世界の1%(2)
陽はすっかり落ちていた。
恐怖心から家を飛び出してみたものの、別にそれで何かが解決する訳でもない。
相手は得体も知れない悪魔か何かなのだ。果たして逃げ場所なんてあるものだろうか?
でも足は止まらず、とにかく走り続けた。
自分の行動範囲を遥かに超えて、出来る限り遠くへ。
次第に見覚えのない景色になってきた。街灯の数が少なくなり、住宅の姿も全く見えない。
ここはどこだろう?
大きな通りを渡り、その先にあったガードレールに足を止められたところで、答えが出た。
海だった。
どおりで街並みも消えるはずだ。人の気配はなく、小波と遠い車の音だけが聞こえてくる。
しかし、家から海までは10数キロはあったはずだ。どんだけ必死で逃げてるんだよ。私。
ガードレールの切れ目を見つけ、そこから海岸へ降りた。
そこで身体が疲れを思い出したらしく、膝から砂浜に崩れ落ちる。汗も噴き出してきた。
引き籠ってた割にまだ動けるもんじゃん。私の身体。
てか、こんな化粧もしない姿で飛び出してきたのか。本当、何やってるんだろう。
あんまりにも馬鹿なことをしていることに気付き、少し頭が冷静になった。
で、これからどうしようか? 多分、逃げたって意味はない。
これから、きっとHAMIと同じように私は消えるのだろう。腕だけ残して。一家共々。
ごめんね。ママ。私があんな不審なメールに返信さえしなければ。
「あ、あああ……」
どうしようもなく涙が噴き出してきた。本当、駄目でごめん。馬鹿でごめん。こんな娘いらなかったよね?
あ、そうだよ。消される前に私が消えちゃえばいいんじゃん?
私が消えれば私の世界も消えるだろう。だったら1%を手に入れるも何もないはずだ。
眼の前には夜の海が広がっていた。空との境界が曖昧になり、まるで砂浜からその先がそのまま宇宙にでも繋がっているように見える。
ここなら、こんな小さな私なんて簡単に飲み込んでくれるはずだ。
そう思い、遠く、何処までも続いていそうなその闇へ、一歩、また一歩と踏み出していく。
そうだよ。こんな無限に広がっている世界から見れば私なんてあってないようなものじゃないか。だから、ただそこに帰るだけと思えば……。
でも、それすら叶わなかった。慣れない運動をした所為か酷い眩暈に襲われ、倒れ込む。
気を失う寸前。誰かに肩を掴まれた気がした。
あ、私捕まっちゃったのか。まぁ、こんなダメな私が消えたって誰も困らないだろうけどさ。でも、でもママだけは――。




