世界の1%(1)
「次のニュースです。東京都○○区のアパートで一家の失踪事件が起きました。警察は何らかの事件に巻き込まれたものとして調査を行う模様です。失踪したのは長谷川一美さんとその母親で――。あっ、事件の速報が入りました。現場のアパート近くの公園で、人間の腕のようなものが発見されたとのことです。現在警察は……」
背筋が寒くなった。
夕方、何の気なしにテレビを点けた際に流れてきたニュースである。
ニュースでは、近隣住民は不審者に注意するようにと呼び掛けていたのだが、ここからはだいぶ遠いのでその心配はないだろう。
しかし、流れた人の名前に覚えがあったのだ。長谷川一美、HAMIの本名である。
失踪? 腕だけが発見された?
ただの偶然かも知れない。でも、今朝からずっとログインがないのである。今までこんなことは一度だってなかった。それに……。
あのベージュ色のヒトデみたいなもの。
あれはHAMIの腕だったんじゃないのか?
不自然に財布の中に入っていたお金。
あれは私が実際に手に入れてしまった2000万円の1%なんじゃないのか?
ゲームで起きたことが現実でも起きたってこと?
でもHAMIは『世界』の1%を手に入れたはず。
そもそも私の現実の『世界』って何?
私がいて、ママがいて、そして他には? ……、何もない?
でも、そうとしか考えられない。HAMIも同じ引き籠りだった。しかも私と同じで母子家庭。それが私たちの現実の世界だった。
じゃあ、その1%って?
「……、いやっ。いやぁあああっ!」
血の気が引いた。
つまり、HAMIは現実でも世界の1%を手に入れていたのだ。人間2人の1%。それがあの残された腕だったんだろう。じゃあ同じことを願った私はどうなる?
冗談じゃないっ! ふざけないでよっ! そんな考えばかりが頭を巡る。一体どうしたら?
ふいに思い到り、パソコンを立ち上げる。あの魔法をキャンセル出来ないかと思ったのだ。
でも、『魔法』のアイコンをクリックしても、「今日の魔法は使い終わりました。欲しいものはまた明日望みましょう」とメッセージが出るだけだった。
……、逃げなきゃ。
そんな考えが浮かび、訳も分からず、外へ飛び出していた。
途中でママとすれ違ったが、何かを話す余裕もなかった。




