ん?

いや、それピース......じゃないな?!なんのサインだ......?」


えっと、親指人差し指中指を広げて、ピースするみたいな......

なんか、なんのサインかも分からないような指の形をこちらに向けられて、私の胸あたりをサインを作った手の甲でぽんぽんと叩かれながら。


いつの間にか私のことを助けてくれた彼女に、私は不思議な間合いの詰め方をされながら笑いかけられていたのだった。


いや、これなんのサインだよ......。

なんか、野球の試合とかで見たことあるような気はするけれども。でも、それ絶対に今出すサインじゃないしな......?たぶん変化球とかの指示サインだしなそれ......?


しかし、私がそうして悩んでいると、


「まぁまあ、細かいことは後でってことで!!

じゃ、アタシ、あっちのお兄さんの方やるから。そっちの弟くんの方宜しくねー。はい解散っ!レッツゴ───!」


そう言って、フラリアさんは屋根上からばっと飛び降りて赤髪Bの方、お兄さんらしい方に殴り掛かりに行ってしまったのだった。


「な!?お前、やめろっ!?

俺は与えられた使命を果たす為に動いて───!?」


「はいはーい、大丈夫大丈夫〜。

ちょっとお空に吹っ飛ぶだけだかんねー?

暴風魔法(ストームマジック)、なんかスゴイ竜巻って感じのやつヨロー?』」


「ぐうっあぁあぁぁああああッ!????」


 そんなフラリアさんに。

そのあっけらかんとした軽いノリと口調に、私は驚き戸惑いながらも、少しだけ可笑しくなって笑ってしまう。


「......ははっ、なんか懐かしいな?

わかりました、そっちは宜しくお願いします!」


そう言って、フラリアさんを追いかけるように私も屋根上から飛び降りて、赤髪Aくんの方に向かって行った。


なんか、このノリの軽い感じと言葉遣い。

日本で昔お世話になった、文芸部の"とある先輩"みたいな懐かしさを思い出して笑ってしまった。


あの人もギャルみがある人だったが、それでも結構親しみやすくて、優しくて、私はいろいろと助けられたのを覚えている。


「ひっ......?!」


「という訳で、お前の相手は私な?」


そんなことを思い出しながら。

私は、赤髪Aの方に蒼霊の槍の切っ先を向ける。


少し間が空いてしまったが、赤髪Aくんは未だに腰が引けているようで、帰ってきた私を見て怯えた様子で顔を青くしてしまった。


コイツ、語気強い割に腰は引け過ぎてて、ちょっと馬鹿っぽいっていうか......最早可哀想になってくるな?


なんか、一回蒼霊の槍で切りつけた辺りから、めちゃくちゃビビった感じで突っかかってこなくなってるし......。



「な、なんだよっ!?なんなんだよっ!?

なんで部外者の奴らが、オレらウォルフ家の邪魔してくんだよッ!?関係ないやつらは引っ込んでろよ!??」


しかも、なんかめちゃくちゃ勘違いしてるっぽいし。


私のことを、ほんとに善意の第三者だと思って、ヤバいやつに絡まれたと思って怯えているらしい所がまた可哀想である。


だって、私、部外者じゃないし。めちゃくちゃ当事者だしな?


「いや、赤髪Aくんよ?

私、部外者じゃなくてもっぱら当事者なんだが?」


「......は?そんな訳ないだろ?

オレらが興味あるのは、新学寮長のながみってやつと、そこにいる精霊だけで......ターゲットもアイツら周辺に絞ってて......?」


というわけで、ぶん殴る前にこれだけは伝えておこう。


「いや、だから私がその新学寮長だって。

お前のお兄さんの告白を公衆の面前で断った新学寮長。黒髪に槍持った冒険者。ほら。それぐらい聞かされてるだろ?」


「......え?」


そういった私の言葉を聞いて。

改めてまじまじと見つめてくる赤髪A。


頭のてっぺんからつま先まで、

眉間に皺の寄った顔で眺めながら私の姿をちゃんと認識して、より一層深く眉をひそめ始めて───




「......いや、兄上には黒髪の野蛮な冒険者って......、

聞いてたし......。そんな、別に印象と違ったから気が付かなかったとか、そういうわけじゃねぇし?


......は?別に気がついてたし???

いや、マジ、気がついてないわけないけど??いや、疑ってんだろお前マジで、気がついてたかんな───?」



そう言って、目を明らかに動揺させながらキョロキョロさせている赤髪Aくんを見て、私は思わずふぅと息をついて。




「うん、まぁ。とりあえずどんまい。

......あと、これからめちゃくちゃぶん殴るけど、私は当事者だから関係あるってことで問題ないよな?」



「......いや。それとこれとは話が違うっつうか───」




そして、そうやって焦ったように呟く赤髪Aを見て。



私は、取り敢えず、にこりと微笑んでから。





「うん、問答無用。

とりあえず十発ぐらいは殴るから、歯ァ食いしばれ───?」



そう言って、硬化したふとんを巻き付けた手のひらをぎゅっと握り締め、思いっきりぶん殴ったのだった。


......いや、可哀想だけども。

アヌを虐めたのは許せないので。流石に十発はいかせて貰った。


まぁ、蒼霊の槍で切らなかっただけ、優しいと思って欲しい。

結局は切りつけ1回分、5レベルとスキル1個だけで済んだのだ。多分安い方である。

しかも、途中からグーパンも辞めて平手にしたし。




「ふぁ、も、むりッ!?ごめんさ───?!」




という訳で、私は少しだけ締まらない思いのまま、赤髪Aくん兄弟を公衆の面前で辱め続けてしまったのだ。


そして、後に聞いた話だが。

赤髪ABC達は本当に古い貴族連中だったらしく、私の元に様々な苦情の手紙が届くようになってしまい───。




「それで、結果フィリオン家の兄弟をボコボコにした挙句、

貴方宛に届いた貴族からの手紙全てに、"文句があるなら私の元までこいや"的なことを送り返して......?」






『新学寮長、永巳叶夢 他、フラリアの裁判を執り行います。

傍聴席はこちらになりますので、皆様静粛に並ばれますようお計らいを───』





「......こうなっていると。

言うことで、あってるかしら......?お二人さん......?」


「はい......、そうです......。」「すみませんっした......。」




という訳で、魔導学園のスコラキャッスル内にある刑事裁判所。

魔導学園内の問題事を解決する為に活動している『信徒』が取り仕切る、黒を基調とした高低差のある荘厳な空間の中で。



 その"魔導士を裁くための裁判所"、

『ワルプルギス裁判所』の、控え室の一室で。



......私と、ついでにフラリアさんは。

硬いソファの上で正座させられながら、五賢のイヴさんに詰められている最中だったのだった。



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