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完璧な生徒会長は、平凡な俺の「声」がないと眠れないようです。  作者: Takayu
第6章:初夏の修学旅行と、終わらない特等席
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第143話:のぞみ号の密談と、共犯者の笑み

朝の東京駅。

巨大な出発案内板の下には、お揃いの制服に身を包んだ三年生たちが溢れかえっていた。

新幹線の発車ベルが鳴り響く中、俺たちは指定された車両へと乗り込んだ。


「……湊くん、隣座ろ!」


奏羽がすかさず俺の腕を引き、窓側と真ん中の席を確保した。

通路を挟んだ隣の列には、同じ班の陸と結衣が並んで座る。


「はいはい、ごちそうさま。新幹線乗る前から糖度高すぎでしょ、あんたら」


通路越しに、結衣が呆れたように頬杖をついた。

その手元では、スマホの画面がせわしなく光っている。

画面をチラリと覗き見ると、『新幹線何号車?』『隣誰? 男?』という、かなり必死な様子のメッセージが届いていた。送り主の名前は『蒼太』だ。


「……逢坂さん、蒼太くんと連絡取ってるの?」


奏羽が目を輝かせて尋ねると、結衣は「うぐっ」と喉を詰まらせ、慌ててスマホを胸元に隠した。


「べ、別に! あいつが『同じ高校なのに班が別なのは納得いかない』とかうるさいから、適当にあしらってるだけだし!」


顔を真っ赤にしてツンツンと強がる結衣。

普段は俺と奏羽をからかってばかりの小悪魔女子だが、いざ自分の彼氏のことになると、とたんに分かりやすく動揺するのが面白い。


「へぇー、蒼太くんも修学旅行、結衣ちゃんと一緒にいたかったんだね。仲良しだなぁ」

奏羽がふんわりと微笑むと、結衣は観念したようにため息をついた。

そして、周囲の生徒が騒がしく話し込んでいるのを見計らい、身を乗り出して声を潜めた。


「……まぁね。だからさ、実は私、もう手はずを整えてあるのよ」


「手はず?」

俺が聞き返すと、結衣はニヤリと悪戯っぽい猫目を光らせた。


「二日目の夜。点呼と消灯が終わった後、旅館の非常階段から抜け出して、蒼太と裏庭で待ち合わせする約束を取り付けたわ」


「「ええっ!?」」


俺と奏羽は、思わず声を揃えて小さく叫んだ。


「ちょっと逢坂、お前も抜け駆けする気なのかよ!?」

「当たり前でしょ! せっかくの京都だよ? 好きな人と夜の京都を散歩したいに決まってんじゃん! ……って、あれ? なんで会長、そんなに目を輝かせてるの?」


結衣が怪訝そうに眉をひそめた。

視線の先では、奏羽が「仲間を見つけた!」と言わんばかりに、両手をパチンと合わせていた。


「結衣ちゃん……実はね、わたしと湊くんも、二日目の夜に抜け出して足湯に行く約束してるの!」


「……マジで!? あの真面目な生徒会長が!?」


結衣は驚愕のあまり顎が外れそうになっていたが、すぐにニヤリと口角を吊り上げた。


「……いいじゃん、最高じゃん! ならさ、私たち『共犯』になろうよ!」

「共犯……?」


「女子部屋で誰かが抜け出すと怪しまれるけど、私と会長の二人が結託して、部屋の他の女子に『先生が見回りに来たら誤魔化して』って口裏合わせとけば、完璧なアリバイが作れるでしょ!」


昨夜、翠が言っていた「結衣さんを味方につけなさい」というアドバイスが、新幹線の中で完璧に回収されてしまった。


「うんっ! 結衣ちゃん、ありがとう! 絶対成功させようね!」

「任せなさいって! ダブルデート……は恥ずかしいから別行動だけど、お互い健闘を祈ろう!」


がっちりと熱い握手を交わす、生徒会長と書記。

二人とも、普段の学校での姿からは想像もつかないほど、恋する乙女全開の悪い顔をしている。


その時、通路側の席でずっとポテトチップスを食べていた陸が、絶望に満ちた顔で俺の肩を掴んできた。


「……おい、湊」

「な、なんだよ陸」


「お前も抜け出すのか? ……ってことは、蒼太の奴も抜け出すんだよな?」

「まあ、そうなるな」


「男子部屋、俺たちの班と蒼太の班が合同の大部屋なんだよ! お前ら二人が夜中に抜け出したら……俺は一体、誰と夜通しトランプすりゃいいんだよぉぉぉっ!!」


陸の悲痛な叫びが、ガタゴトと揺れる新幹線の中に虚しく響き渡った。

波乱の予感しかしない、京都・奈良への修学旅行が、こうして賑やかに幕を開けたのだった。

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